マネージャーメガーネ
蛇足の外伝 終戦のその後
「大変ですラグナ様!ブッキングです!」
ファンファンは勢いよくドアを開け、休憩室にへたりこむラグナに叫んだ!
元・魔王 有角有翼の美少女“アイドル”ラグナ
~愛と平和とラブ&ピース~ in theドーナッツ宮殿
全身全霊の3日3晩に及ぶ酒池肉林の苛烈なステージの直後気を失う寸前であったラグナであったが、マネージャーである親友のファンファンの知らせを聞いて即座にプロの目つきになり…緩んだ心のハチマキを締めなおした。
「…どうゆう事?えーっと日程の調整はファンファンとメガーネ様にお願いしているはずよね?」
この二人がミスをするなんて想像が出来ない!
二人とも眼鏡をかけているし古代の呪文「九九」を容易く詠唱出来るほどの記憶力!
ラグナが1000年掛かっても解けなかったパズルを10分で解いたファンファンと1秒で解いたメガーネ様!
(…今も目を閉じれば思い出す、1秒でパズルを破壊し、空に投げたメガーネ様のお姿を!)
“コロンブスの卵ですよ”
何を言っているか解らなかったが衝撃だった!
あぁ…彼はやはり、人間の範疇に無く、常に天からの視点で世界を生きる帝国最高の英知にして、人類最高の英雄…いいえ…そんな言葉では足りない!
彼は天地で最高の存在!地上に舞い降りた ラヴァイエ!<智天使>!!
キラキラと舞い落ちる、砕けたパズルと“コロンブスの卵”を表現したメガーネ様のしなやかなヨガのポーズ!
「コホン」
…ッハ!危なかった、瞳の裏のメガーネ様に見とれていた!ファンファンが居なければ永遠に石になる所だったわ!
瞳を閉じて、彼を思い、瞳を開くと彼が居た
「ブウワッハ!メメメメメ…フェガーウェ様!」(裏声
お茶を飲まないでいてよかった
「今回のライブも美しかったですよ…メルシ…いいぇ、“ラグナ”様!」
慈愛に満ちた瞳が私を映す…私の見開かれた瞳にも彼が映る。
彼の瞳の中の私の中の瞳の中の瞳の中の中の中の中のののの…息を整え、心音を8ビート以下に抑えてようやく口が動いた!
ハァ…ハァ
彼の前では…油断をすると心臓が破裂しそうだ!
ハァ…ハァ…あれ?
どうして彼はここに居るのかしら?
「…素敵なライブでした」
「………!!」
魔王国で苛酷なマネージャ業をしてくれているのハズの彼が!仕事を放り出してまで…私のライブに来てくれていた!
「うぅ…」
ササッとハンカチを差し出すファンファンさすが親友、出来る女!
ラグナの心は歓喜に震え、縛ったはずの心のハチマキがスルリと緩む…!
でも駄目!今は大変な時なの!もう一度呼吸を整て…淑女の優雅さと落ち着きで聞くのよ!
「い…いつから居らしていたのですか?」(裏声
ドキドキ…落ち着いて私のドラムス(心音)…
「フフフ」
あぁ…微笑が素敵!ドラムを押さていたのにドラが鳴る!あぁ!止めなさい!
トランペット隊!静まって!…っく!ファンファーレを止めるとドラムスが再び!
「あなたが魔界を立ったその日からです…気づきませんでしたか?抱き枕と入れ替わっておきました」
…
……
…………
ライブを終え,ドーナッツ宮殿から帰りかけたファン達は宮殿の奥から響き渡った、壮絶な“シャウト”に沸き上がった!!
あぁ!ラグナ様!なんという強靭な喉!
「あぁ!ラグナ様!…三日間の苛酷なライブを超えてなお!まだその炎は燃え滾っているのですね!」
◇ ◆ ◇ ◆
何をした?私…メガーネ様等身大抱き枕に何をした!?
お…落ち着いて…一人ウェディングごっこを嗜んだだ…け…やぁあああああああああああああ!!
あ…新婚生活をイメージした一人おままごともしてしまままままm
「あばばばあああわっわわわわわわ!」(二回目
「夜遅くまで舞台の練習…そして、来年発表の新曲ですかね?美しい愛の詩…このメガーネ改めて魂を打ち抜かれました」
「ぐぶぅうぇべええええええええええええええええええ!」(吐血
…ハァハァ…
落ち着くのよラグナ!そう…落ち着いて、目の前の問題を考えるの!一つずつ!…一つずつよ!目玉を戻すの、うん、視神経がヤバい!
