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インテリ・メガーネ~神の肉体を持つ叡智の化身~   作者: 前歯隼三
地上に舞い降りたラファウェイ(天使長)編
6/42

VS牙ゴリラ軍 ~天から舞い降りしメガーネ ~

いっっっっちばん 書きたかった所です!

もうこの話を書くためにこのシリーズを始めたと言っても過言ではない名場面!


バナナでも食べながらリラックスしてお読みいただければ幸いです!

 三年前、この町は消滅の危機にあった。


 サカナールの街を出てすぐの場所には、巨大なクレーターが幾つもある。魔王軍の超巨大ゴーレムと、救国の英雄インテリ=メガーネの戦いの跡だ。

 無数のクレーターは三年の間に池となり、その池の中央には苔むした大きな岩山があった…メガーネにコアを破壊された、哀れなゴーレムの亡骸だ。


 新興宗教メガーネ教の聖地のひとつにもなった岩山だが

今や両国の境を現す、地図にも書かれた重要な場所、その頂上に、牙を生やしたゴリラ達が上りあろうことか旗を突き立てた!


「うおぉおぉお!」

 牙ゴリラの叫びが辺りに響く!その叫びは怒りと共に悲痛を秘めた…言葉に出来ない彼らの魂の叫びだった。

 終戦へ向かう両国の歩みを阻むのは、理屈では抑えきれない歴史の闇だ。

 魔王ラグナの美貌とカリスマに集まった魔王国の住民達の中で、牙ゴリラ一族は異色であった。…純粋な、人間達への怒り!歴史への悲しみ!


 人間が「サル」や「ゴリラ」と口にする時、大抵そこには侮辱な意味が混じる、繊細なゴリラ達の心はその事実にどれほど痛んだ事か!

 極めつけは三年前の戦いの最中、帝国の悪食猫男爵の一手であった。

 魔界の生まれでありながら、人間に与する猫魔族はもともと嫌悪の対象であった…魔界生まれの同胞にも“侮蔑”を刷り込む人間の巧妙さ!


 −牙ゴリラ軍だ!バナナを投げろ!−


 それは先の戦闘で、領民を逃がす為に行われた作戦だった。冗談ではない、悪意もない…彼らは自然に純粋に当然に…猿をゴリラを…下に見ている!

 …唖然とした。今でも思い出すだけで。臓腑が憎しみに燃え煮立つ!怒りに震え立ち止まったゴリラ達は、当然バナナなど食べはしない!

……

そこにあの糞猫は、追い打ちの一手を仕掛けてきた!


「食いつきが悪いな…そうだ!チョコレートをかけてみよう!」


「あぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 ゴーレム岩に旗を突き立て、牙ゴリラ達は咆哮を上げる!何が休戦だ!何が平和だ!


 あの時も丸頭光とかいうジイイの命令がなければ!我らは屈辱を晴らせたのだ!あのジジイも所詮は人間!

 ゴーレムの敗北…、そこからの終戦の流れも…すべて、全て人間達の悪だくみでないだろうか!?

 信じられない!受け入れられない!許す事など出来ない!


「何が終戦だ!腐れ人共と腰抜け魔王軍!俺たちは!ここに牙ゴリラ王国を建国するぅううう!」




 その通達はドーナッツ宮殿にいるメガーネとファンファンの元と、皇太子から正式に皇帝に新任し、各地でパレードをしていたサエワタール4世の元へと届いた!


「どういう事でしょうファンファンさん?これは魔王軍の作戦ですか?」


 帝国は平和へのアピールとして、国境沿いの軍を少しずつ内側へと移行させていた。

 …他でもない、牙ゴリラ達を刺激しないようにと、魔王国代表としてのファンファンからの提案だ。

 もちろん正式な終戦はまだだったので、サカナールの一つ隣、ヒモノン村にはある程度の兵を置いていたが…手薄になったサカナールの街の守りでは魔王軍最強の武闘派、牙ゴリラ軍の猛攻には耐えられないだろう。


 魔王軍の戦争の目的は、土地と権利の確立その為に力を見せつけてきた。

 メガーネの活躍で土地の侵略は最小限に抑えられてきたが…確かに魔王国が提示した「最悪の未来のシナリオ」に魔族達の積年の恨み、屈辱の歴史、その責任と断罪を想起する文面があった。

 脅し文句の一つであろうと、軽く見ていた帝国に問題もあるが…その一文のため、帝国が多くの譲歩を強いた事は事実。それが今になって…


 終戦の間際、平和協定が結ばれる寸前での領土の侵略!

