野原
また昨日と同じ部屋に来た。
今日は私1人ではない、
昨日いた少女が部屋の真ん中に立っている。
少女は外に行こうと私の手を引いてドアの外に私を連れだした。
ドアの外は果てしなく広がる野原だった。
芝の匂いと土の匂い、
久し振りの外の香りに心が躍ってた。
やっぱり自然っていいな。
今までは当たり前だと思っていた世界が、
当たり前では無くなり、
今はとても不自由な生活をしている。
外出が出来ない私には、
たまに体調の良い時に出かける時間が何よりも楽しい時間だった、
この不自由な生活になってからすべてに感謝が出来るようになった。
昔の私はプライドが高く、
自分1人でなんでも出来ると思い込んでいた。
人を批判したり、
自分の価値観で人を裁いたり、
今考えると、
ひどい人間だった。
今は外の香りだけで幸せを感じることが出来るようになった。
こんな開放感に浸っている間もなく、
少女が私の手を引き進んで行く。
そして少女は静かに話し始めた、
少女「なんで気が付かないの?」
私「何を?」
少女「自分の才能に」
私「私の才能?」
少女「昔から他人の感情に敏感だったでしょ?
色々な人の感情を感じていたじゃない?
今も感じ取っているでしょ?
自分の感情と他人の感情が混ざって違和感を感じていることに気が付いて!」
私「感情が混ざる?、違和感!」
少女「他の人より敏感なその才能に気が付いて、
その力で人を救いだして…」
私「えっ!!聞こえない」
少女「・・・・・・・」
私「何?聞こえないよ」
次の瞬間、強い風が吹いて来た、
横を見ると、少女はどこにもいない、
周りを見ると野原も無い、
真っ暗な闇の中に私は立っていた。
そして、過去の出来事が走馬灯のように蘇って来た、
私の中でバラバラだったパズルのピースがすべてカチッとはまったような感覚があった。
そこで目が覚めた。
テレビの音量を下げ、
今日も同じ1日が始まる。
でも昨日とは少し違う1日になりそうだ。