表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

160/438

第155話 間違ってない、間違ってないけれども!

「ふむ、つまりはだ。どこぞに(とら)われておる、主様(ぬしさま)のわんこの妹達(シスターズ)を助けたいという訳じゃな?」


「むっ、きさまっ! 我らは犬ではない! 誇り高き《シュプリームウルフ》だ!」

「ほほほ、さすがは主様(ぬしさま)、連れているわんこも超一流じゃのぅ」


「だから我らは狼だと言っている!」


「その面倒くさい性格は代を変えても変わらんのぅ。じゃが悪く思わんでたもれ。《シュプリームウルフ》はSS級の中でも最弱。(わらわ)にとっては、犬も狼も等しく取るに足らぬ矮小(わいしょう)なケモノに過ぎんのじゃから」


「なにおう! この超年増のドラゴンめ!」


 ひくっ――。


 《神焉竜(しんえんりゅう)》の額に怒りの青筋が浮かびあがった。


「……なんじゃと? もういっぺん言ってみるがよい、(あわ)れで卑賤(ひせん)な犬っころ風情(ふぜい)が。その過ぎた口を永久に閉じさせるくらい、(わらわ)には造作もないのじゃぞ?」


「何度でも言ってやるのだ! このおばさn――」


「あー! はい! わかったわかった! 味方同士でいがみ合っても始まらない、な? みんなで仲良くしよう、な? な! なっ!!」


 やばそうなNGワードを機敏に察知した俺は、すぐさま仲裁のために割って入った。

 素早い対処のおかげで、すんでのところで事なきを得る。


「まったく主様(ぬしさま)ときたら、あちらこちらに首を突っ込むだけでなくこんな犬っころまでかばってみせるなど、ほんに人が良いのぅ……」


「いや別に人がいいわけじゃないけどね。成り行きというか」

 自慢じゃないが俺はどちらかというと、自分と関係ないことに首を突っ込む性質(たち)ではない。


「なに、(わらわ)ほどになれば見ればわかるのじゃ。世界の果てまで見通す(わらわ)の『真なる龍眼』にかかれば、主様(ぬしさま)大海(たいかい)のごとき真心をはかることくらい、朝飯前じゃからの」


「さすがです、セーヤさん!」

 久々に聞いたな、ウヅキのそのセリフ……やっぱいいな、うん。


 でも『真なる龍眼』ってば、実はぜんぜん見通せてなくね?

 微妙にポンコツっぽいけど大丈夫?


「ま、それはそれとしてさ。せっかく会いに来てもらったところ悪いんだけど、今は最優先でシロガネの姉妹を探そうかなって思っててさ――」


「それならもう見つけておるのじゃ。ここから3キロほど北にある、大きな屋敷がまばらに立つ一角(いっかく)におるみたいじゃの」


「…………は?」


 俺はぽかんと口を開けた。


 周りのみんなも同じく「えっ?」って顔をしている。


「えっと、見つけたって、何を……?」

 困惑するみんなを代表して尋ねてみる。


「もちろん《シュプリームウルフ》の幼い姉妹じゃが? いま探しておるのじゃろう?」

「いやまぁそうなんだけど……その、なんで分かるんだよ?」


「我が『真なる龍眼』を甘く見てもらっては困るのじゃ主様(ぬしさま)


 すみません、甘く見てました。

 ついさっき微妙にポンコツとか思っちゃいました。


 今はとても反省しています。


「でも俺の『龍眼』では、そんなの分からなかったんだけどな」

 さっき一応試しに使ってみたんだけれど、全く手がかりすら得られなかったのだ。


主様(ぬしさま)のそれは、なかなかによく竜の力を真似た術じゃがのぅ。まだまだ力の本質、真理にはたどり着いておらぬのじゃ」

「マジか……」


「『龍眼』とは単に見えないものを見ること――ただ遠いものを見る千里眼には(あら)ず。その本質とは離れた場所にいる個体同士の意思疎通、心のやり取りなのじゃよ。今回は助けを求める子犬の心を拾ったまで。だからほれ、このようなことも可能じゃ」


 《神焉竜(しんえんりゅう)》がそう言った瞬間。

 俺の頭の中に一つの大きな建物、その内部がテレビ映像のように映し出されたのだ。


 いや、みんなの驚いた顔を見るに、ここにいる全員がその映像を共有している……!


