悪食=猫男爵の成り上がり 中3 ~サカナール大革命~
バナナを投げていた彼がここまでの過去を背負っていたとは
一体だれが気づけたろうか
うん…私も解らなかったよ
新兵であるという立場でありながら俺は上官に、恩義ある帝国軍の将軍に特別待遇の歎願…それに重ね、門の守備に関しての意見を出した。
軍への入隊が決まった時から考えていた事で守備兵の先輩方に相談はしていた。
今も俺の後ろには、同期のホレボーレや相談に乗ってくれた先輩方が付いてきてくれた。
兜を小脇に抱えた厳つい兵隊達が30人…将軍の執務室にギチギチと…うん、多い。
更に廊下には噂を聞きつけた兵舎の女将さんとご近所の奥様連合軍15人…その旦那さん方と、旦那さんの仕事仲間や、飲み仲間58人も建屋に入り切らず外の門まで列になっていた。
「皆さんありがとうございます!僕は一人でも大丈夫ですから!どうかお仕事にお戻りください!」
本当に胸が熱くなるが、いささか街が心配である。
「何を言ってやがる!あんな話聞かされてよ!誰が黙ってられるってんだ!」
「そうだぜ!俺たちは仲間をよぉ!困ってる友達をほって仕事出来るほど器用じゃねぇ!」
同じ釜の飯を食い、命を預け合う兵隊の団結は熱い!
その熱に乗り、一般の方々も声を上げた。
「俺たち町民はお前の味方だ!だけどお偉いさんは信用できねぇ!」
「お前が“魔族”って事で門前払いされねぇようにみんなで背中を押してやんのさ!」
「みんなありがとう!…さぁ、ネコオさん、行きましょう!」
何故かホレボーレが返事を返し合計103人の…あっ5人加わって108人の…っえ?まだ加わるの…も…もうカウントはしないよ!…は将軍に「手紙」を書かせそのまま次、“さらなる上”を目指し歩き出した。
途中市場を通れば人が加わり、住宅街を通れば人が加わり、農地を通れば人と牛達が列に加わり大行列が丘へと続く、目指すは丘の上から街を見下ろす石の古城。
サカナールの街の兵隊は勿論、魔界との壁を守るため王都から派遣された守備兵たちは、みなサカナール伯爵の元に籍を置く。
街の防衛にかかわる大事を決めるのは伯爵らゆえにネコオの歎願は、最終的に伯爵へ届いた城に呼ばれていたのだ。
なんか将軍の手紙とパレードを手に入れたが元々の予定である。
「よ…よく来たなネコオよ、王都でみた大魔法…実に見事であった。ふぅーッ…ふぅーッ…お…おぬしが我が町の防衛に加わる事は喜ばしい限りだだだ。」
伯爵は噴き出す汗をそのままに、平静を装って厳かにいった。
多い、多い、多い…何このギャラリー、兵は止めなかったの?えっ兵もあっち側なの?えぇ?何なの?
「お前の3つの歎願だが…、ぜ…全部は無理じゃ」
ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
城を揺るがす大ブーイング、やべぇ、革命起きるコレ!
「落ち着け!仮面の着用は許可する!」
「当然です!仮面兵装のネコオ様のカッコよさ!ミステリアスさ!当然です!」
伯爵の発言に、ネコオの同期、女新兵のホレボーレが答える。
…うん、なんで俺の隣にいるんだろう。なんで腕を絡めるんだろう。
「ありがとうございます伯爵!…そうですか…わかりま…ギャフゥッ!」
ペシィイイン!
慈悲深い伯爵様のお心遣い、身分も弁えない俺の歎願を一つでも聞き届けてくださったお心に感謝し俺は頭を下げようとしたが…顎を突き抜ける衝撃に叶わなかった!
「そんなネコオ様は見たくない!」
ペシィイイン!
えぇええ!?どうしたのホレボーレ?誰か止めて…!あれぇ?みんなホレボーレと同じ目をしているぅう?
