第174話 おっぱいでいっぱい
翌朝。
半日以上もぐっすりと眠って、なんだかとっても気持ちのいい夢から目をさますと――、
「なん……、だと……!?」
俺は自分の視界がおっぱいでいっぱいなのを発見した。
視界の全面が肌色に染まっていて、さらにはシュガーでスイーツな甘くて甘い女の子120%の香りが漂ってくるのだ。
「……ご、ごくり」
さらに俺がみじろぎすると、
もにゅっ――、
顏に押しつけられていた、圧倒的な存在感をもったマシュマロ的なスイカップおっぱいが形を変え、やわらかさと、同時に瑞々しい弾力をこれでもかと伝えてくるのだ……!
間違いない、これは――、
「これは《神焉竜》のおっぱいだ……!」
俺ほどになれば見ればわかります!
ウヅキのそれとはまた少し違った、しかしこれまた極上のふくらみが、俺の顔を否応なく攻め立ててくるのだ……!
その感触の素晴らしさときたら、野球の聖地・阪神甲子園球場の誇る広大な右中間・左中間のごとし。
甘美な罪の果実が、パラダイス銀河が――今俺の目の前に、ある!
――なんていう桃色すぎてアレでナニなポエムを俺が脳内でまき散らしていると、
「おお、主様、起きておったのか」
おっぱいがしゃべったと思ったら、
「主様♪ 主様♪」
二つの手のひらが俺の耳元の敏感なところを、さわさわさわっとわざと触れながら頭をぎゅーっと抱え込んできて、
「なっ!? 俺の頭がおっぱいに埋まっている……だと……!?」
大変なことになっていた。
しかも顔全体がむぎゅっとおっぱいに押し付けられてしまっているため、シュガーミルクな女の子の香りが、どんどん強く勢いを増して俺の中に入ってくる……っ!
「くっ、右も左も前も、視界の全てが完全におっぱいで封じられている……! だけでなく俺の中までもが、おっぱいの匂いによって満たされ支配されている……!」
なんということだろうか!
控えめに言って――最高です!
もにゅ、もにゅもにゅもにゅ……っ!
「恥ずかしがりもせずに、自ら顔をすり寄せて堪能しようとするとは、ほんに主様は欲望に素直じゃのぅ。しかしそれもまた英雄の定めじゃ。ほれほれ、もっとむぎゅむぎゅしてもよいのじゃぞ?」
「OKが……でた……!?」
えっちなお姉さん――いやえっちすぎるお姉さんに甘やかされて、俺の欲望ならぬ欲棒がむくむくと己を主張し始める……!
多幸感に包まれながら、俺がその神代の双丘に、今まさに手を伸ばさんとした時――、
「セーヤさん、今日は遅めの朝なんですね。そろそろ朝ごはんですよ――、はぅあっ!?」
ドアを開けて入ってこようとしたウヅキが、すっとんきょうな声を上げて、動作の途中でピタリと固まった。
そして、
「す、すすすすみません! 昨晩もしっぽりしっとり大人の夜をお楽しみだったんですね! 朝ごはんは置いておきますので、ご、ごゆっくりどうぞ!」
顔を真っ赤にしたウヅキは、ピューンと脱兎のごとく逃げ出していってしまった。
「ふむ、どうやら奥方殿に少々勘違いされてしまったようじゃの。すまんが主様、妾は奥方殿の誤解を解いてまいらねばならぬ」
《神焉竜》はそう言うと、俺をぎゅーっとしていた手をゆるめると、あっさりと布団から身を起こした。
当たり前のようにその姿は裸で、そのボンキュッボンなナイスバディを惜しげもなく晒している。
「主様ともう少しこうしていたい気持ちもあって名残惜しいのじゃが、愛妾としての道理もわきまえぬと思われては、妾の名が廃るというもの」
言って《神焉竜》は服をひっかけると、そのままウヅキの後を追っていったのだった。
そうして一人さみしく取り残されてしまった俺はというと――、
「とりあえず朝ごはんを食べに行くか……、お腹も減ったし」
独り身となった肌寒さに一抹の寂しさを覚えながら、いそいそと起き上って服を着替えはじめたのだった。
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