約束が違うと言っても、まだ正式に終戦となったわけではない。戦いとは常に不条理なのだ…


「…私を王都に3年も引き留めたのは、ファンファンさん…貴方でしたね…!」


「ち…違うわ!私は何も!」


 ファンファンは取り乱した!確かにメガーネとの会議を長引かせるために幸せな日々を続けるために色々な工作をしたけれど…そんな!

 うっかり書類にコーヒーをこぼしたり!

 うっかり調査資料を間違えて再調査機関を設けたり!

 メガーネが地方を…それこそサカナールの街に見回りに行くといった時は数日会えなくなる現実に心が壊れ、高熱に見舞われ病院に運ばれた…


(…そんな私を、あなたは寝ずに看病してくれた)


 ほろり


 ベッドで目を覚ます私を出迎えたのは、あなたの優しいまなざしだった。しかし… 


「私はすぐ…サカナールへ行かねばなりません。衛兵!彼女を!」

「あぁ!!」


 なんて冷たい眼差し!そんな貴方も素敵!


……

…………


 …さて、独立宣言をした牙ゴリラ国を名乗る軍団は積年の怒りを込めて矛を人間の街に向けた!


「まずはその街を頂き!帝国滅亡の足掛かりとしてくれよう!」


 今までは、進撃と猛牙ゴリラ軍を魔王軍の参謀達が鎖となって引き留めていた、しかしもう…彼らの暴力を止める者は無い!

 体長3メートルに及ぶ武装したゴリラ達が、雄たけびと共に岩山から飛び出した!


「領民を逃がせ!衛兵!時間を稼ぐのだ!バナナを!バナナを投げろぉお!」


「ぶっ殺す!」


 開けない夜は無いと言う

 止まない雨は無いとも聞く


 終戦を前に、人々は夜明けを信じていた…雨上がりの虹の空を、愛する人と見上げる時を…今か今かと待ち望んでいた…しかし!


「駄目だぁあ!バナナは効かない!?そうだ魚はどうだ?干物があったろ!?」

「猫男爵!ゴリラって魚食べるんですか!?」


 地獄だ…牙ゴリラ達は衛兵を次々と投げ飛ばし…衛兵達は街の城壁に突き刺さった…!

 街の領主たる悪食猫男爵は、土に汚れたバナナを食べながら己の無力を呪うしかなく…!


「こんな時…あの方が居れば…!」




 ドーン!


 遠くで砲声が聞こえた…

「…援軍?」


 そんなはずは無い、時間的にも地理的にも…援軍が来るにはまだ早く、援軍にしては遥か彼方…そんな遠くからでは正確にゴリラを打ち抜く事は叶わない…まさか!?


「味方諸共か…さすが糞人間どもだな…」


 同じ考えに至った牙ゴリラの将軍は、怒りに震えながら空をみた。


 ヒュォオオオ…

 遥か彼方で放たれた砲弾が…大きな弧を描き街を越え……


「空を見ろ!お前たちよけろぉおおお!」


 ドゥゴオオオオオオオ!


 着弾と共に巻き上がる土煙…牙ゴリラ達は驚愕の身体能力で砲弾から逃れた…!

 人間達は哀れにも腰を抜かし、逃げる事叶わず潰れたようだ…違う…見てしまった。


 もうもうと立ち上る土煙…そのゆらめきを睨みながら、牙ゴリラ将軍の背中に冷たいものが流れる…


(理解出来ない…な…なんなんだ…!?)


 着弾の瞬間、将軍は見てしまったのだ…将軍は震える手に力をこめ、武器を握り…己の見た存在が、夢か幻かと信じられなかった…


(そうだ…そんなわけがない!見間違えたのだ!怒りと興奮で…おそらく脳が混乱しただけだ!)


 土煙が晴れ…将軍は心臓を握りつぶされたような心地になった。爆心地から歩き出る人陰!…見間違えではなかったのだ!


「大丈夫ですか猫男爵?どうやら被害は最小のようですね」


 スーツに付いた土ぼこりを払い…首元のネクタイを締めなおしている…そうだ…、空から降ってきたのは砲弾ではない!人だ…スーツ姿の人間が降ってきたのだ!


