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小佐奈なじみは報われない☆  作者: ゴロクリームパンケーキ
1/1

残念ながらご飯派なの☆


 わたし、小佐奈おさななじみ!


 ペロニャッポン星人に襲われてる女子高生!


「ペロニャッポン」


「うう、このままじゃ遅刻確定だよ……」


 いっけなーい、ちこくちこくー☆ とか言って触れるモノすべてブッ飛ばせる性格なら、どれだけラクだったのかな!


 ああいうお花畑っていろいろと無敵だよね! わたしは嫌いだけど☆


 え? そう言うくせにモノローグは脳天ウルトラハッピーだろって?


 違うの!


 こうでもしないと自分を保てないの!


 だって……


「ペロニャッポン」


「なんなのただ目の前に立ち塞がるだけって! 意味がわからない!」


 言葉もわからないし目的不明すぎるよ~☆


 そもそもなんなのペロニャッポン星人て!


 舌でてるわけでもないし、猫でも狸でもなく軟体生物に近いし、色もなんか赤紫っぽくて不気味だし!


「ペロニャッポン」


「うん。あなたの言い分はわかったわ。だからそこをどいてくれる?」


「ペロニャッポン」


 ペロニャッポンじゃわかんねーんだよさっさと道あけて失せろやヴァーカ☆


「ああ! ちょうどいいところに若々しい女子がいるわ!」


「もー! 今度はなんですか!」


 突然の声に振り向くと、なんか……なんだろう。


 なんかよくわからない空飛ぶ人型がいた。


 モチーフはたぶんプラナリアなんだろうけど、全身緑色で気色悪い。


 さらに言うならナイスバディだし素っ裸だからもう目のやり場どうすりゃいいのよこれ。


「わたしはメロン! フルーツティンクルランド、略してフルティンの妖精よ!」


「はぁ。妖精ですか」


「わたしたちの故郷を荒らしに荒らしてペロニャッポンなんて謎の言葉を残していった憎っくきペロニャッポン星人を倒すのに協力してほしいの!」


「異星人に対して妖精ぶつけるとは、なかなか斬新ですね」


「いまから聖なる妖精パゥワァであなたを仮面魔法天使に創り変えるわ!」


「やばい。秒でワケわからない大事に巻き込まれそうになってる」


「さぁ受け取って! マジカルラブリーフェアリーエンジェリック――」


「あ、呪文クソ長い」


 まだ唱え続けてるし、これはチャンスだ。


「突っ込みどころが多すぎるし対応がわからないのでクーリングオフ!」


「アーッ!」


 鷲掴みにした妖精をペロニャッポン星人に全力で投げつけてやれば、なぜか爆発した。


「ああ、なんてこと……まさかわたしにこんなチカラがあるだなんて! このチカラがあればペロニャッポン星人なんて恐るるに足らず!」


「あ、よかった生きてた」


 殺生は気分悪いもの☆


 でもでも、なんか妖精さんが闇落ちしてない大丈夫?


 わたしに関係ないからオールオッケー☆


「さて、これでもう邪魔者はいない」


 ペロニャッポン星人を片付け、妖精もどこかに飛んでった。脳内麻薬はもう必要な……


「ああもうこんな時間! 急がなきゃ!」


 いっけなーい、ちこくちこくー☆


 全速力でも間に合うかギリギリだよー☆


 もうなりふり構ってらんないから麻薬ドバドバで特攻だー☆


 触れるモノみなブチ砕いてやるぜー☆


「お、なじみじゃん」


「もー! 今度はなにーあんとわねっつ!」


 声のほうを向けば、またも人型。


 制服を着こんだ男子が、眉をハの字にしてわたしを見てて……


「なんだそのなんとかネッツって。……ああ、あれか。パンがないから遅刻してんのか」


 そうあきれ顔で言うのは我が悪友、夏納地ななじみさお。


 家が近いというか隣なせいで、ことあるごとになんかワチャワチャある感じのヤツ。


「なんだミサオか。そっちこそ遅刻真っ最中でしょ」


「チャリなら余裕」


「くっそ~、ブルジョアめ! 電柱にぶつかってウンコ踏め!」


「いや、そのチャリと並走できてるし、なじみも余裕だろ」


 なんだその若干引いたような目は!


 いまのわたしは麻薬ダブダブのドッヴァドヴァだぞ!?


 あんたのこともブチ壊してやるぞ!?


「にしても、久しぶりだな」


「あ? なにが?」


「なんで喧嘩腰だよ俺なんかした?」


「遅刻しそうで全力疾走してる女子に軽々しくチャリの上から話しかけてきてるね」


「いやだって、ふたり乗りダメだし、降りたら俺が遅刻するし」


「女のためならルールのひとつやふたつブチ破ってみろや男だろうがああん?」


「おまえ今日キメすぎだろ怖ぇわ」


 うわっ、わたしの麻薬テンション、キメすぎ……?


 ていうかミサオ、わたしが麻薬常習者だって知ってるの~?


 もしそうだったら、


「捻り潰さなきゃダメかな~☆」


「いやマジで怖いって勘弁してくれ」


「いっけなーい! 声にでちゃってたー☆」


「それもだしちゃダメなヤツだろたぶん」


 ミサオは疲れたようにため息をつく。


 疲れてるのは全力疾走してるこっちだっつーの☆


「んで、あれだ。いっしょに登校すんの久しぶりだよな」


「おうなんだミサオてめぇ女々しい(かわいい)なぁこの野郎」


「おい待て、いまどういう字使った?」


「そんなとこも女々しい(愛くるしい)じゃねぇのよ」


「よしわかった。なんとなくわかったから言うが二度と俺にその字使うんじゃねぇ。あと口調と顔面男らしすぎるだろ」


 あれあれ? 口調はともかく顔面まで変わっちゃってたの~?


