魔王ラグナ
帝国のメガーネと対をなす存在
魔王ラグナの物語
人間には理解できないかもしれないが、天使や悪魔、それに類する“概念”が血肉を得たような存在は、母の腹で…
10月10日の血の繋がりなど経験する事もなくポーンと生まれる。
ある者は父の鼻から
ある者は母のわきの下から
ある者はピー(放送禁止ワード)から
ある者はそれこそポーンと虚空から生まれる。
それに比べれば魔王ラグナはなんと幸福であったのだろう。ラグナは母の胎内で一万年ほどたっぷりと過ごし満を持して腹から生まれた。
ラグナの母は偉大なる地の悪魔“マリー”羊の角と蝙蝠の翼をもった家庭的な女性だった。
血濡れのような赤い髪は彼女の笑顔によって地獄の太陽のように輝いて、齢3万を超えても元気に跳ねまわるその姿、あぁそうだ、彼女は割と小柄だったのでそれも相まってかなり可愛いらしい姿だった。
「ロリババア…」
誰だそんな事言うやつは!母さんを馬鹿にしたらケツからマグマ流し込むぞ!
おっといけない、ラグナは母を愛していたし、彼女から受け継いだ角と翼は彼女の誇りであった。
小さな身長を引き継げなかった事に、ラグナは少し落胆していたが、母は背伸びをして頭をなで笑ってくれた。
「ラグナちゃんは背が高くて美人さんねぇ~」
さて問題は“父”である
ラグナの父は天使であった。天界から遣わされ、地上の怪物共を八つ裂きにして周る“鮮血”の天使 “アルデンテ”
父と母の馴れ初め、天使と悪魔のラブストーリーはそれはそれは壮絶で、当然の如く神話として書籍化し、語り継がれ人間達が繁栄していた時代には舞台化はもちろんアニメ化までされたという。
当時ラグナは腹の中だったので見れなかったが聞こえてきた映画の名台詞は空で言える、アニメのOPとEDも大好きだ。
しかし…だ、腹の外で父と母がいちゃつきながら映画館でポップコーンを食べているのさえ感じていた。
ファッションセンターでの会話からさっするに、おソロの服でのデートだったらしい。
そう…ラグナの両親は超・壮絶なバカップルだったのだ。
いやね、もう出会いから種族差からね?壁を乗り越えるほど愛は燃え上がるというけどね…うん。
「限度があるでしょ!1万と5000年はいちゃついてるのヨ!」
実の娘としては複雑だった。というか、1万年も腹の中でバカップルを傍観し続けたのだからとても正常では居られなかった。
「うぅ…私も…父さんみたいな人見つけなきゃ!」
…問題は父であった。
ラグナはその誕生までの極端で歪な状況により、産まれた時から恋愛脳であった。恋に焦がれる乙女であり、同時に極度のファザコンであった。
産まれ故郷である地底の国、トマ島のマグマ岬で燃えるマグマの海を見ながら思ったものだ。
「父さんは母さんのために天界を捨て!地底に来たのよ!本当に素敵!」
えー、地底の国には碌な男が居なかった。
いかつい肉体をもったミノタウロスも、気配りが出来る骸骨伯爵も…誰もラグナの心を満たす事は出来なかった。
彼女の理想はそれはそれは高かった
「そうね…確かに筋肉もいいけど、ムキムキはタイプじゃないのよ、うーん教会にある天使の彫像?あんな感じのスラっとしながら無駄な肉が無い感じで…そうねぇ、天使っていいわよねぇ」
………問題は父であった。
産まれ出でて更に一万年、ラグナは地底を彷徨い続け、そして故郷を捨てる決意をする。
目指すは地上!母と父が出会ったという混沌の世界である!
ラグナは燃えるマグマと共に地上に飛び出した、燃える乙女の心と共に…!
時はパスタ歴3万年、大噴火したトマト火山。
…
……
…………
あれから200年…結局地上でも父を超える男に出会えず。
ラグナは失意の果てに呟いた。
「…こんな世界、滅びてしまえばいいんだわ…」
こうして生まれたのが魔王ラグナ、後に魔王国の頂点に君臨する君主である。
↓母:ブラッディ=マリー 特技:料理 裁縫
↓父:パスタ=アルデンテ 特技:血の惨劇
ラグナたん可愛い(確信