第154話 集う仲間たち 3 全員集合!
「え!? なんだって!!??」
俺は因果を断絶するディスペル系S級チートを最大出力で行使した――んだけど、
「主様のその術、ほんに奇妙よのぅ。妾の自慢のブレスすら問答無用に打ち消すほどじゃ。どうも『先』と『後』の繋がり――『縁』に干渉しているように見うけられる。じゃがの、こうも何度も見せられては、抗するすべも見えてくるというもの」
「なん……だと……?」
効いていない、だと……!?
「要するに『縁』を断たれんようにしっかりと手綱を握りしめておけば、ある程度は抵抗することも可能ということじゃ。主様も便利な術だからと言って、あまり過信して多用するのは禁物じゃぞ?」
マジかよ、こんな簡単にS級チートが無力化されるのかよ。
これがSS級の実力……改めて、俺よくこんな途方もない相手に立ち向かったよな……自分で自分を褒めてあげたい。
「での、話を戻すんじゃが、あの街に戻ったものの主様はおらず、かといって帰るに帰れず。途方に暮れておったところ、幸運にも奥方殿と出会ったのじゃ」
「俺んとこに来るのは、もう揺るぎのない確定事項なんだね……」
でも、この調子ならさすがに寝首をかかれるってことはなさそうだし、男の子の理想を体現したようなえっちなお姉さんと同棲できると思えば、ぜんぜん悪くないな。
――ごめんなさい、今ちょっとスカしてカッコつけました。
えっちなお姉さんとのとの同棲、大変とってもものすごく期待しております。
「そうだよな、困ってるお姉さんがいるんだ。手助けするのは当然だよな、人として」
まぁサクライ家は「俺ん家」ではないので、あとでウヅキにお伺いを立てないといけないのだけれど……。
「ん? でも奥方殿? ……ってあれだろ、つまり奥さんってことだよな? えっと、誰の?」
「それはもちろん主様のじゃが?」
「え、俺の……?」
豆鉄砲をくらった鳩がいたら、きっと今の俺のような顔をしていることだろう。
長きにわたる童貞を清く正しく美しく、耐えがたきを耐え忍びがたきを忍んで生き抜いてきた俺が、実は結婚していただと!?
「お前は何を言っているんだ」
思わずマジレスした俺だった。
「ほれ、ウヅキと言ったか、あの勇敢なる少女じゃ。もう既に一緒に住んでおるのじゃろ? 別に隠さんでもよいぞ?」
「ああ……いや、ウヅキとはまだそういうアレではないんだ」
「よいよい、分かっておる、分かっておる」
《神焉竜》は満足げにうんうん言っているけど、
「その反応は間違いなく、分かってない時の典型的な反応だよね?」
「それにの、主様のような英雄が多くの色を好むは、これまた世の道理よ」
そしてさくっとスルーされた俺のツッコミである……。
「その辺、妾は理解があるゆえ安心せい。主様を独占しようなどとは思わんでな」
「え、あ、そう……?」
綺麗なお姉さんにそんな風に言われるのは正直嬉しいんだけれど、さすがに《神焉竜》に言われるとどう反応していいか困るんだ……。
「それにの、おたまとしゃもじで妾に立ち向こうてきた度量の持ち主たる奥方殿であれば、《神滅覇王》たる主様にも相応というもの」
凄いなウヅキ。
神話を終わらせた伝説の《神焉竜》が手放しで認めた、おそらくきっと世界で唯一の女の子だぞ。
――じゃなくてだな!
「なんか話がこんがらがってややこしくなってるんだけど、今ちょっと訳ありでさ――」
話は後で――と言いかけたところで、
「まなしー!」
またもや俺を呼ぶ声が聞こえた。
その声も、その呼び方にも、今度はしっかりと覚えがある――!
「ハヅキ! おまえ、どうしてこんなところに」
それはウヅキの妹、すっかり元気な様が板についたハヅキだった。
「まなしー、あいたかった、から」
「そうかそうか。うん、俺も会いたかったぞ」
駆け寄ってきたハヅキを優しく抱っこしてやる。
「サシャねぇ、おひさ」
「ハヅキちゃん、お久しぶりですの!」
ずっと俺の腕に抱かれたままだったサーシャも、嬉しそうにハヅキをぎゅっとした。
なんとなく、親子3人でハグしあってるみたいな感じになった。
もちろん、あくまでイメージだよ?
「っていうか別に久しぶりではないよな? 1日ぶりくらいだよな? いやいいんだけど。なんとなく俺も1ヶ月以上会っていない気がするし」
「うにゅ?」
「まぁそれはそうとして。どうやってここまで来たんだ? ディリンデンからじゃ遠いってレベルじゃないだろ?」
「それはもちろん、妾が一っ飛びで飛んできてやったのじゃ」
「ドラゴンさん、すごかった。とりさん、より、はやかった」
「おー、そいつはすごいな」
「うにゅ」
「ふふん、妾は天空の支配者、竜の中の竜――《神焉竜》アレキサンドライトぞ。一介の鳥ふぜいに遅れはとらんわ」
「おまえSS級のくせに、いちいち野鳥と勝負してんなよ……」
「ほれ、話しているうちに奥方殿もやってきたようじゃぞ」
言いながら《神焉竜》が見やった方向から、寄り添うように歩いてくる二人は――、
「ウヅキ! それにナイアも!」
「セーヤさん、えへへ、来ちゃいました」
それはもう嬉しそうにはにかんだウヅキと、
「やあ、セーヤ。また人助けをしてるんだってね」
映画のワンシーンのように、爽やかに手を振るナイアだった。
「なんだ、二人も来てたんだな」
「《神焉竜》さんがセーヤさんのところに行くというので、その、ついて来ちゃいました……」
申し訳なさそうに縮こまって言う姿は、うん、さすがウヅキ、めっちゃ可愛いぞ。
「アタイは《神焉竜》の監視だね。さすがに見張りもなしで帝都に行かせるわけにはいかなくてさ。全ての仕事を後回しにして、最優先で同行したってわけさ」
「おう……悪いな、ナイアにはほんと苦労かけてばかりで……」
「やれやれまったく、人族というのはいちいち心配性よのぅ」
「いや心配もするだろ。お前の気分次第で下手したら帝都が地図から消えるかもしれないってのに」
「主様がやれというなら、すぐにでも我が《神焉の黒き炎》でもって、向こう数十キロを消し炭すら残さずまっさらの更地にしてやらんこともないのじゃが」
「言わないよっ!?」
夏休みの宿題を全くしていなくて8月31日に、
「ノストラダムスの大予言で、世界が滅びて新学期が来なければいいのに」
と願った、どこぞのアホな男子小学生じゃないんだからさ。
はい、それは子供のころの俺です。
どうしようもないアホでした。
「ところで主様、何か急ぎの用があったではなかったかえ?」
「そうだ、うん、そうなんだよ。せっかくだからみんなにも聞いてもらおうかな。実は、かくかくしかじかでさ――」
俺の他に、サーシャ、クリスさん、シロガネ、ウヅキ、ハヅキ、ナイア、そして《神焉竜》。
一気に8人の大所帯となった仲間たちに、俺は状況を説明したのだった――。
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