 わたしってばうっかりやさーん☆


「で、まぁ、あれだ。よかったら、なんだけどよ……明日からもいっしょに――」


「ペロニャッポン」


「うざい消し飛べ」


「ペロニャッポーン!」


「…………え? ああ、えっと、俺はどう反応すればオーケー?」


「シカトブッ込めばオケ」


「よしオーケー。んでまぁ、明日――」


「ペロニャッ――ポーン!」


「…………うん。よし。この話やめようか」


「そうだね。それがいいよ」


 第一ミサオといっしょにいるのを避けているってのに、なにを近づいて、あげくに乙女なこと言いだそうとしてるのやら。


 女々しい(めっちゃ好きだ)なぁ本当に。


 サラサラの黒髪も。


 ちょっとだけ筋肉質な肌も。


 優しくてイケメンなところも。


 本当に、大好きだ。


 けれど、わたしは呪われている。


 ミサオに近づこうとすればするほど、世界が定めた因果とでも言うべき妨害にあう。


 そう。


 小佐奈なじみは報われないのだ。


「あ、ミサオ先輩! おはようございます!」


「ん? おお、さなみちゃん。こんなところで奇遇だね」


「あ、は、はい……いや、えっと、ですね……本当は奇遇でもなんでもなくて……」


「モジモジモジモジなにしてんだい! トイレなら向こうだよ黒髪メガネのお嬢ちゃん! さぁさぁはやく行っトイレ!」


「後輩にまで変な絡みすんじゃねぇよ」


 失敬な! こちとら親切で教えてるってのに!


 でもわたしがこんな絡まれかたしたら湾に沈めようとしちゃうかも☆


「こいつのことはあんま気にしなくていいから」


「あ、はい……」


 え、なにその目は……まさか、わたしの後ろに不審者が!?


 ……うん、まぁ、いないですよねぇ~。


「あの……ミサオ先輩は、そちらの方とおつきあいとかされてるんですか?」


「ドつきあいはしてるかもな」


「えー、と……それは、彼女さんではないと言うことですか?」


「……まぁ、そうだな」


 断言せずに変なタメをつくるんじゃないよ女々しい(抱きしめたい)なぁ!


「そ、それなら……その……わたし、とかって、どうでしょうか……?」


 あらあら? この子なかなかのやり手だよ?


 この女々しい野郎は押しに弱い。


 強引に攻め込めば、なし崩し的に攻略できる可能性はなくもない。


 けれど……


「あー、いや俺、ほかに好きな人が……」


「知ってます」


 おお?


「知った上で、言ってるんです」


 これはまさかの略奪宣言!?


「わたし、先輩のことが好きです。ずっとずっと、出逢ったときから、ずっと!」


「出逢ったって、そんなまだひと月も経ってない相手に……」


「違うんです」


 あれあれ? これはちょっと、ヤバいんじゃあなぁ~い~?


「初めて逢ったのは、もっと昔。憶えてませんか? 泣き虫コナミって」


「泣き虫コナミ? って、え!? あのコナミちゃん!?」


「はい。そうです。そのコナミです。小学校に上がる前、想いを伝える前に引っ越してしまったので、もう、叶わないと思ってました。けど、高校で再会して、これはもう運命なんじゃないかって!」


「ちょっと待とうかおふたりさ~ん! いや、さなみちゃん。その先はダメだ! いったんモチつこう!」


「おまえが落ち着けよ」


「……先輩、ですよねたぶん。先輩が焦るのもわかりますが、こちらも譲れないんです」


 いや譲ろう!? ここはいったん譲っとこう!?


 でないと……


「ペロニャッポン」


 ほらきたー☆


「わ、え? な、なんですかこの奇妙な物体……」


「ペロニャッポン星人です」


「ペロニャッ、え? ご、ごめんなさい、よくわからなかったです……」


 安心して、わたしも全然わかってないからー☆


「ひとまずこれどけちゃうから、ふたりとも下がっ――」


「あーッ! 見つけたわペロニャッポン星人! ついでに若々しい男女が三人も! 殺生ついでに戦力確保よーッ!」


「あーもう混沌! 闇鍋地獄! ひとまずあなたはクーリングオフ!」


「アーッ!」


 ボカーン!


 なんて、テレビで見るような見事な爆発。


 ペロニャッポン星人は消し飛び、妖精も爆風で吹っ飛んでいく。


「…………えっと、理解が追いつかないのですが」


考えるな、感じるんだドント・シンク・フィール


「……それ、手段と目的を違えるな、無意識に意識し、相手に適応しろ、的な意味でしたよね確か」


 え、そうなの? さなみちゃんったら博識ー☆


 でもその意味でもあってるからセーッフ☆


「ミサオ先輩も驚いてないところを見ると、あれは日常茶飯事ということですよね」


「いや、ついさっき遭ったから、耐性がな」


「…………そうですか。なんか、はい。現状がうまく飲み込めないです」


 うん、わかるわかる、すごいよくわかるー☆


 わたしも初めはそうだった☆


 けどね、もうなれちゃった☆


 不条理な日常に慣れちゃった☆


 妨害の嵐に馴れちゃった☆


 動じないどころか当然だろって成れちゃった☆


「さなみちゃんはね、この世界の禁忌に触れてしまったの」


「禁忌、ですか?」


「うん。禁忌」


 せっかくだから、またモノローグしちゃうね☆


 わたしは、報われない。


 わたしたちは、報われない。


 異星人だって、妖精だって、なんでもありのこの世界。


 けれど唯一ひとつだけ、ありえない因果ことが存在する。


 そう……


「幼馴染みは、報われない」




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