表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

187/438

第181話 や、やりやがった……!こいつ本当にやりやがった……!

「や、やりやがった……!」


 こいつ本当にやりやがった……!

 《神焉竜(しんえんりゅう)》のやつ、幼い女の子を拉致ってきやがった……!


 真っ白なワンピースが目に鮮やかな幼気(いたいけ)な女の子を、かどわかしてきやがった……!!


「お、おおおおオチケツ、いやオチツケ俺!」


 すーー、はーー。

 まずは深呼吸をして、よし、冷静になるんだ。


「……まだ焦る時間帯じゃないはずだ。前提として過去ってのは変えられない、大切なのは未来志向じゃあないか。そうだよ、起こってしまったもんは仕方ない、大切なのはその後どうするかだろう……!?」


 女の子を拉致った後に最初にすべきこと、と言えば……、


「どないせぇっちゅうねん!?」

 自分で自分にツッコんだわ!


「そうだ警察――はこの世界にあるのかな? あ、駐留騎士団! いや《聖処女騎士団(ジャンヌ・ダルク)》のナイアにまずは連絡をして、どうにかうまいこと取り計らってもらって……、ってダメだ、ナイアは今帝都だった。サーシャ……に迷惑かけるのは気が引けるし……。えっと、他になにかないかなないかな……」


 なにより一番の問題は《神焉竜(しんえんりゅう)》が素直に出頭してくれるかどうかだけど、それはこの際仕方がない。

 まずは被害者である幼女の解放、それができれば御の字とするべきだろう。


「だって《神焉竜(しんえんりゅう)》が人間の法なんかに従うわけがないもん!」


 その気になれば、城塞都市ディリンデンを鼻歌交じりに消し炭にしかねないやつだ。

 そうするとやはり、《神焉竜(こいつ)》の保護責任者である俺に最後は全責任が降りかかってくるってこと……?

 おう、なんてこった……。


「さようなら、俺の明るく楽しいモテモテハーレム異世界生活……」

 そしてこんにちは、暗くて辛いムサクル監獄生活……。


 ガックシ……。

 俺はがっくりとうなだれた……。


 そんな暗い未来を志向する傷心の俺に声をかけたのは、


主様(ぬしさま)は勘違いしておるのじゃ」

 当の《神焉竜(しんえんりゅう)》だった。


「なにをどうも勘違いしようがないだろ……? おまえ、よりにもよってこんな小さい子を拉致ってくるなんて……。子供への犯罪は一番ダメなんだぞ……」


「うにゅ、ちがう、ひろった」

 またもやハヅキが訂正をしてくるけれど、


「拾ったって言われてもなぁ……」

 盗ったんじゃない拾ったんだってのは、典型的な犯罪者の言い訳というか。


 そもそも女の子ってその辺に普通に落ちてるものなの?

 俺が童貞だから機会がなかっただけで、もしかして世間様では女の子は拾うものなの?


「なわけがないよね、うん。現実逃避はやめよう……」


主様(ぬしさま)、この子は文字通り拾ったのじゃよ。森に落ちておったから、持って帰ってきたのじゃ。つまり行き倒れなのじゃ」

「ひとだすけ」


「行き倒れを人助け……?  それならうん、ひとまずは安心……なのかな? どうなんだろう……? 占有離脱女の子収得経験のない童貞の俺には、よくわかんないや……。っていうか、ハヅキ――」


 俺は「森は危ないから入っちゃダメだって言っただろう?」と言いかけて、しかし言わずに踏みとどまった。


 なぜならここは大事な教育の場面だと直感したからだ。

 ハヅキの将来の為にもここは甘さを捨てて心を鬼にし、厳しく言って聞かせなければならない。

 甘やかすだけが教育ではないのだ……!


 よし、俺はやるぞ!

 俺は屈んで自分の目線をハヅキの目線に合わせると、


「ハヅキ、森は怖い妖魔もいるし迷子になったりしても危ないからなー。ハヅキのこと心配すぎて俺も気が気じゃなくなるから、あんまり入っちゃダメだからなー」


 うん、厳しく言った、これ以上なく厳しく言ったぞ!


 いやー教育というのはほんと心苦しいもんだね。

 こうやって厳しく教育することを通じて、俺もまた一歩、人間として男として成長できた気がするよ。


 しかし俺が教育者としての満足感に浸っていられたのはわずかな間だった。

 というのも――、


「そのことなら大丈夫なのじゃ」

 《神焉竜(しんえんりゅう)》が、


「なにせ南方大森林の東側1/3は、既に主様(ぬしさま)の領地となったからの」

 超自慢げに言ったからだ――。

お読みいただきありがとうございました!

応援励みになります(*'ω'*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