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第105話 私服のナイア

 決闘の舞台となった砂浜からディリンデンへと戻ってきた俺は、


「確か西側に商業区があって、お店や屋台がたくさん出てるって言ってたよな」

 ウヅキに聞いた情報を思い出しながら、まずは城門付近で今後の方針を立てていた。


 ここは俺が数少なく知っている場所というか、微妙に縁があるというか――、


「明るいところで見るのは初めてだけど、ほんとに大きくてガッチリした城門だったんだな。昨日の夜、無茶して壊さなくて良かった……」

 ぶっちゃけ壊して入ろうとした所である。


 おのぼりさんよろしく周囲をきょろきょろ物珍しげに見回していると――この城門はランドマークでもあるからか――慣れた様子の商人や住民たちに混じって、俺と同じように周囲を見回している人々が随所に見受けられた。


「昨日の夜にあれだけ激しい戦闘があったってのに、朝からみんな元気だなぁ」

 これは誰に聞かせるでもない、ただの感想というか独り言だったんだけど、


「みんな日々の生活があるからね。十年一日(じゅうねんいちじつ)。新しい朝が訪れるたびに、朝食の時間もまた新しく訪れるものなのさ」

 

 俺の呟きに答えるようにして、後ろから声をかけられたのだった。


 ちなみに知覚系S級チート『龍眼』は、害意や敵意がない相手に対しては、基本的に自動反応はしてくれない。

 まったく、S級チートのくせして微妙にケチくさいよね。

 それはさておき。


「やぁ、セーヤ。こんなところで奇遇だね」


 振り返った先にいた声の主は、スタイル抜群の長身の女性だった。


 ドラマ「ドクターX」に出てくる失敗しない女医さんのごとく、長い脚をこれでもかと見せつけるミニスカート。

 シンプルだけどスタイリッシュな装いを、スーパーモデルみたいにカッコよく、時々可愛いく、って感じでお洒落に着こなしていて、できる大人のお姉さん感が半端なかった。


 やっぱ高身長のお姉さん+ミニスカートの組み合わせは、めちゃくちゃ映えるなぁ……。

 しかも細すぎず太過ぎずの健康的な太ももは、女性らしさの極致であり、これはもはや芸術……!

 芸術とは理性を殴打して、本能へと直接訴えかけてくる美的存在のこと。


 つまり――、


「くっ、視線が魅惑の太ももに吸い寄せられてしまう……っ!」


 思わず見とれてしまったのは、これはもはや生物学的本能!

 だってミニスカートの超際どいラインが、俺の視線を誘惑してやまないんだもん!


 これちょっと俺がしゃがんだら、奥まで見えちゃうんじゃない?

 お金を落とした振りして、しゃがんじゃう?


 ……はっ!?

 今のは、ち、ちがうんだ、つい出来心で!

 それに、そう!

 今は俺の好みとか性癖とか、そう言うのは置いといてだな!


「……えっと、どちら様? ――って、ああ、ナイアだったのか」

「おやおや、つい数時間前に生死を共にしたアタイの顔を見忘れるなんて、まったく、セーヤはとんだ女泣かせだね」


「マジでごめん。いつもの白銀の甲冑と全然違って、雰囲気も別人だったからさ。うん、でも、私服もすごく似合ってるよ。思わず見とれてしまうくらいに超似合ってる」


「そ、そうかい? なら良かった。やっととれた休憩時間に、気分転換もかねて外に出てみたんだけど。うん、セーヤには褒めて貰えたし、悪くない選択だったね」


「なんだよ、そんなマジで嬉しそうな顔で言われたら照れるだろ……」

「アタイだって言ってて恥ずかしいんだから、お互いさまだね」


「お、おう……」

「うん……」


 ……なにこのこそばゆい甘々な雰囲気。

 告白される前と後で、人間関係ってこんなに変わるもんなの!?


 しかもだ。

 ただでさえ美人なお姉さんって感じのナイアが、頬を染めてちょっと上目づかいにそんなことを言ってくるんだぜ?


 しかも初めて見る私服はとっても似合ってて。

 ギャップ萌えもあって、なんかもう可愛すぎてヤバいだろ、常識的に考えて!


「そういえばセーヤは何をしてるんだい? きょろきょろしてたところを見ると観光かな?」

「うん、そんなところだ。ちょっと街を見てみたいのと、あと買いたいものがあってさ」


「観光に買い物か。良かったら一緒に店を回らないかい? ここの住人ほどじゃないけど、アタイにも簡単な案内くらいならできるよ? 買い物するなら、お店もいくらかは知ってるし」

 普段の俺なら願ってもないお誘いだったものの、


「え――っ!? あ、いや、それはその、ナイアにはちょっとばかし頼みづらい買い物というか……」

 ちょっとしどろもどろになってしまう俺。


「……ふむ。その不自然に大げさな反応……。アタイにはあまり知られたくない買い物……。となると、さては女の子への――、ウヅキへのプレゼントかな?」


「ブフゥ――ッ!」

 思わず吹いたわ。


「なにその名探偵っぷり、怖いんですけど!?」

 っていうか、俺の反応ってそんなに分かりやすいの?


「なに、特段にすごい推理ってわけでもないさ。男が女に隠し事をしている時は、たいていが別の女のことを考えてる時と、相場は決まっているだろう?」

「そ、そういうものか……」


 まぁ実際俺がそうだったのだから、きっとそれは普遍的真理なのだろう。

 童貞にはきわめて難易度が高い、男女の機微というやつである。


「セーヤは強いしカッコいいし情熱的だしで、かなりモテそうなものだけど……。意外と異性とのお付き合いには明るくないんだね。でも硬派なところも、アタイ的にはポイント高いぞ! まったく本当にセーヤは女泣かせのいい男だよ!」


「え、あ、そう? ありがとう」

 なぜかモテないことで褒められてしまったぞ?

 世の中分からんもんだね?

 まぁナイアみたいな美人に褒められたわけで、悪い気分は全くしないんだけれど。


「で、さっきの話だけど。アタイは別にウヅキへのプレゼント選びに付き合うのは問題ないよ? ウヅキはとってもいい子だしね」


「そ、そう……? でも女の子へのプレゼントを、他の女の子に選んでもらうっていうのは気が引けると言うか……」

 全周囲360度どうからどう見てもクズ男の所業である。


「それに少なくともその時間は、アタイと二人でデートってことだしね。というわけでだ。セーヤさえよかったら、一緒にブラブラ歩かないかい? なにせ昨日からずっと働きづめでさ。さすがにちょっと気疲れしていて、息抜きがしたいんだ」


 ナイアがさすがに疲れた、って表情を見せた。


「《神焉竜(しんえんりゅう)》を倒したあと、復興の陣頭指揮をとるって言ってたけど、まさかあの後、夜通しずっとだったのか……。偉い人ってほんと大変なんだな……。うん、ナイアさえ良ければ、俺も構わないよ。それで息抜きになるっていうんなら、むしろ喜んで息抜きに協力させてほしい」


「よし、決まりだね。じゃあ買い物と息抜きがてら、二人でデートとしゃれこもうか――」

 言って、ナイアが嬉しそうにニカっと笑った。


「そうか、またもや俺はデートをしてしまうのか……。まだこっちにきて5日目だって言うのに……。ふぅ、何度でも言うけど敢えてまた言わせてもらおう。やっぱりこの異世界は俺のためにあるな……!」


 しかも魅力的なお姉さんとのデートである。


 いいね、うん!

 すごくいいと思います!

本作をお読みいただきありがとうございました。

よろしければブックマークや評価をいただければとても嬉しく思います。

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