的確に顎を捉え、脳を揺らすホレボーレのビンタに頭が混乱する。頬を狙わず顎を狙うなど…流石戦場に生きる女性!効果は抜群だアバババ
「ネコオ様!ネコオ様のそういった素直で謙虚な所も誠実でグッドですけれど…今は違います!情けないです!退いてはいけません!妹さんの事を…ご自身の家族の事を犠牲にしないで!」
…!!涙が流れた。
それは俺ではなく、俺を叩いたホレボーレの瞳からだ。
「帝国人として嬉しいですよ…ネコオさんはそれほどこの国を愛してくれている!…でも!ここで引き下がったら…ネコオさんは幸せになれません!」
「ゴホンッ!あ…あのな娘?街の防衛と言う物はな?」
ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
「……ありがとうホレボーレ…みんな、目が覚めたよ…!」
俺は改めて伯爵に向かい頭を下げた。立礼ではなく地に頭をこすり付けた。
今から行うのは恩義ある帝国の、決して理にはならない願いだ。しかし…
ネコオは息を吸い意を決して言葉を発した。
「まず一つ、ありがとう御座います!伯爵様!…この身に余る過ぎたる歎願!一つ受け入れて下さった器の大きさ!感謝しております!…誠に感謝しておりますが…ご覧のように、私は人ではなく…、魔界生き別れた家族もおります…どうか!」
「ぐぬぅうん」
「お願いします!」
ホレボーレが横で頭を下げる
「お願いします!」「お願いします!」「お願いします!」
後ろからも無数の声がする、ネコオの胸に熱い物がこみ上がり…それは瞳から流れ頬を伝った。
「ぐぬぅぅうううううん!!」
ネコオの願いは3つであった。
1つは「兵装時の仮面の着用」猫魔族が人間の街を守るなど…魔界に知れれば更に厳しく、魔界の猫魔族の居場所がなくなる。
麻袋を被るや、ツボを被る案も出したがホレボーレが仮面を推奨した。そしてそれは許可が下りた。
本来なら、これもなかなか厳しかったはずだ。
仮面の魔族など置いておけば、裏切りやスパイの悪行も出来ように…許可が下りたという事は、伯爵もネコオは裏切りなどしないのだとそう信じてくれた証である。
あとの二点も理由は同じく猫魔族のための我儘にすぎない。
2つ目は「魔法の不使用」これは同期達に魔法を教える際に気が付いたのだが
人間に魔法の適性は皆無だ、魔法使いと呼ばれる職表の者や神官さえ高価な道具と入念な儀式が無ければ魔法は使えない。
ネコオが指先一つで飛ばす水の刃も長々とした詠唱と、杖、それに生贄の血を消費してで…しかも2発が限界だった。
ネコオの本気の魔法の使用は、即魔族だとバレてしまうのだ。
「わかった!認める!…だがしかし、心得よ!おぬしはもう帝国の民!我らが同胞!…お前の為に頭を垂れるその者たちを決して裏切る事はするな!」
1時間の議論の末、これも通った。
途中伯爵は二回トイレに籠って、威厳を保ちつつ譲歩する方法を考えた。
そして3つめ「猫魔族の不殺」……これは無理だろう!虫が良すぎるだろう!うぅ…取り下げるべきか…
ポンッ
肩に置かれたホレボーレの手が暖かい…
「大丈夫ですよネコオ様…」
「…そうかなぁ…でも……」
メキッ
「大丈夫ですよ…ネコオ様…」
交渉は三日に及んだ。冷静に冷徹にありとあらゆるシュチエーションと問題を上げる伯爵と、それを叩き潰す頭脳筋な友情パワーの攻防だった。
伯爵は悟った、頭で心は動かせない…と!
「ハハハハハハ!…ネコオヨ…!ヨキニハカラーエ!」
衰弱し、虚ろな目をした伯爵を人形のように黒子が操り、ホレボーレが舞台袖から裏声を出している。
革命は成功した。
兜を空に投げ!喝采する軍隊!
街の商店街の皆様が持ち寄ったお酒と食事でその日のお城は祝賀会だ!
そして仕立て屋から届いた紋章入りのマントと仮面は、黒をベースに青いラインと模様の刺繍…仮面の目の周りのラインには小さな石が散りばめられた拘りよう。
その新しい兵装に身を包むとホレボーレが嬉しそうに飛び跳ねた。
何故かホレボーレも仕立て屋から“付け耳”を受け取りさっそく装着して見せに来た、うん…普通に可愛。
伯爵は祝賀会の片隅で酒におぼれていた。
マントとか宝石は床に脱ぎ散らかして、フンドシ一枚で笑っている。
革命ってすごい。民衆って怖い。
そして今、ネコオはサカナールの門の上マントをなびかせ夕日を睨む。
「ハァ…高い所にいるネコオ様って素敵!」
ネコオは見張りだった。
これなら一早く、敵か味方か猫魔族か…その判断も出来様物だ。
ちなみに…鋭い瞳で敵影を見つけ出しとネコオは下の兵隊達に情報を渡す。
ネコオの視力は8.0だったので他の隊員の時よりはるかに遠くで敵影に気が付き、対応する兵士達には余裕が生まれる、ネコオの見張りは下の兵隊達からも評判が良かった。
「ハァ…鋭い瞳のネコオ様って素敵!」
情報を渡しつつ、上官に革新的な進言をするネコオその的確さと判断の速さが目に止まり…ある日
「もうお前直接指示だしてくれよ!楽でいいぜ!」
ネコオは隊長に昇格した。
時折来る投石や、魔法の攻撃などを可憐に避け、叩き、打ち返しながらネコオは的確な指示をだしたし、普通に闘いにも参加した。
魔法は使わないながらも、普通に剣も弓も一流だ。
「ハァ…もうなんか…ネコオ様って素敵!」
「うん…ありがとうホレボーレ…うん、仕事して…ね?うん…ね?危ないからね?ここ高いからね?」
サカナールの街の日が暮れる。
…吸血鬼アネミーア16世、そして眷属となった河童と牙ゴリラの大群が押し寄せるのはこれよりもう少し先の事だ。
「あ…あとお願いだ!様は付けないで欲しい!皆にも頼んでくれ!本当に!」
「ウフフフフ…」
謙虚なネコオ様って 素敵!
ホレボーレはちゃっかりネコオの補佐官になっていた。
ホレボーレってなんだよ!
好きだよ!
脳内でイメージは黒髪ロングの清楚と見せかけて押しが強いお嬢様
東洋美人系
ネコオは青髪くせっけのスラっとした猫耳生えたイケメン
ストーリー描写に四苦八苦しすぎて
キャラの描写が出来てない
あばー
今後の課題やなぁ…