「これって――」

(わらわ)の知覚の共有じゃ。『龍眼』とは伝達の術、よってただ見るだけでなく応用次第ではこれくらい造作もないのじゃ」


「こいつは驚いたね……」

「すごいです……」

「うにゅ」

「あっ、いたのだ! 妹たちなのだ!」

「これで決まりですわね!」

「この屋敷、たしかスコット=マシソン商会の古い保養所――」


 凄い、凄すぎるぞ《神焉竜(しんえんりゅう)》。

 SS(ダブルエス)級って敵にすると泣きたくなるほど強いけど、その分、一たび味方になれば反則級に心強すぎる……!


 おかげで一気に解決に持っていけるぞ……! 

 俺は《神焉竜(しんえんりゅう)》に向き直ると、


「ほんと助かったよ。ありがとうな、力を貸してくれて」

 しっかりと頭を下げて感謝の気持ちを伝えたのだった。


「ぶっちゃけ矮小(わいしょう)な人族のくだらぬいさかいなんぞに、(わらわ)は興味はナッシングなのじゃが、困っておるのは他ならぬ主様(ぬしさま)じゃからの。今回だけは特別なのじゃ」


「本当に助かったよ。ありがとうな」

 感謝の言葉を重ねて伝える。


「よいよい。それに(わらわ)の手柄は、つまりは主様(ぬしさま)の手柄なのじゃ。であれば(わらわ)に感謝するのではなく、手柄を皆に誇るがよいぞ」


「いや、さすがにそれはどうなんだろうな?」

 人としてダメすぎる気がする。


「それよりも、ここは愚かで蒙昧な思念が渦巻いておってかなわんのじゃ。はよう解決して主様(ぬしさま)の家に行くのじゃ」

「……ずっと気になってたんだけどさ。その『主様(ぬしさま)』って呼びかたはなんなんだ?」


「何なんだと言われても困るのじゃが、好意を込めた愛称じゃよ? (わらわ)主様(ぬしさま)は知らぬ仲でもあるまいて。先日も(わらわ)を地面に()いつくばらせて、あの雄々しく巨大な剛直でもって散々に(なぶ)ってくれたではないか」


「は!? ――って、それ、空を飛ばれたら面倒だから飛ばせないように牽制して、《|天地開闢セシ創世ノ黄金剣アマノヌホコ》で最終決戦したって意味だよな!?」


「最後は力尽きて倒れ込んだ(わらわ)の耳元で、耳に心地よい睦言(むつごと)をささやきながら優しく愛撫してくれたじゃろう?」

「間違ってない、間違ってないけれども!」


「ママー、変態がいるー!」

「しっ、見ちゃいけません!」


「そ、それでしたらわたくしだって!」


 サーシャが勢いよく手を挙げた。

 もはや嫌な予感しかしない。


「わたくしだってセーヤ様の熱いものをたっぷりと身体中に注ぎ込まれ、最後は凛々(りり)しくいきり立ったイチモツを『えいや!』って発射させましたの!」


「だからなんで! わざわざそんな誤解を招くような言い方で張り合うの!? 《神滅覇王(しんめつはおう)》の黄金の粒子で創造した矢を射ったってことだよね!?」


「ママー、ヤリチンクソヤロウがいるー!」

「しっ、指差しちゃいけません! ヤリチンが伝染(うつ)っちゃうでしょ」


伝染(うつ)んねぇよ! そもそもヤリチンどころか純真なチェリーボーイだっつーの!」


「はづきも、ちんちん、なでた」

「セーヤさんは、お風呂ですごく優しかったんです、えへへ」

「アタイも、えっちな下着の鑑賞会をする約束をしたね」


「おまえ……」

 シロガネが完全に引いていた。


「くぅっ、こんなやつに我は身体を捧げねばならんのか……!」


「お前はお前で、なにを言ってんの!?」


「だって我の耳を差し出しただろう! 我らにとって耳を撫でさせるのは求愛の証なんだからな!」


 うん、獣人族のココさんがそんなことを言っていたね……?

 この求愛ルールは、《シュプリームウルフ》にも当てはまっちゃうんだね……。


「修羅場……」「七股……」「あんな小さな子まで……」「穴があれば手当たり次第……」「認知するのが男の責任……」

 などといった、無実の俺を糾弾してやまない事実無根のひそひそ話が周囲から漏れ聞こえてくる……っ!


「よし! とりあえずは場所を移そう。話はそれからだ」

 俺はそう提案すると、みんなを引き連れて、逃げるようにその場を後にしたのだった――。

「無敵転生」をお読みいただきありがとうございました。

楽しんでいただけておりますでしょうか?

よろしければブックマークと評価をいただければとても嬉しく思います!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