「あなたが牙ゴリラ国の代表ですか?申し訳ありませねんが…まだ、代表ファンファン殿との話し合いは終わらず、皇帝と魔王の協議も半ば…国と認める事は出来ませんが。」


 男は冷たい眼差しを牙ゴリラに向けた。


「な…なんだてめぇは!…人…なのか!?」


 牙ゴリラは一縷の望みをかけそう問いかけた。目の前の男が人間には思えない…猫男爵と同じく、実は魔族で有りはしないか?それは…都合の良い願いだ!彼らが憎しみの対象、矛を向ける相手が彼ならば…もはや勝機は見当たらない!


「……………。」

 メガーネは何も答えない。ただの無言が、巨大な圧となり押し迫る!

 …しかしそれでも、戦士の誇りにかけ戦いを挑むだろう…挑むしかない!

 馬鹿にされ続けた同胞、ご先祖様の無念を背負う牙ゴリラの戦士達が…、人間に許しをこうなど出来はしない!


「お…お前人間じゃねーな。そ…そんなはずがねぇ!」


 それは悲願であい、懇願であり、そして…確信であった!今、天から舞い降りた男は、人間とは思えない圧力と…神々しさを纏っている。今ならば疑いなく受け入れよう…この岩山、魔王軍最強の殲滅兵器=ゴーレムはこの男、たった一人の男に敗れたのだ!


「…ふぅ、何を言ってるんですか?私は紛れもなく人間ですよ?」


 男は残酷な言葉のナイフを突き付けた。

実際、この時点で戦いは決していたのだが…空気が読めない男が一人、魚を頬張りながら叫びをあげた。


「気を付けて!メガーネさん!牙ゴリラ族の握力は三トンです!」

「ほう…“3”ですか…」

 ファサァ…


 メガーネは上着を脱ぎ棄て、一歩を踏み出した。そして冷たい眼差しをゴリラ達に向け言い放つ…!


「私のIQは…“100”です」

「っな!」


 この時代、人間の平均IQは80であった。

 90で天才…賢帝サエワタールのIQすら98…、“100”三桁など…もはや神の領域ではないか!


「っへ…へへ、驚かせやがって!」

 しかし愚かなり人間共め!IQ勝負なら負けはしない!牙ゴリラ族のIQは平均が90、天才と謳われる優秀な者たちは100を超えるのだ!


「馬鹿が!俺様のIQは“115”だぜ!?」 


 牙ゴリラ族最強の戦士にして、最高の頭脳!将軍は勝利を宣言した!形勢逆転!牙ゴリラの力は!やはり人間に勝ったのだ!


「…“115”そうですか…それでは」


 男は一切歩みを止めず、氷のまなざしのまま歩を進める。その手にはいつのまにかティーカップが握られていた。

 メガーネは歩みをそのままにコーヒーを飲みほした。


「コーヒーを飲み+10 これでIQは“110”」

「っな!?」


 人間共が薬学に優れる事は知っていた!しかし、そんな飲み物があったとは知らなかった…油断ならない!しかし…まだ俺の方が上回っている!!


 シュルリ…

 ネクタイを緩め、シャツを空へと投げるメガーネ、彼は歩みをそのままに言葉をつづけた。


「知っていますか?脱衣によるIQの上昇効果を…+10!」


 

一糸まとわぬ姿になった男が牙ゴリラ将軍の前に並び立つ!

IQはメガーネが120!

対する将軍が115!


「し…しるかぁあああ!ミンチにしてやるぅうううううう!」


 やけくそになった将軍は、怒り狂う赤子のように…涙を浮かべながらメガーネに襲い掛かった!牙ゴリラ族の握力は3トン!その将軍たる彼の握力は…一族最強の10tだった!

 そんな暴力を前に…メガーネは全身の筋肉を盛り上げて立ち向かう!


「私の握力は…なんかスゴイ!!!」




 その日、魔王軍最強の一角、十二魔族が一つ牙ゴリラ軍は壊滅した。こうしてインテリ=メガーネの伝説は…ついに最後の局面を迎える!


 サカナールの街に、メガーネと牙ゴリラの戦いの最中火柱が上がる。

かつて栄華を極めた人間達のIQは、当然100を超えていました、

しかし、パスタ歴3万年

長い歴史の中で文明は生まれて滅び、IQは上がったり下がったりしているのです。


そんな設定。


詳しくは「ロストIQムーンテラス」という短編を上げているので

そっちも覗いて頂けたら幸いです。

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