ファンファンの地獄の日々~がんばれ猫耳不幸少女~
シリアスって苦手なのよね(書くのが
現・魔王国
ほんの少し昔の魔界において猫魔族はかなり厳しい立ち位置であった。
猫魔族の領土は人間の国と隣接している言わば魔界の入り口だ。
それ故か人間族とのハーフも多く、そもそも大昔の王族に、猫化の薬を飲んだ人間がいたとか…嘘か本当か、種族を超えた恋愛話も数多くある一族である。
それは即ち、人間を憎んだり、嘲笑う種族もいる魔界では…なかなかに辛い扱いを受けた、では人間の国はといえば、彼らはより一層排他的だ。
猫魔族と人の恋話…それは今の時代において、遠い昔の伝説なのである。
さて、魔王国代表として帝国へ訪れた猫耳の少女、ファンファンについて話そうか。
彼女の故郷は先に述べたとおりの国境地帯だ、それは戦火の最も激しさに焼かれる日々、繰り返される紛争に、何度里は焼かれ、何人の同胞が殺されていったか…
父は戦死、母は病死、5つ上の兄は人間の国で奴隷となって、幼いファンファンは河童一族に攫われ売り物とされた。
絵にかいたような不幸…しかし、ありふれた光景だ。
魔界とは弱肉強食、豊かな土地を人間に奪われ追い立てられた者たちが殺し合う地獄の地…ファンファンは誰を恨む事もしなかった。
…
……
………
幼き日に攫われてより10年経った、美しつ成長し河童の奴隷として働いていたファンファンの元に、恐ろしい牙ゴリラ達がやってきたのだ。
牙ゴリラ達は丁寧に、優しく、ファンファンを殺さない程度に痛めつけた。
「おいおい、力入れすぎるなよ。猫魔族ってのは人間並みに華奢だからな!」
半死のファンファンは冷水を浴びせられ乱暴に血を拭われ歩かされる。
そうしてたどり着いた先に、綺麗な服を着た優し気な猫魔族の男が居た。
「可哀そうに…!さぁ、もう大丈夫だよ?」
10年ぶりに見た同胞の姿に、幼い時のおぼろげな記憶がよみがえる。父さん母さん、兄と…近所の人達との暖かい日々だ…
治療と、食事、休養そして毎日顔を出してくれる優しい男。
魔界の中心、トマト山の麓の屋敷で、ファンファンはしばしの平穏を得た。
その平穏は、身体の傷が治ると終わり…また元の生活に舞い戻る。
「…助かるよ、あの子は美人だ、きっとたくさん稼いでくれる。けど困るよ、毎回毎回…商品を傷つける事は止めてほしいね」
「フン…、言われたように顔は殴ってねぇよ、傷だってあった方が興奮する変態がいるだろ?」
「それにしても今回はやりすぎだな。次はもう少し優しくたのむよ」
「猫魔族は昔から気に入らねぇが、最近は特に頭にきてな!知ってるか?サカナールの…」
「あぁ…“悪食”猫男爵か。…どうやら10年前の取り残しが帝国に拾われて、飼いならされたようだな」
「っけ、だから猫魔族は気に入らねぇ…、やつら人間と組んでやがるんだ!」
実際は、どうなのだろう…人間に寝返ったという猫魔族の男の扱いは…帝国でもっとも危険な魔界の入り口、大してうまみも無い貧しい街を任された彼もまた。人間に利用されているに過ぎないのでないか?
まがりなりにも同族の猫男爵への牙ゴリラの見解に思う所はあったが、悲鳴以外を口にしたなら…きっと恐ろしい事になる。
「…僕も“首輪付き”には嫌悪を覚えるね。同じ猫魔族として情けない!信じられるのは力と金だ、信じてはいけないのは人間だ!」
「ハハハ!お前は例外だぜ旦那!所で武器の手配頼むぜ?あと、サカナールの街の見取り図だ!…年明けには目にものみせてやる!」
どれだけ地獄を歩もうと、決して恨む事の無かったファンファンだったが。
数日の幸福が裏目に出た、最初から何も無ければ無いなりで望まなければ裏切りは無い。
どん底にいたファンファンに、猫魔族の奴隷商、猫ホストはどれほど残酷な裏切りをした事か…
「お前の兄は馬鹿な男だ、男爵などと持ち上げられて、人間の飼い猫になりさがった」
「兄さんは…生きているの!?」
「アハハ、“今はまだ”な?…人間につく裏切り者には天罰が下る、お前も知っているだろう?屋敷を出入りする牙ゴリラ達の拳の痛みを!」
……殺してやりたい!
「安心しろよ!お前の時みたいに“優しく”じゃないさ!きっと一撃で天国にいける!」
…殺してやりたい!
「そもそも家の商品になるはずだったんだ!一匹逃がしたあいつのせいで!あいつの帝国での活躍で!どれだけ牙ゴリラ達に恨まれたか!たくよぉ!買取倍の格安提供!売り上げ半減なんてもんじゃねーぜ!」
「「……殺してやる!」」
ファンファンの呟きは、遥か上空で地上を睨む。裁きの悪魔と重なった。
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■■■アぁあ阿ア■■■ ■■
ア亜■阿あァ ア亞啞ァ■■アアぁ儀あ阿ア亜阿あ■ァア亞啞■ァアア■ぁあ阿魚ア亜■阿あァア亞啞ァアア■ぁあ阿!!?
■我
■アぁあ阿ア■アぁ誤あ阿ア■
■■アぁあ阿ア■■■
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ファンファンが産まれて初めて呪詛を叫んだその瞬間に
天から雷が降り注ぎ、目の前に大きな火柱が上がった。
男の館と男自身…悪への裁きは
魔界に12の火柱が上がった
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
空を舞う有角の少女の高笑いを、ファンファンは今でも覚えている。
…
……
…………
「街を燃やした時のラグナ様の高笑い!すっとしましたよ!ラグナ様が滅ぼした家や場所は。どこもかしこも悪徳な屑権力者の領地でした!ラグナ様は英雄です!」
心の底からの思いを言葉にする…しかし、主の表情は険しく、どうやら感謝は伝わらないようだ
「私はラグナ様の奴隷です!尻にネギを刺して踊れと言うならば踊ってみせます!」
奴隷商の崩壊とともに、再び集まった猫魔族達、その代表としてファンファンは魔王に遣える事になった。
「ラグナ様万歳!」
人間ともっとも近しい魔族として、ファンファンが帝国に派遣されるのは…もう少し先のお話である。
猫ホストの台詞の矛盾は
彼の息子とかそういう逃げ道を用意してみる。
ぐぇえ
短編小説、
メザシ骨子と猫魔王の設定を回収出来たのがうれしい限り




