さくら商店、商業都市を目指して出発す
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「こんにちはー! ミリアナいる?」
「はーい――あっ! サクラさん!」
「久しぶり!」
「お久しぶりです、今日は鑑定ですか?」
「そう、20個ばかり持ってきたんだよ……よし、これをお願いします」
私が異空の指輪から未鑑定品を取り出すとミリアナはお店のカウンターの上でそれらを手に取り鑑定スキルを使用していく。
改めて思ったけれどこの鑑定スキルはかなり有能だよね。
未鑑定品の装備、アイテムは手に入れた段階では『未鑑定剣』だとか『未鑑定鎧』『未鑑定消耗品』といった感じで詳細も何も見えないようになっているけれど、鑑定スキルで鑑定することによって詳細と効果が分かるようになっている。
ただしスキルの中には偽装というものがあるらしく、ミリアナのお店を使って悪さをしていた悪党はこの『偽装スキル』を使用して購入者を騙していたらしい。
だからこそ鑑定スキルで鑑定した高価な装備には『鑑定書』を付けるのが一番安全だと言われている。
例えば私が使う『魔法の墨石』は鑑定結果やスキル、アイテムによる看破の結果を映し出すという能力がある。
この能力を使えば偽装効果は発動せず、本物だという確実な保証が得られるわけだ。
しかし魔法の墨石はそこまで産出量の多いアイテムじゃないらしく、私がこの世界に来てすぐに出会った冒険者のPTは本当にラッキーだったんだろうね。
更にこの『魔法の墨石は』は二つに分けても効果があるという優れもので、私が持っている物は元々片手ほどの大きさだったけれど、今はその半分……つまりもう半分はミリアナに持たせている。
「おお……今回もかなり有能な物が出てますね。最初の神話級ラッシュ程ではないですが」
「あれはね、もうダンジョンの効果としか」
「あ、『錯乱の洞穴』と言えば、なんでもサキュバスが出没するとかで討伐隊が入ったそうですが、アイテムも見つからずサキュバスの存在も確認できなかったそうですよ? 高価な精神耐性の消耗品がかなりの数無駄になったとかで大騒ぎでした」
「へ、へぇ」
「さくらさんがサキュバスに出会わなかったのは運が良かったんでしょうか」
「そうかもねぇ……」
私は鑑定結果の出たアイテムを1個ずつ確認しながら異空へ収納していく。
・鋼の剣×4
・鋼の細剣×2
・鋼の大剣
・精霊剣(民話級)
・精霊槍(民話級)
・精霊の杖(民話級)
ふむふむ、武器は10本中7本がドロップ品で3本が宝箱産だったけど、どうやらシリーズで統制されていたらしい。
鋼シリーズは在庫にしておくとして、精霊シリーズは店舗に並べてみよう。
さて次は防具か。
・鋼のローブ
・鋼の鎧×3
・鋼の軽装鎧
・蜥蜴の骨格鎧(民話級)
なるほど、こちらは民話級が一つか。
蜥蜴シリーズとかってあるのかな?
鋼シリーズは防具でも一般的らしくドロップ品では一番多いかもしれない。
けど鋼のローブって何だろう? どこがどう鋼なのか気になるけど……そういえば、以前PTを組んだ僧侶のアンが『金糸』がどうこうといった話をしていた気がする。
つまりこのローブもただの布に見えるけど鋼を細く縫い込んで、と思ったけど普通に心臓や首元、腹部を守るように薄い鋼が裏当てされているだけだね。
「そういえばミリアナ、商人がダンジョンに潜るとしたら防具は何がいいと思う?」
「防具ですか? そうですねぇ、さくらさんは既に篭手と靴は持ってますから強いて言うなら胴ですけど……正直に言ってそこは趣味ですね。例えば軽装鎧が好きな人もいますし、商人なのに重鎧を着こむ人もいます。ローブを着る人もいますし、人それぞれかなぁって感じですね」
「うーん、少し悩むなぁ……」
「あ、じゃあ今度『商業都市ガネッサ』で商人祭があるんですけど、そこでは各商人が場所を借りて商売ができるそうですよ。そこを覗いてきてはいかがですか? もしかしたら掘り出し物に会えるかも」
「お、本当? じゃあ一緒に行こうよ」
「すみません、そうしたいんですけど少しお店が忙しくて。さくらさんに譲ってもらった魔法の墨石のおかげで商売繁盛なんです! 鑑定予約も多くて……」
「譲ったって言うかお金は貰ってるかられっきとした商売だよ。でも確かに、ミリアナの鑑定スキルはレベル高いもんね」
