アルマゲ丼と暗黒堕天軍
「ぐぅうう…この悪魔があああ!」
「いえお客様、私共は天使です…そしてお客様は神様です」
「頭が痛い!」
ソロモン王暗殺計画を実行するため、俺たち悪魔族は近くの町で情報収集をすることにした。
しかし…まずは腹ごしらえだ!
「うぅ~…地獄は米騒動が起きてるぐらいなのに、こっちは食べ物がいっぱいだ」
町に行くまでの間にも、一面の小麦畑が広がっていた。
国の農民達が笑顔で仕事をしている。
気になったのはちょいちょい天使達が飛び回っていている事
そして天使の輪が無い事だ。
「もしかして…天使もソロモンって奴に使役されてるのかな?」
「えぇ…王とか召喚するレベルですからねぇ…勝てるのかな?」
動揺する俺たち…
そんな中、入った街の入った店でのやりとりが、冒頭の台詞だ。
地獄の通貨が使えなくて、ドーナッツとかいうパンが買えなかった。
…泣きながら露頭に迷う俺たち
お腹もすくし、国の保護も受けれない。
うぅ…
そもそも地獄から来たわけで、国民じゃないし
かといって騒動を起こせばソロモン王に気付かれる…
「兄さん一回帰ろうよ…タイタンおじさん達かえっちゃったよ」
「でも…早く結婚したいし」
「いや兄さん、僕も帰りたくなってきたよ」
「ねぇ二人とも?私が天使を石化させるからそのうちに…フフフ」
「「落ち着いてメデューサさん!」」
…もう限界だった!
空腹でおかしくなったメデューサさんを宥めていると、コミカルな音が聞こえてきた!
♪
どんどん どどん アールマゲ丼
どんどこ どどん あーるまげ丼
腹が減っては戦は出来ぬ
武士は食わねど高楊枝無理
どんどん どどん アールマゲ丼
あ~ あ~ 何か食べたいな~
ガッツリと おー中にたまる物
あ~ あ~ 何か食べたいな~
ドーナッツじゃ足りな~い
あ~ あ~ 何か食べたいな~
どんどん どどん アールマゲ丼
どんどこ どどん あーるまげ丼
兵!兵!兵!兵!
天地創造からの天地衝突
天魔誕生からの最終戦争
勝つも負けるも無い世界崩壊
だけど手は抜けない我ら戦士
兵!兵!兵!兵!
存在意義かけた世界消失
君は何を残すラグナロク(最後の日)に
力いっぱい、ための一杯
お腹いっぱいで派手に行こう!
あ~ あ~ 何か食べたいな~
ガッツリと おー中にたまる物
あ~ あ~ 何か食べたいな~
ドーナッツじゃ足りな~い
あ~ あ~ 何か食べたいな~
どんどん どどん アールマゲ丼
どんどこ どどん あーるまげ丼
作詞 グラース(ラップ担当)
作曲 メルシア(コーラス担当)
「なんか来たぁああああああああああああああああ!?」
「兄さんあれ誰?悪魔?何あれ?眼鏡黒!」
「うひゃひゃー良い匂いがする!」
…ピタ
歌いながらやってきた天使と悪魔の屋台は
三人の前でとまった。
…スゥ…
「どうぞ」(ニコォ
「っえ?でも」
「おいしい!おいしひ!」
お金が無いという事を言っても
屋台の天使さんは微笑みを絶やさずアルマゲ丼をくれた。
おいしかった。
メデューサは泣きながら三杯は食べた。
…彼女の実家はダンジョンの奥で、ネズミとかを食べてたぐらいなので
本当に感激しているようだ。
「あなた達はもしや…トマト山から来た悪魔さん達ですか?」
「え…いや…」
「フフフ、隠し事は無駄ですよ…私の目は全てを見通す!」
店主らしいグランの男が壁のシミに話しかけている。
「まさか…あなた方もソロモン王の支配下に!っく
…まさか私たちも支配しようというのね!私を支配したくば!
一日5食のアルマゲ丼を要求するわ!」
ソロモンの部下だと大分やばいと思ったが、可能性は高いだろう
それしてもだが…メデューサは既に堕ちている。ちょろい
「…ま…まぁ、ぼくも…メルシアさんの下で働けるならありかなって」
弟も堕ちた。
駄目だ…ここは俺がしっかりしないと!
「俺たち悪魔を見くびらないで貰いたいな!ソロモン王にいっておけ!こんな事で俺たちは屈しない!」
二人の冷たい視線を背中に感じながら、俺はドンブリを返しながら言った。
このアルマゲ丼というのは本当に美味だ。
天使軍を象徴する黄色い卵と、悪魔軍を象徴するケチャップの赤
人間が大地を耕し育てた米を、悪魔の赤が覆い、うま味を引き立て…それを天使の黄色が
なんともまろやかに包み込む…凄まじい…こんな料理があったとはな。
「やれやれ…何か勘違いしているようですね」
ゴミ箱を俺たちと勘違いしながら店主が言う。
「私たちはソロモンとは関係の無い…ただの暗黒堕天軍」
「暗黒堕天軍!?」
「そう…私たちはただあなた達を堕落させに来たのですよ、彼女のアルマゲ丼と私の歌で」
…何を言ってるか、判らなかった。
特にだ、あの歌そんなに重要だったんだ。
「堕落とはどういう事だ?俺たちは悪魔、天使からみたら、最初から堕落してる存在だろ?」
…俺は、直感で分かっていた。いや…すでに堕落していたのかもしれない。
メデューサがアルマゲ丼に敗れ
弟が看板娘に敗れたように
俺はこの男から目が離せなった。
「堕落とは…役割の放棄…神の定めからの脱却…そして“自由”を掴む事です」
「……っな!?」
神が世界を造り
箱庭として地上を作った
役者として人を
人を回す装置として悪魔を
舞台のまとめ役として天使をおいた
…それがこの世界の成り立ちであり
それぞれの存在意義なのだ。
「な…何を言ってるんだ…自分の存在の…神の…いや…世界の否定だと!?」
「あなたも…踊ってみたくは無いのですか?人間達のように…」
ジャラララーン
男は屋台に備え付けていたギターを抱え引き始めた。
「……!!」
「自由に…歌い、踊り、笑い、泣き…舞台に上がってみたくはないのですか?」
ジャラララーン
…そうだ、いやだった。
毎日毎日…神様の作った世界のため、役割のため…
王様や偉い人達があつまって、大きな事業を計画して
無茶なスケジュール
無茶な予算
少なすぎる人員
苦労するのは…擦り切れていくのは…いつも末端の俺たちだった。
日付が変わるまで働いても、生活は変わらない
今日はご馳走だとネズミを頬張る彼女を…俺は幸せに出来るのだろうか?
俺は…何のために働き…擦り切れて…俺は…俺たちは
「俺は…会社の……歯車じゃない!」
ジャラララーン
「俺達は…社会の……歯車じゃない!」
ジャラララーン
「俺たちは!!」
「「世界の歯車じゃない!!」」
……ポロリ
「あなた方も共に歩みませんか…この道を!」
俺は…眼鏡と翼を黒く塗った、壁のシミに話しかける男の手を取った。
彼は狂っているのだろう
きっと俺も狂っている…ちがうな…きっと世界が狂っている。
ジャラララーン
「歓迎しますよ、暗黒堕天軍にようこそ!」




