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第12話 『え? なんだって?』 (1回目)

「にしてもこの辺って結構、物騒なんだな……あんまり女の子が一人歩きとかしない方がいいんじゃないか?」


「それが、ここ数か月で急に妖魔が活発になっていて……それでも一応このあたりは人里も近くて、安全なはずだったんですけど……」

 しょんぼりするウヅキ。


 ピコーン!

 この流れはいける、いけそうな気がする――!

「じゃあさ――」


 行け、行くんだ、麻奈志漏(まなしろ)誠也!

 ここが気合いの見せ所だ!

「じゃあさ……護衛っていうか、薬草を取りに、い、一緒に行かなぃヵ――」

 しかし意気込みは最初だけで、最後の方は蚊の鳴くようなかすれ声だった。


 ――これでも頑張ったんだよ!?

 すっごく頑張って言ったんだよ!?

 ほんとに頑張って頑張って、清水(きよみず)の舞台から飛び降りる気持ちで、どうにかこうにか言ったんだからねっ!?


 だって一緒に薬草を取りに行くって、つまりこれって、いわゆるひとつのデートに誘うってやつじゃん!

 女の子をデートに誘う経験が、転生前の俺にあったとでも!?

 いや、ない!


「……大丈夫、落ち着け、落ち着くんだ」

 今の俺には、(たぐ)(まれ)なるS級チートが、それこそ冷戦期の米ソの核弾頭のごとくずらりと揃ってるんだ。


 事実、ラブコメ系S級チート『ただしイケメンに限る』はウヅキと出会ってからずっと、途絶ええることなく発動しっぱなしなのだ。

 だから帰ってくる答えはイエスしか――


「ごめんなさい」

「え? なんだって?」

 意図せず、因果を断絶して結果を無かったことにするディスペル系S級チート『え? なんだって』が発動してしまい、


「ごめんなさい」

 結果、聞きたくなかった答えを、わざわざ2回も聞く羽目になってしまう俺。


「が―ん……」

 麻奈志漏(まなしろ)誠也は轟沈した。

 全面チート頼りだったとはいえ、なけなしの勇気を振り絞っただけに、この答えはマジ(へこ)むんですけど……


 っていうか、S級チートはどうしたのさ!?

 『ただしイケメンに限る』は!?

 楽しみにしていた深夜アニメの最終回だけ、狙ったように録画失敗してみせる実家のレグザじゃないんだから、こういうことされるとボク困るんですけど!?


 まさかのごめんなさいを喰らって、俺が落ち込んでしまったのが分かったのか、


「あ、違うんです。その……さっきも言ったんですけど、うちはあまりお金がないので、護衛のお金を払うなんてとてもじゃないけど、できないんです……だから、お気持ちは嬉しいんですけど、ごめんなさいなんです」

 すぐにウヅキが補足説明をしてくれた。


「ああ、そういうこと」

 良かった、うん、ほんと良かった。

 「護衛」といらん理由を付けたのが悪かったわけだな、うん。


 ……はい、断られた時の逃げ道を用意していました。

 断られても「護衛を断られただけ」だからって、あとで悲しくならないように予防線貼っておこうって、ずる賢く浅はかなことを考えていました。


「なら問題はないよ。護衛って言うか、俺が勝手に同行したいだけだから。タダでいいよ、タダで」

「セーヤさんのような凄腕の護衛を無料で雇うなんて、そんな失礼なこととてもできないです!」

 両手を左右に振って固辞するウヅキに、


「うーん、じゃあ、こういうのはどう? 実は俺って無一文の上に、行く当てがないんだよ。世の中のことにも疎いしさ。だから今からウヅキの村に案内してくれないかな?」

「それは、構いませんけど……」


「で、その途中にウヅキは薬草を取りに行って、俺は村に行くまで、道中ウヅキを守ると。これなら対等でしょ? ついでに今晩、軒下でも貸してくれたりするとありがたい」


「そ、そういうことなら是非――」

「じゃ、交渉成立ってことで」


「はい! えへへ、もうちょっとセーヤさんと一緒にいられますね」

 そう言ってはにかんだウヅキは、思わず見とれてしまうほどに、それはもう可愛かった。


「ではセーヤさん、道中よろしくお願いしますね」

「まかせとけ、タイタニックだって沈めずに無事に送り届けてみせるから」


「たいたにく? あ、炊いたお肉ですか? セーヤさんなら、冷める前に届けてくれそうですね!」

本作をご覧になって頂きありがとうございます。

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