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わたしの羽  作者: 田中らら
2/12

ゼンマイの切れた人形のような私は、

外出も思うように出来なくなり、

引きこもりの日々が続いた。


どんな環境でも人間は「慣れる」ことが出来る、

もともとは家にいることが苦手だった私だが、

家にいることにすっかり慣れていた、

その変わり外出への恐怖心は大きくなるばかりだった。


学生の時とは違い、40歳を超えるとみんな自分の家庭を持ち、

親友と呼べる相手のいない私はただ毎日1人で過ごしていた。

今の状況を打破するすべもなく未来は不安しか無いと悩んでいた。


ある日、

私はいつものように子供の部屋を掃除していると、

懐かしい給食の味がした、

もちろん私は何も食べていない、

なんだろうと思いながらも、

あまり気には留めなかった。


そして次の日は、

急に不安と怒りに似たやり場のない感情が心に浮かんで来た。

なぜ急にこんな感情になるのか?

疑問に感じながらも深くは考えなかった。


そんなある日の晩、

私は夢を見た。


ギリシャのどこかの島のような、

真っ白い壁に真っ青な大きなドアがある家の前に私はいた、

私は躊躇しないでその重厚感のある大きなドアを開ける、

中には1人掛けの茶色い皮のソファと、

映画館のような大きなスクリーンがあった。


壁は白で窓は無く、

スクリーンとソファの他に、

小さなテーブルが置いてある、

小さなテーブルの上にはティーポットとカップが置いてある。


私は迷うことなくソファに座った、

少し硬いが皮のヒヤッとした感触が気持ちがいい、

まだ新しいソファだった。


私が座るとすぐにスクリーンに映像が写し出された。


それは私が無邪気に夏の川で両親と妹と遊んでいる映像だった。

その映像を見ていたら、私の中の過去の記憶がよみがえって来た。


私は夏が苦手だった。

8月のはじめはいつも「死」の恐怖に怯えていた。


原因はわからないが漠然とした死の不安、

死んだ後、私の魂はどうなるのか?

そもそも死とは何か?

早く家に帰りたい、という感情もあった、

家にいるのになんでこんな訳のわからない気持ちになるのか?


子供の私には理解出来ない症状で、

不安で眠れない日々が続くこともあったが、

両親には相談出来ず、私は1人で悩んでいた。

毎年夏はこの症状に悩まされていたけど、

こんな悩みも年を重ねるといつの間にか無くなり、

思春期なら誰にでもある一時的な症状だったのかもしれないと、

深くは考えなかった。


そんな昔の嫌な思い出がよみがえり、

心がざわざわした。



そして次の映像が流された。


私は電車に乗っている、

会社の帰りだろうか?

とても疲れた顔をしている。


つづく


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