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第138話 女の子がピンチな時にカッコよく決めてみせるのが男ってもんだろ?

「え――?」


 サーシャの身体が車外に放り出される――!


 それを認識した瞬間――、


「クリスさんはこのまま帝都へ!」

 俺は極めて簡潔に役割分担の指示を出すと、荷台の中を走り出した。


「了解しました――どうかお嬢さまをお願いします」

 そしてこれだけで自分の役目を理解してみせたクリスさんは、ほんと有能にすぎて頼りになるぜ!

 クリスさんの声を後ろ手に聞きながら、


「スポコン系S級チート『音速の貴公子(アイルトン・セナ)』発動! 間に合えよ――っ!」

 一歩目からトップスピードに加速するS級チートによって超加速した俺は、荷台後部からサーシャを追って夜の暗闇へと、躊躇(ためら)うことなくダイブした――!


「サーシャ!」

 声を張りあげて闇夜に伸ばした俺の手が、


「セーヤ様……!」

 呼び掛けに応えてサーシャが伸ばした手を、しっかと摑まえる。


 そのまま空中で強引に引き寄せ、どうにか地面に激突するギリギリ手前でサーシャを抱きかかえると、

「スポコン系S級チート『ネイマール・チャレンジ』発動!」

 

 天才サッカープレイヤーのダメージ回避術を模したS級チート――地面を転がることにより、1/3の確率で転倒による致命的ダメージを無効化してくれる――を発動する!


 そのまま和弓と一緒にサーシャを抱きかかえるようにして地面を転がっていく。

 ゴロゴロと10メートルほど転がってやっとこさ止まると、すぐに腕の中のサーシャが血相を変えて尋ねてきた。


「セーヤ様!? わたくしをかばって――」

「ははっ、それだけ元気ってことは、サーシャは大丈夫だったみたいだな」


「わたくしは大丈夫ですわ、だってセーヤ様が、セーヤ様が守ってくれましたもの! それよりもセーヤ様のほうが怪我を――って、あれ、ですの? ピンピンしてますわ? ……むむむ?」

 小首をかしげてきょとんとした顔を見せるサーシャ。


「ま、俺ほどになればこれくらいは朝飯前さ」

「えっと、あの、そう……なのですわ?」


 ああそうなのさ。

 だいたい確率がなんだってんだ?

 1/3=33%の確率程度、女の子を守るためならば毎回成功を引ききってみせようじゃないか。


 そもそも確率なんてもんは、勝てない言い訳を用意したい敗者のロジックにすぎないんだ。

 女の子がピンチな時にカッコよく決めてみせるのが男ってもんだろ?


 だったら女の子ピンチ補正のかかった俺にとって、「33%」とはつまり「100%」という意味に他ならない……!


「あぁ……なんて素敵なまなざしですの……」

 気が付くとラブコメ系A級チート『決意に満ちた主人公のまなざし』が発動していた。


 もちろん無敵の最強ラブコメ系S級チート『ただしイケメンに限る』もガッツリ発動中であり、サーシャが俺に向けてくる熱すぎる視線が無性に照れくさいぞ……!


 だけど残念なことに、今はそんな素敵なモテモテに浸っている訳にもいかなくてだな。


「それより――来るぞ!」

「!!」


 向かってくるは《シュプリームウルフ》。

 《群体分身(ミラージュファング)》によって群れとなった白銀の一団だ。


 転落した時に弓を荷馬車に残してきてしまったサーシャを、背中に隠して守るようにして俺は和弓を構えた――が、しかし、接敵することはなかった。


 《シュプリームウルフ》は俺たちを一顧だにせず追い越して、荷馬車を追っていったからだ。


「ここで荷馬車を逃すとお前らの負けだもんな。まずは荷馬車を追う、それは常識的な判断だけど――」

 俺は4本の矢を一気に矢筒から引き抜くと、それを一射にて同時に放った。


 4本の矢が先頭にいた合計8体を串刺しに射ぬき、行動不能に陥れる。

 さらに俺は間髪入れずにもう4本を一射にて射放つと、これまた先頭に立っていた8体を見事に射抜き、これで都合16体を一気に無力化してのけた。


「――だけど、規格外のこの俺を放置していくってのは、ちょいと悪手だったと思うぜ?」


 これで残る矢は1本だけとなってしまったものの、

「これだけ引き離せば、もう追っても無駄だろう――」


 言い終わる瞬間、


「――っ!」

 知覚系S級チート『龍眼』が危険を察知し、俺の左目が妖しく(きら)めいた――!


 振り返りながら和弓を放り捨てると、俺は即座に日本刀(クサナギ)を抜刀する――!


 ガキーン!


 直後、辺りに激しい金属音が響き渡った。

 居合抜きした日本刀(クサナギ)と、猛突進から振り下ろされた巨大な爪が、激しくぶつかり合ったのだ――!


 体重の乗った猛烈な爪撃(そうげき)を、ズザーっと足を滑らせ、敢えて後ろに押し込まれることで力を逃がして持ちこたえる。


「くっ、サーシャ下がってろ! こいつが《シュプリームウルフ》の本体だ!」

「わ、わかりましたわ!」


 サーシャは俺がとっさに投げ捨てた和弓を拾い上げると、少し心配そうな表情をしながらも言われた通りに離れていった。


「よし、いい子だ――」

 それを横目で確認しながら、俺は巨大な狼との戦いに全神経を集中していく。


 日本刀(クサナギ)を抜いたことで、既に戦闘系S級チート『剣聖』は戦闘モードに切り替わっている。


「SS級『幻想種(ファンタズマゴリア)』《シュプリームウルフ》、できれば戦いたくはないんだけど、やるってんなら容赦はしないぜ――?」

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