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夢の方がいい  作者: am
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第1章

時々、夢を夢だと認識できる時がある。認識すると自分で念じなければ目が醒める事がなくなるが、それ以外はこれと言って特別な事などない普通の夢。

だから毎回、微かに聞こえてくる目覚ましの音で世界を終わらせていた。


その日みた夢の季節は真夏。暑い日差しが降り注ぐ中、行く宛もわからずただひたすらに歩かされていた。そんな時ふと目の前に川が見えた。普段であればなんとなく眺めるくらいで特に気にも留めないモノだが、この日は違った。

「泳ぎたいな」

ジリジリと肌を焦がすような暑さも手伝ってか、気づけばそう口に出していた。しかし己が自由に動いているようで動かされている夢の中で泳ぎに行くなど、到底無理だと諦めていた。諦めると同時に、ふと気づいた。念じる事で世界を終わらせる事ができるのであれば、同じように世界を自由に作れるのではないか。事実、強く思ったであろう気持ちは声に出せていた。

「泳ぎたい」

今度ははっきりと自分の意思を乗せ、声に出してみた。次第に歩いていた足は止まり、もう「夢」に操られる事はなくなっていた。途端に走り出し、冷たい川の水に飛び込んだ。

それからは空を飛びたいと思えば飛べたし、人魚の様に海の中を泳ぎまわりたいと思えばそう出来た。

他にも欲しかったぬいぐるみや食べてみたかったお菓子など思いつく限りの願望を叶えていった。

初めて、目を覚ましたくないと思った。目覚ましの音が聞こえなければいいのに、と。





名残惜しさを残し、その日もまた目覚めた。ゆっくりと自分の通う高校へ向かう為の準備を始める。

その高校はスポーツの名門校で特に野球に力を入れており、たまの休みに任意と言う名の強制的な全校応援がたまらなく嫌だった。しかしこれに参加しないと、一部の帰宅部員は内申に書くことがなくなり進学や就職が危うくなってしまう。

自分もその帰宅部員の一人である。ならば何故そこへ通っているのか。それはいわゆるスポーツバカの集まる学校なので偏差値はとんでもなく低い上に、中学の素行関係なく名前さえかければ入れる為である。自分は中学時代は不登校で出席日数が足りておらず、選択肢がこの高校しかなかったからである。


そうこうしていたら高校へ到着した。朝礼まではまだ多少の時間があった。友達は多い方なので、談笑しながら過ごす。いつもなら楽しい時間の筈だが、今日はなんだか落ち着かない。早く夜になればいいと、ぼんやり考えていた。

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