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インテリ・メガーネ~神の肉体を持つ叡智の化身~   作者: 前歯隼三
最終章 始まりの天使と終わりの悪魔
12/42

魔王ラグナとインテリ=メガーネ

最終回特別OP

「恋する鼓動は1万ビート」


空の大きさってどう言えばいいかな?

地獄のマグマは何度ぐらいかな?

恋する私のこの気持ちだって

同じぐらいに凄いんだから!


恋は太陽!照らすの世界が変わる

貴方は太陽!近づけば張り裂ける胸!

今、あなたを思って鼓動は1マンビート


作詞ラグナ

 事件を知り、さすがのラグナもマイクを捨て空へと駆け出した。

 目指すはサカナールの街、反乱した牙ゴリラ軍の制圧だ。

 国のトップとしての責務もあったが、何よりも気がかりな事があった


「サカナールの街の猫男爵って、もしかしたらお兄ちゃんかもしれないんです」


 いつかのファンファンとの会話だ、猫ホストと牙ゴリラ族の猫男爵を狙ったテロ計画と共に浮かび上がった疑惑…というより確信であった。

 猫男爵は元奴隷であり、10年前にサカナールに侵入して子供の時に帝国に囚われた猫魔族だ…そしてその経歴、年齢、容姿の特徴…全てはファンファンの生き別れの兄と符合する。

 ファンファンの兄は、河童族の襲撃から村を守る為囮となって森に駆け出し…それっきりだ、彼が河童から逃れるためサカナールに逃げ込んでいても不思議は無い。


「良かったじゃない!…すぐに確かめに行ったらいいんじゃない?」

 ラグナはファンファンと妙に気が合った。

 ちょっと狂信者な所があるけれど、その暴走っぷりも含めて自分と重なる物を感じた。

 ファンファンは地上で出来た唯一の友達だ!

そ の友達が家族と再会できるなら、ひとっとびして男爵を攫ってきても構わない!

 ラグナのそんな提案を、ファンファンはやんわり断った。


「まだ戦争中なんですよ?男爵と私は、合わない方がいいです。…感動の再開は美談にはなりますが、互いの利益のために交渉しなければならない時なんです。」


 …両国に大きな利益も損害も与えうる平和条約の制定、それが身内同士のなれ合いになってしまったら、そう…とられてしまったら。

 それは今後の平和に遺恨を残すと、ファンファンはラグナに説明した。


「兄と…男爵と会うのは戦争が終わってからです。私は全身全霊で平和な終戦を掴みますよ!」


 そんな中での牙ゴリラ軍サカナールの強襲…帝国は、平和交渉の間、誠意として国軍を一街分さげているのだ、今…牙ゴリラと衝突する前線には、間違いなくサカナール領の騎士団、即ちそこには…!


 魔王ラグナの全力の飛翔は父アルデンテ=鮮血の天使のスピードを超える。

 雷鳴に似た轟音を響かせ、ラグナはサカナールへと…!



 ドゥゴオオオオオオオ!


 猫男爵と牙ゴリラの睨み合いの最中だった。


 着弾と共に巻き上がる土煙…牙ゴリラ達は驚愕の身体能力で“それ”から逃れた…!

 人間達は哀れにも腰を抜かし、何が起こったのか理解が追い付かないようだ!


「…え…っえ!?」


 …ラグナもそうだ、ラグナが着く前にその煙はモクモクと上がっていた。ラグナは「彼」より後に着いた。


 もうもうと立ち上る土煙…そのゆらめきを睨みながら、ラグナの胸に熱い物が流れる…


(解らない!…何!?…何この気持ち!?)


 着弾の瞬間を、ラグナの目は「彼」を捉えていた。


(うそ…でしょ?地底も地上も!空の果てまで探しても居なかった!)


土煙が晴れ…ラグナの心臓は際限なく早まる!

8ビート

 16ビート

32ビート!

 64ビート!


(…次の新曲には、相当な早口が必要だわ)


「大丈夫ですか猫男爵?どうやら被害は最小のようですね」


 スーツに付いた土ぼこりを払い…首元のネクタイを締めなおしている…


「あなたが牙ゴリラ国の代表ですか?申し訳ありません…まだ、国と認める事は出来ませんよ?」


 男は冷たい眼差しを牙ゴリラに向けた

(素敵!あぁあの目で見つめられたい!)


「な…なんだてめぇは!…人…なのか!?」


 牙ゴリラは一縷の望みをかけそう問いかけた。

 それはラグナも気になっている事だった。

 あのセクシーさ、あのオーラ…あぁ、まるでお父様のよう…“天使”なんじゃないかしら?

