馴れ初め
「好きです、付き合ってください!」
一目惚れだった。
大人びた容姿、プロポーション、顔、雰囲気。
何がなんでも付き合いたいと思った。
接点なんてまるでない、当たって砕けろの方式。
「え、お兄さん誰…」
顔を上げる、非常に困惑した表情。
若干引いてるようにも見えるし、純粋に疑問に思っているのかもわからない。
「えっと、牛田太郎って言います、一目惚れしました付き合ってください」
凄い勢いで頭を下げ、必死に懇願する。
みじめだと感じた、プライドも正直もたない、でもそこまでしても付き合いたいくらい魅力的な女性だ。
沈黙が訪れる、頭を下げ続ける。
風の音が鮮明に聞こえる、遠くで車が走る音が聞こえる。
静かだ。
「え、えっと」
やっと口を開いてくれた。
途端に緊張する、体が強ばるし足も震えてきた。
頭の位置もぶれてきて、だんだん上がっているように感じる。
「お兄さん何歳?」
「17です」
「高2かー、あたし14なんだけど」
「えっ嘘」
思わず顔を上げる。
変わらず大人びた少女がそこにいた、しかしその表情は低い身長も相まって途端に幼く見える。
「えっと…中学生2年生?」
「3年3年、誕生日遅いから」
「あ、そうなんだ…」
ここは夜の街、深い夜の街。
まさかそんな幼い子が危険な暗い街を歩いているだなんて思わないだろう。
「え、いっつも夜歩いてるけど、ホントに中三?」
「そうだっての、遊んでるだけ。」
「あ、そうなんだ…」
心の中で何かが崩れた、衝撃は凄まじい。
呆気にとられていると、今度はあっちから切り出した。
「で、ホントに付き合って欲しいの?」
「え、あ、勿論です!」
「ふーん」
少し目を細めた、泣きぼくろが魅力的だ。
その顔はさっきよりも柔らかく見える。
「あたし山西美月、よろしくね」
「あ、よろしくお願いします」
「そういう時だけ丁寧なのね、必死?」
「えっと…」
何もかも見透かされているような感じ。
少し怖くなってきた。
「まーいいや、ライン交換しよ」
「え、あ、うん」
スマホを取り出す、両者機種は同じだった。