ガブリエスとガブリエム
「ここが地上か…むむぅ…魔力に満ちているな」
「きっと第二のグレゴリから天使と悪魔が一気にきているからねぇ」
天界で地上を見守り続けていた四大天使長
ガブリエスとガブリエムは地上に来ていた。
ガブリエスは神々しい翼の生えたライオン
ガブリエムは神々しい翼の生えた魚型の天使だ。
大天使たる二人がお供と連れずに地上に降りるのは
天地創造から初めての異例である。
ガブリエスは厄災を
ガブリエムは悪を喰らうという大きな役目だったので今まで出番がなかったともいう
細かい事件は下級の天使で事たりるので、二人は天上で
ガブリエルやラファエルと共にボケーっとすごしていた。
手を叩けばメイド天使がお茶とオヤツを出してくれる怠惰な日々。
…しかし、最近は手を叩けど誰も出てこない。
ポツーン
というかまともな天使はもう二人しか残っていなかった。。
二人は上位の天使で、地上からも離れていたため「グレゴリ」の影響はない
「心が無い」といってもさすがの異常事態た
またトマト山から悪魔達が出てきたのも観測したのでとりあえず降りてきた。
そんな所だ。
ファー
ファー
ファー
光の柱と共に降りてみたがファンファーレも出迎えも無かった。
むかーし、ノアの大洪水事件の時は凄い人数でパレードしながら降りたので
あの時と比べるとなんともいえない。
ファー
ファー
ファー
心があったら折れていたし、涙があったら流れていたが、幸いにも二人には心が無かった。
「あれ?お飾り天使長のガブリエス様じゃない?」
「うっそ、天上の飾り物ガブリエム様もいるわ!」
地上に近づくと、麦畑で働く天使たちが流石に気付いた
心が無くてよかった。
「わーーー!無能の代名詞ガブリエス様よ!」
「どうなってるの?役立たずのガブリエム様が地上にくるなんて!」
……
…………
………………ザワザワ
だんだんと、出迎えの天使達が集まってくる。
つい先ほどまで、待ち望んだ状況ではあるのだが…なんだろう。
「凄いな…ガブリエムよ。グレゴリの魔力が…まだ大気にあるようだ」
「あぁガブリエスよ…わかるぞ…一息毎に…忌々しい魔法が干渉してくる」
…そう、忌々しい…「感情」…これが…感情なのか…
カチリと胸の奥で音がして…ギィイとゆっくり扉が開く。
これがグレゴリの魔法。…封印された心の扉を開く魔法だ。
わー
わー
わー
「…なぁ…うぅ…ガブリエムよ……やっぱり…な、帰らないか…うぅ」
「ば…ばかをいうなガブリエス!ぐぅ…て…天使長の我々がたじろぐなどな…うぅ」
わー
わー
わー
地上が近づけば近づくほど…心無い言葉が耳に入ってくる…
地上が近づけば近づくほど…「グレゴリ」の魔力が心を開く…
「ねぇ…冷静に考えてあの姿どうなの?ライオンと魚って…ねぇ?」
「まぁ…とういうか名前からして適当に作った感じよね、」
「神様も、手抜きってするのね」
…ポキリ
「ああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!」
地上に付いた時
二人の天使長の心の扉は完全に開かれ…そしてぽっきりと折れていた。
光の柱により地上に下り、足が付いたと同時に蹲るライオンと
尾びれが付いたと同時にそのまま横たわり、パクパクする魚
「どうしたんですか?私たちが大変な時に空で寝ていたお二人が?」
「どの面さげてきたんですか?今更何しにきたんですか?」
天地創造から今に至るまで、働いたのはノアの時の一回だけだった。
あの時も基本は下級天使が過労死ラインを超えるほど働き続け
二人はただただ出番までボケーっと地上を見ていた。
「ちょっと邪魔なんですけど?畑ですからねここ…」
「んもう、じゃまですねぇ…帰ってくれません?
天井に入りついて世界の終わりまでホコリ被ってて下さいよ」
「ださなくないもん!翼あるライオンってかっこいいもん!」
「ごめんなさい…だれか…捌いてください…お寿司のネタにでもしてください…」
パラカ
パカラ
天使の一人が刺身包丁を取りに村の家に向かうと
見慣れない一団が麦畑に向かってきていた。
髑髏の旗にハートを加えた“不死なる愛”の紋章…あの紋章は!
「アンデット軍団の方々ですか?ソロモン王国から?」
「コンニチワ ハイ ソロモンコク カラ キマシタ」
これは刺身包丁と醤油とワサビなんて用意している場合じゃない!
パシリ天使は慌てて、仲間に伝えに戻った。
下手したら街のドーナッツショップから社長
元=天使狩りキーリングさんに連絡してもらわないとまずいかもしれない!
アンデットはすべからず世界の王、ソロモンの支配下にあるのだ。
悪魔さえ従えるソロモン王の軍勢に…下級天使では戦えずはずもない!
身構える天使達
「まずいわ…輪をなくした私達では分が悪い!」
「フンなにさ…私達は毎日の農作業で鍛えた肉体がある!」
ソロモンは脅威であるが、目の前は文字通りのヒョロガリである。
魔力をすて、逆に肉体を鍛え続けた今の天使達ならばワンチャン勝てる。
「イヤ…チガウ…マッテ」
脳筋気味な天使の反応にスケルトンの代表は慌てて、骨馬から下りて紙袋を天使達に配った。
彼の目的は戦闘ではない、ただ大天使を回収に来ただけなのだ!
今天使達と争うのは駄目だとソロモン王からも言われている。
「ツマラナイモノデスガ」
「…っこ…これは!」
「ソロモンの黄金!…今…巷で流行りのスイーツ!…“プリン”!」
それは黄金の甘さとまろやかさをもった。
スイーツ界の革命であった、これを開発したことにより天使達の中での
ソロモン好感度はかなり改善されていた。
「ダイテンシサマ オフタリニ ソロモンサマ オアイシタイト」
さっそく食べて下さいといわんばかりに小さなスプーンを配り出すスケルトン。
これには天使達もにっこりである。
「えぇいいわよ。ありがとう骨君、君よくみたらキューティーね」
「そうね、やっぱり筋肉より…スレンダーがいいかもしれないわ」
…天使はことごとくちょろかった。
「ハハハおい君、大天使様といったかね?うんいいだろう」
「そうだなアハハ、ソロモンという男はなかなか礼儀がわかっているようだ」
…大天使もチョロかった。
「デワ ミナサン アリガトウ!」
「また来ても良いんだからね!」
♪
ドナドナドーナー
ドーナー
「なかなか良い音楽だなガブリエム」
「そうだなガブリエス、ソロモン殿に会うのが楽しみだ」
ドナドナドーナー
ドーナー
彼らはソロモンに会う事はなかった。
彼らはそのままトマト山から地獄に送られたのだ。
この時、ソロモンの巨大塔建設はすでに終わり
ソロモンは遂に“第二の月の建造”に着手していた。




