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第16話 異世界英雄伝説? ――神滅覇王――

「これはこれは旅のお方。この度は孫娘の危ないところを助けていただいたそうで、まことにありがとうございました。感謝してもしきれませんぞ」


 そう言いつつ、ウヅキと一緒に初老の男性がやってきた。

 いかにも温厚そうな笑みと話しぶりは、どことなくウヅキに似たものを感じさせる。


 おじいちゃんを呼んでくるっていってたもんな。

 まず間違いなくこの人がそうなのだろう。


 老人はちゃぶ台を挟んだ俺の対面に腰を下ろした。

 ウヅキは俺の隣にやってくると、背筋がスッと伸びた綺麗な正座で座る。

 自然と俺も居住まいを正した――作法系A級チート『不動如山うごかざることやまのごとし』が発動して、ウヅキに勝るとも劣らずの美しい正座姿を披露する。


 ――気にはなるけど、日本刀(かたな)のことは別に後でもいいか。


「いえ、たまたま居合わせただけなので、そんな、感謝なんてしていただかなくともかまいません。それにあれくらいなら、ぜんぜん余裕ですし」

「ウヅキからもとてもお強かったと聞いております。おっと失礼、申し遅れました。ワシはウヅキの祖父でサクライ・グンマと申します」


「俺は麻奈志漏(まなしろ)誠也です」

「マナシロさま、実に風流で良きお名前ですな。……聞けば、今晩泊まるところを探しておられるとのこと。マナシロさまは孫娘の命の恩人ですじゃ。一晩などとは申しませぬ。ぜひともしばらくの間、当家にお泊り下さい」


「本当ですか、それはすごく助かります……でも、いいんですか?」

「なにぶん貧しい村ですのでロクなおもてなしもできませんが、はは、なーに部屋だけはあり余っておりますから」


「いえそんな、恐縮です。泊めてくれるだけでもほんと、十分ありがたいです」

「いやはや、マナシロさまは、若いのによくできた御仁じゃのう」


「そうなんです、セーヤさんは凄いんですよ!」

 ここまで脇でじっとやりとりを聞いていたウヅキが、ここぞとばかりに声を上げた。


「セーヤさんは凄いんです! すっごく強くて、すっごく優しくて、すっごく格好良くて――」


 いかに俺がすごいかを、嬉しそうにグンマさんへと語って聞かせるウヅキ。

 まるで買ってもらったばかりのおもちゃを友達に自慢する子供みたいに、キラキラと目を輝かせていた。


 出会ってからずっとウヅキは俺のことを持ち上げてくれて、持ち上げすぎてくれていて、しかもおべっかじゃなくて本心からですって感じがすごく伝わってきて。

 でも、さすがにちょっと恥ずかしいぞ。


 もちろん恥ずかしいよりも、ウヅキみたいに可愛い女の子にチヤホヤされるのは、すごく楽しいってのが先に来るんだけどな!

 全チートフル装備さまさまである。


 その後、ウヅキによる俺の武勇伝発表会が始まって。


 やれ「風のように颯爽(さっそう)と現れた」だの、やれ「瞬きする間もなく視界に捉えた全ての敵を倒した」だの、やたらと誇張しすぎな修飾語でマシマシに盛り付けられた俺は――。


 最終的に、神をも殺すという、この世界に伝わる伝説の《神滅覇王(しんめつはおう)》とやらにまでなってしまっていた。


 なんでも一度(ひとたび)剣を抜けば、夜空に瞬く星を撃ち落とし、邪悪なドラゴンだろうが偉い神様だろうが相手構わずしばき倒して回った、この世界の創世神話に登場する伝説の大英雄だとかなんとか。


 話を戻そう。

 ウヅキの話をこれまた楽しそうに聞くグンマさんは、それはもう好々爺って感じで場は盛り上がり。 


 ウヅキ語り部による大河ドラマもビックリの異世界英雄伝説が一段落したところで、


「じゃあそろそろ、私はハヅキのところに行ってきますね」

 言って、ウヅキが立ち上がった。


「ハヅキ?」

「妹の名前です。『月華草(げっかそう)』を煎じて飲ませてあげるんです」

「ああ、そっか。それで治るんだっけか。それなら早く飲ませてあげないとな」


 ウヅキはそのために、危険な目にあってまで薬草を採りにいったんだもんな。

 ――なのに。

 そのはずなのに。


「あ、えっと――」

 急にウヅキが口ごもったのだ。

「無敵転生」をお読みいただきありがとうございました。

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