「それだけが取り柄ですからねぇ。でもお陰で信用はしてもらってます」
「そっか。でも一人で行くと偽装スキルに引っかかりそうなんだよなぁ」
「大丈夫だとは思いますけど……一応は商業都市ですからね。厳しい取り締まりもありますし、そういう詐欺行為は周りが許さないと思います」
「んー……せめて真贋が分かれば……って、そうか、質問すればいいんだ」
「ああ、そうですね。真贋のネックレスがありますもんね。ただ高位な偽装スキルを使う人だと返答も偽装しちゃうんでやっぱり鑑定してみないと……」
「せめて、せめて偽装スキルさえ看破できるアイテムがあればなぁ!」
「聞いたことはないですが、もしかしたら存在するかもしれませんねぇ――あ、いらっしゃいませ!」
「おっと……じゃあ私今からそこへ行ってみるよ、お邪魔しました!」
「あ、はーい。また来てくださいね!」
私は残りの消耗品4つを収納すると足早にロックス商店を後にする。
目指すは商業都市ガネッサ、地図を更新すればどこにあるかはすぐにわかるから先にこっちで用事を済ませて向かおうかな。
「こんにちは!」
「あ、さくらさん、こんにちは」
「エリンさん、今日は受付ですか?」
「はい、ダンジョンの方は特に問題もありませんでした。数日さくらさんが見回ってくれたおかげです」
「いえいえ、それにしてもエリンさん、かなり強かったんですねぇ……」
「ふふ、私はエルフ族ですからね。成長は遅いですが魔力はそれなりにありますし、何より魔法使いは私の天職なので」
「天職?」
「そうです。職業にはその人にぴったりと合う天職というものがあるんです。まぁそれが分かるのは極稀ですが……私の場合は魔法使い以外の職業は選択すらできませんでしたから」
「へぇ、そんなこともあるんだ」
「はい。多くの強力なスキルを覚えられる反面、選択の自由はありません。それが私が職業を変えなかった理由でもあるんです」
「あ、そうなんだ……ごめんなさい、そんなことも知らずに……」
「いえいえ、おかげで私は目が覚めたんです。もしこの眼が治っていなくても、魔法使いとしてできることを模索していたでしょう」
「そういえばマイルちゃんは元気ですか?」
「ええ、お陰様で。毎日友達と遅くまで勉強しているようで、どんどんと選択肢を増やしているようです」
「魔法使いには……」
「あの子は魔法使いには向きません。種族として魔法とは縁がないので……」
「種族? マインちゃんもですか?」
「はい、あの子はドワフです。元々は戦士や鍛冶師として名高い種族ですので魔法は不得手で。こちらではほとんど見ませんが」
「ドワフ! あ、だから少し背が小さいのかぁ」
「そうですね、恐らく大きくなってもさくらさんよりも少し小さい位でしょうね」
「うーん、私もそこまで大きな方じゃないけれど……そっか、種族の特徴ってやっぱりあるんですねぇ。ゲームでも種族値なんてあったしなぁ……」
「げぇむ?」
「いえなんでも。ところで今日パスティさんはあっちですか?」
「いえ、パスティさんは今日はお休みです。ギルドマスターと一緒に商業都市へ出かけてますね」
「え、もしかして商人祭?」
「それも目的だと思いますが、他にも商業ギルドと会合がありますし知人に会う……とも仰ってましたね」
「なるほど……じゃあ向こうで会えるかなぁ」
「やはり行かれるのですね。何かお目当てが?」
「うーん、少し防具を。ほら、私スキルのお陰で防御力は高いんですけど、この間行ったダンジョンでネームドモンスターにダメージ貰っちゃって。まぁ薄皮一枚だったけど、直撃してたら死んでたかも」
「危なかったですね……確かに今の布のローブでは厳しいかもしれませんねぇ」
「なので何か掘り出し物を買いに行こうかと思いまして! エクスポーションも在庫を捌きたいですしねぇ」
「そうですね、何か良い物が見つかるといいですね」
「ですね! じゃあ早速ですけど行ってきますね!」
「お気をつけて」
私は冒険者ギルドを後にし、門から外へと出ると早速地図を広げる。
なるほど、今回はかなりの長旅になるなぁ。
ええとアンパルの街から南東へ5日ほど向かうといい訳か、私は走ればすぐにつくから3時間くらいあれば十分だなぁ。
どれ、途中でダンジョンの情報を仕入れながら向かうとしようかな。
「何か掘り出し物が見つかるといいなぁ!」
私はまるで誰かに聞かせるように独り言をつぶやくと商業都市を目指して走り出した。