断罪の剣と器の怪物
バトル回
「キャハハハハハ!腕が落ちたんじゃないのぉおお?堕天使狩りぃいいいい!?」
ギャィイン!
シュビャビビッツバ!
「罪狩り」の天使ウナフェスタと「堕天使狩り」の天使キーリングは空中で激闘を繰り広げていた!
ウナフェスタの振るう巨大な鎌は見た目に反して軽やかで素早い!
天使が頭上に付け、恩恵をうける「天使の輪」を
ウナフェスタは鎌の柄に付けている!
ジェットエンジンの付いた大鎌だ…反応が一瞬遅れれば五体がバラバラにされてしまう!
対するキーリングは両手につけた幾重もの輪で受け切る。
手甲をつけた格闘スタイル…
元々堕天使狩りとして、滅した天使の輪を奪ってきた
ドーナッツ屋をやりながら、従業員から奪った輪も合わせれば…天界にあった「輪」の8割は彼女の元に集まっている。
手だけでない…首、腹、足首は勿論…イヤリング…全身を力の結晶たる輪で固めて
身体能力のステータスを極限にブーストしているのだ。…しかし
「キャハハハハ!未熟!未熟!未熟!」
「っく!」
100年前は拮抗していた力が、そうとう開いていた。
キーリングはグラースと共にドーナッツを研究し続けていたのだ…当然の事!
「ウナフェスタ?あなたは何と戦っているの?「罪」と戦うのが役目でしょう?」
…ソロモンが始めた天使狩りは、キーリングの感覚で言えば罪だ。
同胞を傷つけれて…そう言えないのならば、そいつは心無い人形か馬鹿だ。
ウナフェスタは戦闘狂ではなるが、それも心を手に入れればこそ…
彼女なら解ってもらえるのではと…キーリングが昔の同僚を信じ声をかけた。
「ハァ~?」
目を見開き、眉を八の字によせ、見下し笑う口元
嫌悪と嘲笑の表情
「役目を放棄した天使達のが罪じゃなくって~?」
ッボ!
スパパパパパパン!
(ギャギャギャギャギャギャギャィイン!)
「私はこうあれと造られた、ソロモンはそうあれと造られた…けどあなた達は?」
「やめろ!」
「ドーナッツって何よキャハハハハハ!」
…キーリングは覚悟を決める!こいつは馬鹿だ!そして…こいつは罪を犯した!
フォ…ォン
「爆裂する波動!大気を満たし!地を巡る力!…集えよ!」
…天使の輪とは、力の器…世界から魔力を吸収し、天使に恩恵を与えるアイテム!
「生命の炎、死の氷雨、心の激流…時の胎動!形を変え…純然たる力となれ!」
ギュゥオオオオオン
キーリングを中心に空間がゆがむ…器はあくまで力を集める道具だ…
これほどの力を扱って…五体が無事とはならないだろう…しかし…
「我が肉体!神の剣!粛清の刃!宿れ…宿れ!我に宿り我を振るえ!神敵を貫け!」
バチバチバチバチッ!
「…すごい力ね、ふふキーリング、さすが私の妹」
「…姉さん…あなたの罪は…」
“ドーナッツを馬鹿にした事だ!”
カッ!【ギルティアス=ブレイド!!】
走馬灯が見える、停止した世界
キーリングの全身を雷が駆け抜け、ズタズタに引き裂きながら腕に集まる…
腕の先を爆ぜさせながら…力の刃が解き放たれた!
世界を貫くほどの長さの断罪の剣…ギルティアスブレイドは…罪人「ウナフェスタ」の体を貫き…
「ありがとう…美味しくいただくわ」
時空が歪み、停止した世界、極限の苦痛の中
キーリングの耳にその声が届いた。
ジュォオオオオ…
永遠に感じた一瞬が終わると…
キーリングは全身から血を流し…腕と翼が捥がれたような姿で空に浮いていた。
片目は失明し…
もう片方も「色」が解らない。
「ア…ガハ…アッ」
声を出したくても、舌も喉も焼かれ湯気が出ている。
「何を言ってるかわからないわよ?キャハハハハ」
目の前には無傷のウナフェスタが腹を抱えて笑っていた。
背中に背負うように巨大な大輪…しかも輪の内側にもう一つ…その内側にもう一つ…
ピリピリ…
まるで光の甲羅を背負っているようだ。
「私はソロモン様に頼んで改造をしていただいたのよ…私は天使の輪そのもの…力の器そのものなのよ」
ガクン…
意識があったのはそこまでだ。
暗い暗い闇を落ちていく感覚…
夢の中で姉さんが居た…
人形のような姉さん
むかしの私と同じ顔だ…
私はドーナッツに感動して、笑えるようになった…
あぁ…ねぇさんにも…
(食べて欲しかったな…)
闇の中…
姉さんは身体をバキバキと変化させ
天使の輪の代わりに「皿」を頭に乗せた醜い怪物になっていく
白い肌は青く腐り…緑になって
背中に背負った光のの輪は鈍く、古臭い甲羅になって…
(姉さん…目を…目を覚まして…)
キーリング…
キーリング…
「キーリング目を覚まして、あなただけでも地上から逃げて」
愛しているわ
私の妹
……深い闇の中落ちていく、落ちていく…
……
…………
………………
キーリングが目を覚ますと
眼前に世界が広がっていた。
懐かしい景色だ
天界からの景色だ。
「…こ…ここは?」
「ここはバベルの頂上だよ…キーリング君」
顔を上げると
薄汚れた老人が立っていた。
王冠を被り
マントを羽織り
杖を持つ老人
それらすべてに魔力を秘めた
眼光の鋭い白髪の老人
「お…まえ…は?」
「私の名はソロモン、さっそくだが天使の輪を頂こうか…君の」
そういうとソロモンは床に転がった、怪物を蹴飛ばした。
夢の中で見た…あの怪物だ。
「…姉さんの命と引き換えだ」
100本投稿達成 19日間
これからちょっと戻って修正タイム入ります