 ラグナもそう感じていたのだ。


「お…お前人間じゃねーな。そ…そんなはずがねぇ!」

 牙ゴリラ族は産まれたての小鹿のように震えながらそう叫んだ


「何を言ってるんですか?私は紛れもなく人間ですよ?」

 男の言葉は牙ゴリラとラグナに衝撃を与えた!

「…うっそ!?」


 今や128ビートに達した心臓を抑えながら、ラグナは自分の認識と彼の言葉を重ね比べる…!


(そんなわけないわ!このオーラ!確かに羽も輪もないけれど!彼はきっと…そう!


 翼を無くした天使!光輪などなくとも輝く地上の太陽!

神々の去ったこの地上を見守る…独りぼっちのラーファウェール<天使長>)


 止めどなく溢れる新曲のアイディア!思考が追い付かない!

 胸が苦しい!送られすぎてジェットコースターのように体中をめぐる血液にラグナの体は燃え上がる!サカナールの街上空に、今小さな太陽が産まれた。


 シュボッ…メラメラメラメラ


 そんな最中、空気が読めない男が一人、魚を頬張りながら叫びをあげた。


「気を付けて!メガーネさん!牙ゴリラ族の握力は三トンです!」


(あ…あの人がお兄さんかな!?)

 気の抜けたキャラクターにラグナは落ち着きを取り戻した。

 うん、落ち着こう…私…256ビート…

 危なかった、本当に死ぬところだったわ…



「ほう…“3”ですか…」

 ファサァ…


 驚きはしない、おそらく父さんに匹敵する彼の力なら

3トンなどあってないような物だ。

 落ち着こう私、心配は無い… 128…64…32…

 おk 大丈夫。はーい!復活!


 メガーネは上着を脱ぎ棄て、一歩を踏み出した。


 512ビート!1024ビートォオオオオオオオオオオオオオオオ!

 強靭な天魔の肉体を持ってしても血管が限界を迎えたようだ、ラグナは燃え盛る太陽となりながら鼻と耳と口から血を吹いた。


 ボブぁアアアアアア!


 一切の暴力を使わず、魔王を殺しにかかるこの男はなおも歩みを止めず前に踏み出る。

 そして冷たい眼差しをゴリラ達に向け、彼は言った!


「私のIQは…“100”です」

「っな!」


 この時代、人間の平均IQは80であった。

 90で天才…賢帝サエワタールのIQすら98…、“100”三桁など…もはや神の領域ではないか!

 ちなみラグナのIQは75であったため、いささか彼の発言は刺激が強かった。

 …もう解らない!ビートがどこまで来たか解らない!油断すると血液どころか目玉が飛び出そうだ!

 太陽は高速でのたうち回り、ついにサカナールの街に火を放った。

 メラメラメラメラメラメラ!


(頭切れすぎぃいいいいいいいいいいいいいい!)


 今…彼はラグナの中の絶対者、父アルデンテを遥かに凌駕した。アルデンテのIQは60だった。


「っへ…へへ、驚かせやがって!」


 しかし、不遜にも牙ゴリラは怯まなかった。

 ラグナはアホなので知らなかったが、牙ゴリラ族のIQは平均が90、天才と謳われる優秀な者たちは100を超えるのだ。



「馬鹿が!俺様のIQは“115”だぜ!?」


(うーん、なーにを言ってるのかしらあのゴリラは、そんな数値この世界にあるわけないじゃない!妄想が過ぎるんじゃないかしら?)


「…“115”そうですか…それでは」


 男は一切歩みを止めず、氷のまなざしのまま歩を進める

その手にはいつのまにかティーカップが握られていた。

 メガーネは歩みをそのままにコーヒーを飲みほした。


「コーヒーを飲み+10 これでIQは“110”」


「「っな!?」」


 シュルリ…


 ネクタイを緩め、シャツを空へと投げるメガーネ、彼は歩みをそのままに言葉を続ける。


「知っていますか?脱衣によるIQの上昇効果を…+10!」


 一糸まとわぬ姿になった男が牙ゴリラ将軍の前に並び立つ!

 IQはメガーネが120!対する将軍が115!今…優劣は完全に逆転した!


「し…知るかぁあああ!ミンチにしてやるぅうううううう!」


 ラグナの意識はそこで途切れた。

 視界が黒くなった時なねは、本当に目玉が飛び出たかと思ったほどだ。


メラメラメラメラ


 燃え盛るサカナールの街に落ちた彼女を…メガーネは優しく受け止めた。


 牙ゴリラを力でねじ伏せるのに1秒

 ラグナの元へ駆けつけるのに1秒


 血まみれの魔王を抱えながら、燃え盛る街を背後に彼は言った。



「探しましたよ…3万年ほど…」


 それは世界の歴史と同じ年月、意味深な発言を最後に今回の話は終わる。

深夜のテンションって怖いざますね。


さぁ…どうなる

ぼちぼち最終回

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