てんやわんやのラグナとメガーネ
二人の伝説を前に、ファンファンは「コホン」と何度目かの咳払いをし、いい加減進まない話を進めた。
「ラグナ様落ち着いて下さい!それとメガーネ様…その…魔王国のイベントスケジュールの方は?」
「あわてるラグナ様も素敵だ…えーっと、そうですね。河童大臣に任せてありますが?」
ファンファンは胸元からスケジュール帳を取り出しメガーネに見せた。
説明するために二人で覗き込む形になり、腕を絡めるのは仕方がない事だった。
「……これはこれは」
「えぇ…これは大変な数です」
ブッキングの数がおかしな事になっている。1つ2つではない…前代未聞の…
「「………108か所!!」」(ドドン
二人は同時にメガネに指をあて、憂いを込めた目で遠くを見た。
ここで特筆すべきは完璧にメガーネの動作をトレースし、特に目が悪いわけではないのにおそろの眼鏡を駆けだしたファンファンの技量であろう。
ラグナの臣下でありながらメガーネに恋をしてしまったファンファン…二人の前世からの愛を聞き、三日三晩泣きはらした彼女は今でもアイドルラグナのファンであり、メガーネ教の信者どこまでも苛烈な、世界一の二人の「ファン」だ。
「……これは私のミスでもあります、ラグナ様の美しさを広めるために365日連続ライブの計画も練ってしまった。魔王国の事務所に溢れた計画段階の企画書の山…河童大臣は解らず幾つかを通してしまったんですね」
「なるほど…しかし、やはり河童ですか。ッぺ、」
※ファンファンは河童には恨みがあった
108か所!
これは難問だ、通常の人間の脳では解決法など解らない!時間をずらす? 開催場所を近づける?幾つかを併合し…違う!
ファンファンは知的な女性であった。魔王国と帝国両国の戦争、その終戦時は魔王国の代表として「終戦協定」「平和条約」これを作り上げた平和の偉人だ。
その彼女の頭でも、この問題はどうしようもない…解決策の無い問題に思える…しかし!しかし彼なら?
「……なるほど」
……彼は慈愛に満ちた瞳で、正気から戻らないラグナを見つめそして万物の問題は私が救おう!そういう聖者のような瞳でファンファンを見る。
解っていた、取るに足らない、私が頭を悩ますよりも
彼の言葉に従えばいいのだ、彼は人でありながら神の視点を持つ英雄。
「謝りましょう!」
「はい!」
メガーネはそういうとドーナッツ宮殿の屋上へ上り、北の空を…“魔王国”のある方を見やる。
「彼女の事は、頼みましたよ?」
そう言うとメガーネは空へと飛んだ。
彼の脚力に耐え切れず、宮殿の一部が崩壊したのは些細な事だ。
「…まったく、どこまでも規格外なお方ですわ」
…でも、そんなあなたが好き。
ファンファンは恋心をそっと胸の奥にしまい、敬愛する主を落ち着けにいった。
「ラグナ様…落ち着いて…どういう事なんです?抱き枕?あるんですか?あるんですね?…どこで手に入れたんです?」
さて…もちろん我らのメガーネがただただゴメンで済ますわけがなかった!
幾つかの魔界側のスケジュールを“夜”にずらし幾つかの帝国側の酒池肉林3日ライブをわずかに減らし、中立地区サカナールでの公演に幾つかのイベントを併合した。
お詫びを兼ねた365日連続ライブの開催の約束もとりつけて…そして、ラグナのライブの“穴”を埋めるように
決定された。13ラグナ像<改>のダンスイベント&最近生まれたメガーネ像のダンスイベント!
それでも足りない部分には密やかに誕生、最近その数を増やして来た猫耳クーデレ平和の聖女=ファンファンのアイドルデビューの決定!
ファンファンによるラグナの物まね一発芸から派生した
物まねコンテストの開催、アイドル発信でなくファン発信のイベントは、革命であった。
ラグナ様を称えるファンソングの披露会やラグナ様を描いたファンアートの展示会…世界中に確保された108か所の会場は瞬く間に埋まっていく。
……しかし、最後8か所が、どうしてもうまらない。
「せっかくとった会場のオーナーを、悲しませるわけにはいきません」
メガーネもマイクをもってゴスペルを披露した。
…かくして!メガーネとファンファンの活躍によって
世界にラグナの愛の歌が届いたのだ!
「聞いて下さい…新曲!“恋する瞳は合わせ鏡”!」
ラグナはラグナで今回の一件の最中、また新たな神曲を作っていた!
ちょっとこの二人が同時に出ると
胃もたれする(白目




