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五年間、、、心待ちしていた君との闘いだ

今回は短めです

 そこは広場とは言っても、地面は踏み固められた土だけで、中心には朽ちた掲示板があるだけだった。

 周囲には小さな家やそれらよりも少し大きい建物、恐らく村長の家、が置かれていた。


 ついてすぐ、私は聞いた。


 「、、、どうして妹を殺した。どうして実の娘を。」


 答えずに彼は、私をしばらくじっと見て、頷きながら言った。


 「教えて欲しいかい?」

 「当たり前だ」


 彼は顎に右手を当ててにやけ顔で返した。



 「私を倒したら、考えてあげよう」




 「、、、、なに?」


 私は微かに声を荒げた。

 彼はそのにやけ顔をこちらに向けて言う。


 「教えてあげたいのは山々だが、ただ教えても面白くないではないか」


 苛立ちはさらに強まった。そのいたずらを好む性格が、父を思い出させるからだ。


 あぁ、やめてくれ。そう思った。今の彼をあのころの父と重ねることは、昔の思い出を一枚の絵にしたならば、それに汚泥を投げつけ、踏みにじるような、そんな胸を押さえたい痛みをもたらすからだ。


 彼は笑みを深め、真夜中に浮かぶ三日月のように口を広げ、言った。


 「そのほうがより力を振るえるだろう?」


 間違いなく、彼は楽しんでいた。私が嫌と思っていることをあえてやっているように見えた。

 私は胸の中をのたうつ思い出を押さえつけるために、深呼吸を幾度も繰り返した。

 

 覚悟を決め、剣先を彼へ向けた。


 「降伏せよ。あなたにはわが国の国民であり、国を守る大鷹乗り及びその他戦士達の殺害の容疑がかかっている。」


 その剣先には、多量の風の気が納められている。

 私と彼の間には5馬身程の距離があるが、風の刃の前では目の前で喉元に剣を当てているにも等しい状態だった。


 しかし彼はそれに恐れもせず、先ほどの笑顔のまま答えた。


 「断らせてもらうよ」


 もちろん受け入れる訳がないと思っていた。

 

 「そうか。ならば無理やりにでも捕まってもらう。抵抗するのならば」


 私は剣を大上段に構え、全身の力を込めて、叫びと共に振り下ろした。


 「死あるのみと知れ!!」


 風がいくつもの刃となり、彼へと襲いかかる。

 すべてが彼の元に着弾し、その余波は土煙となった。

 私はそれで彼が倒れるとは思っていない。体に周囲の命の気と風の気を再び集め溜め込みながら剣を構え、煙が晴れるのを待った。

  

 煙が晴れると、そこには水の塊の形を四角に変え、壁としているあの人がいた。言うまでもなく、無傷だ。

 彼は茶色のローブを脱ぎ捨て、右手を掲げた。


 「五年間、、、心待ちしていた君との闘いだ」


 そこに、壁としていた水と、それ以外の水が集って、一軒家ほどの大きさになり、


「良いものを見せておくれよ!!」


 そこから人の拳ほどの水塊がおびただしく射ち出された。

 

 私は風を纏って足に命の気を流し込んで横に走った。風は私の背中を押し、また、足に込められた気が私を力強く運んだ。それでも水塊がいくつも向かってきたが、私も風刃をいくつも撃ちだして相殺しながら避け続けた。

 しかしその数は余りに多く、また、術者の精度も高い。少しずつ私に向かう水塊の数が増え始め、止むを得ず、じぐざぐに動きながら距離をとった。

 水の気は力は強いが、その分重い為遠くに飛ばせない。遠くからの攻撃が有効と考えた。

 私は剣を突き出し、今度は貫通力の高い槍状の風を飛ばした。

 彼はまた壁を作った。が、多くの水を放ったため先ほどより薄く、三本の槍のうち一本が壁を貫き、彼の胴に迫った。


 「さすがだな!」

 

 彼は感心した声を上げながら、しかしあっさりと避けた。

 だがそれによってより薄くなった水壁に、私は更に四本の風槍を撃ち込んだ。

 それに対し、彼は盾を解き、その水で四つの塊を作ると、風槍に向かって伸ばした。

 精確に水柱を風槍に重ね、瞬く間に風の力を奪い消し去った。

 だが水は無くなった。


 私は好機と見て、すかさず再度踏み込んだ。


 しかし、それはわずかに躊躇いを含んだものになった。最初の踏み込みの失敗がちらついたからだ。

 

 その結果、幸運にも躊躇いのために、最初ほどの衝撃は受けずにすんだが、再度吹き飛ばされた。

 その突撃の失敗の功で、ひとつわかったことがあった。


 精霊術は各属性の気だけが集まる場所から生まれる精霊、それらから好かれている者が精霊に語り掛けると力を貸してくれる。それを術として確立したものだが、語り掛けるという手順は大きな隙になりやすく、そのため術者は他の守り手や討ち手などの支援を受けながら戦うのが常なのだが。


 「術を唱えずに精霊術を使っているのか!聞いたこともないぞそんなもの!」


 そう。彼はそもそも唱えてすらいなかった。それでは気を集める速度で言えば神抜者と変わらないだろう。

 彼は楽しそうな笑みを浮かべながら、既に先ほどよりも多くの塊を生み出している。長い闘いになることは明白だった。

拙作を読んでいただきありがとうございました。

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