出会い3
11
ラブと初めて会ったのは、私が盲導犬を探しに訓練所へ出向いたときだった。ちょうど私の持っていたクラスが、朝校門まで迎えに来るようになり半年がたった頃だ。私達がラブの訓練の休憩中に近くへ通ったときだった。
「ワン!ワン!」タタタタタッ
そんな音と共に
「あっ!ラブ!どこいくの!待ちなさい!」
そんな声がした。
「あら、 犬が逃げ出したみたいね。」
「そうなのか?それは大変だね。」
「そんな呑気なこと言ってる場合じゃ無さそうですよ?」
「?どうして?」
「だってこっちに向かってきてるもの…」
そういって妻の気配がスッと低くなった。
するとタタタタタッ、ハッハッハッ、
そんな音と息づかいが聴こえてきた。
「あらあら、いいこねーよしよし」
そんな妻の声と共に、ツンツン、足元に何かがあたった。
どうやら妻は、逃げ出したという犬を撫でるために、しゃがんでいたようだ。
下に手を伸ばすと、何かふわふわしたものが手にあたってきた。
どうやら逃げ出した犬のようだ。
「もう、ラブったら、急にどうしたの…よ?あら?」
どうやらこの子を探しにきた訓練士のようだ。
私は、ラブと呼ばれた犬のふわふわした毛をずっと触っていたかった。
しかし迎えがきたようだ。
「どうもすいません。この子がいきなり飛び出してしまって、止めることができませんでした。いつもはこんなことないんですけど。」
声の方へ向き直ると妻が、
「いえいえ、よくできた子ですね。主人がもうデレデレですよ。」
そんなことを言っていた。
「ほら、あなた、その子を離さないと訓練士さんが困ってるじゃありませんか。」
「いえ、その子あんまり自分から人に向かっていくほどわがままな子じゃないんですけどね。それに、休憩中だから好きにしててって言っても、いつも自分のしっぽ追いかけてるくらいなのに、珍しいなと思ったんですよ。」
そういって訓練士の人は、何かを考えているようだった。
「君は私の目になってくれるのかい?」
そう独り言を呟いたら
「ワン!」
なんと偶然にも返事が返ってきた。
「ははは、頼りにしてるよ、相棒。訓練が終わったら待ってるよ。」
「…ワン!」タタタタッ…
そういってラブと呼ばれた訓練犬は私の手から離れていった。
「あ、ちょっと!らぶ?!もどるの!?お騒がせしてすいません!それじゃあ失礼します!」
ペタペタペタペタ…
どうやら訓練士も去っていったようだ。
「ねぇ、あなた?訓練士さんに何も言わなくていいの?」
「…」
すっかり忘れていた。
「また今度来ようか。」
「そうね、あの子はあなたのクラスが卒業する頃に3歳ってとこかしらね?」
「さぁ、今度聞いてみようか。」
そうして私達は訓練所を後にした。
to be continue...