表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

アイリス

作者: 鬼

父の話の続きです。

私は、勇気という物がなかった。

周りの人間に勇気を持ってる人がいなかったからだ。


他の人が何気なくしてる事が、なぜか怖かった。


私が唯一緊張しなくて、普通になれるのは、花をみてる時だ。


母は綺麗な人で、家の庭でよく花の世話をしていた。

お母さんは、訳あってもういないけど、

私の家ではお母さんの話はしないようにって、

祖父に言われたから、話してない。

家の庭は、お母さんがいなくなって、酔った父がぐちゃぐちゃに踏み潰して、花はもうダメになった。

その庭は、綺麗にしてずっとそのままだ。

祖父は無くした方がいいとゆう。


父と私は、それはしなかった。


高校に通う途中に、お花屋さんがあって、毎日店の前で店員さんに見つかりそうになる前まで、花をみてる。


学校には友達がいない。

暗くて、地味で、面白くない私は、相手をしてくれない。


ある日、祖父からお小遣いをもらった。


欲しいものなんかない。

でも、父の暗い顔が浮かび、

お母さんが好きだったお花をあげたいなって思って、

通学路の花屋さんに行った。


今日はいつもの店員さんじゃなくて、

バイトのお兄さんだ。

優しかった頃の父の笑った顔に雰囲気が似てた。

緊張して、いい感じに喋れなかった。


母が好きだった花を買い、家に帰った。

父が喜ぶ顔を想像した。


母が居なくなり家の空気が暗くなってから、初めて勇気を出した。


家に着くと、一番に父の元に行く。

またお酒を飲んでいた。


父にプレゼントがあると言って声をかけても、

振り向かなかった。

また話しかけようとしても、父の背中は重たそうだった。


私は、父に花をあげるのをやめた。

母が好きだったアイリスの花だ。


それで私は、アイリスの花を花のない庭に置いた。



また学校に行く途中、花屋さんに行った。

アルバイトのお兄さんがいて、話しかけてくれた。

お兄さんは、大学生で、私が高校生で、2つ違いだった。

お兄さんの家がお花屋さんらしい。


初めてちゃんとした友達ができたかもしれない。


お兄さんになんのお花が好きか聞かれて、

アイリスが好きと言ったら、花言葉を教えてくれた。


花言葉は勇気だった。

母は強い人だと思ってたけど、本当は弱い人だったのかもしれない。



お兄さんとは、高校を卒業しても、仲が良くて、

ある日告白をされて、付き合うようになった。


私が父に出した勇気は無駄だったかもしれない。

でも、私が父に向けた思いは変わらない。

私はまだ弱いままの人間かもしれないけど、

少しずつ勇気を持ちたいと思うようになった。


私は、周りと打ち解けるようになり、

性格も変わった。

まだ父にあれから会えてないが、

私にも子供ができて、

父の気持ちも、

大切な人がいる気持ちも、

少しは理解できるようになった。


また父に振り向いてもらえないかもしれないけど、

また父に勇気を持って、会いに行きたいと思った。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] だんだんと勇気が芽生えていくのが見て取れました。 応援したくなりましたね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