閑話 ポッキーゲーム
パッと書いた所為で、おかしいところが多々あるかもしれませんが、お許しください。
今日、十一月十一日はポッキーの日だ。
大手会社が、人気商品であるポッキーとプリッツの宣伝を兼ねて発表したのが由来らしい。
詳しいことは俺も知らない。
今日は土曜日、学校は休みなので、朝っぱらからゆっくりできる。
まぁ、出掛ける用事があるんだけどね。
ついでに今は紗奈ちゃんの帰りを待っている。
なにやら友人と買い物に行く約束をしていたらしく、朝早くから家を出ていた。
「ふぅ、まだかな」
颯太はソファーに腰掛け、珈琲を啜る。
颯太はテレビを点ける。
そのまま、颯太は紗奈が帰ってくるまで時間を潰した。
□ □ □ □ □
紗奈side
少し時間は遡る。
朝の七時。
やよちゃんとの約束の時間には少し早いけど、私は家を出る。
「いってきまーす」
先輩の「いってらっしゃい」と言う送りの言葉を聞きながら、私は上機嫌で待ち合わせ場所に向かった。
待ち合わせ場所に着くと、既にやよちゃんは待っていた。
「やよちゃーん!」
紗奈は手を振りながら、弥生に近付く。
「おはよう、紗奈ちゃん」
「それじゃあ行こっ!」
そのまま、二人は目的地に向かった。
「この衣装なんてどう?」
やよちゃんが服を持って奨めてくる。
「うーん、これじゃあ先輩を誘惑できないよぉ」
「んー、どうして誘惑のことばかり考えるのかな」
どうして、とは、やよちゃんも分かりきったこと聞くなー。
「先輩が誘惑に負けて、私と関係を持ったら、そのままハッピーエンドでヴァージンロードまで直行だよっ!」
そのセリフに、弥生は苦笑いを浮かべる。
「紗奈ちゃん、あの先輩のことだからそんな簡単にいかないと思うよ」
「ぶぇ、そんなぁ~」
情けない声を上げる紗奈に、弥生は更に顔をしかめる。
二時間程迷った結果、二人が選んだのは胸元の空いたシャツに、ギリギリの大きさのホットパンツだった。
「これで先輩を誘惑できます!」
「まぁ、程々にしなさいよ」
目を輝かせる紗奈に、弥生は苦笑いを浮かべながら突っ込む。
二人は最後にコンビニに行き、〝アレ〟を買ってから家に帰った。
□ □ □ □ □
紗奈ちゃんが帰ってきて、俺は真っ先にコンビニに向かった。
最寄りのコンビニに着いた俺は、〝アレ〟を買い、すぐに家に戻った。
「ただいま~」
「お帰りない!」
玄関の扉を開けると、リビングから紗奈が出てくる。
いつかの様に、扇情的な格好で。
今回の紗奈は、胸元の空いている薄いピンク色のシャツに、ギリギリ隠せている様な際どいホットパンツといった姿だ。
正直に言おう、エロい。
空いた胸元から、ブラで隠されている筈の胸が見える。
どうやら紗奈ちゃんはブラをしていないようだ。
そして、ホットパンツの端から、ピンク色の布がチラリと見え、直接見えるよりもエロく感じる。
まぁ、女性の下着なんて、直接見たことなんてないんだけどね。
まぁ勿論、そんな格好を俺が許すわけない。
「紗奈ちゃん、普通の格好に着替えてきなさい。ついでにブラも着けてきなさい」
そう言うと、紗奈は唇を尖らせる。
「嫌ですよぉ。お兄ちゃんを誘惑するためにやよちゃんと選んで来たんですよ?」
そう言う紗奈に、颯太は苦笑いを浮かべる。
どうやら、反省する気はないようだ。
「はぁ、しょうがないな。そうだ、今日は何の日か分かってる?」
颯太がそう訊ねると、紗奈はドヤ顔で答える。
「勿論、〝アレ〟の日ですよね」
「そうだ」
そう言うと、颯太はビニール袋から一つの箱を取り出す。
「そう、今日はポッキーの日だ!」
「ですね!」
どうやら、この二人は似た者同士のようだ。
「さて、ちょっと困ったことになったな」
「ですね……」
今二人は、目の前の光景に頭を悩ませていた。
机の上には、ポッキーの箱が十個近く重なっていた。
さて、どうしてこうなったのか、説明しようか。
まず、紗奈ちゃんが三箱買ってきた。そして俺が二箱、この時点では合計五箱だ。これでも十分多いけど。
問題はここからだ。近所の人(隣の子連れの人)から、余ったポッキーを貰ったのだ。
その数なんと八箱。会社の同僚から貰った余り物だと言うが、おかしいだろ。
笑顔で差し出されたポッキーを断れるわけなく、礼を言い受け取ったが、流石にこの量を食べる気にはならない。
はい、説明終わり。
「それで、このポッキーどうしましょうか」
「そうだな。少しくらいなら食べても大丈夫だろうけど」
そう言いながら、颯太は時間を確認する。
時刻は午後三時。丁度おやつの時間だ。
おやつの時間って、懐かしい言い方だな。
「あれですね、今二箱くらい食べて、お風呂入った後に一箱食べましょう」
「それでも十箱残るのか……」
そう悩んでいると、紗奈が口を開く。
「悩んでても仕方ありませんし、食べましょう」
そう言いながら、紗奈は箱を開ける。
「そうだね。食べようか」
そう言い、颯太も箱を開けようとする。
「それじゃあ先輩、食べてくださいね?」
そう言うと、紗奈はポッキーを一本口に咥え、顔を近付けてくる。
そ、それは俗に言うポッキーゲーム!?
ポッキーゲームとは、詳しいことは覚えていないが、二人がポッキーの両端を咥え、少しずつ食べていく、というゲームだった筈だ。
そして最後には口づけ……いやいやいや!アウトだろ!これ絶対駄目なやつだよ!
「紗奈ちゃん、流石にそれは……」
「んー」
「だからね?ポッキーは普通に食べようよ」
「んー」
紗奈は颯太の言葉を聞き流し、ひたすら颯太が反対側を咥えるのを待つ。
そして、颯太はあることに気付く。
紗奈の胸が完全に見えていた。
今、紗奈は前屈みになっており、それに加え胸元が空いたシャツとなると、見えてしまうのは当然だ。
これなんてラッキースケベ!?
颯太はすぐに紗奈から視線を逸らす。
紗奈は一旦ポッキーを掴み、口を開く。
「お兄ちゃん、早くしてくださいよぉ。チョコが溶けちゃいます」
「そ、そう言ってもなぁ」
「しょうがないですねぇ」
そう言うと、紗奈は持っているポッキーのチョコの部分を舐め始めた。
その光景がとても艶かしく、颯太はすぐに止めさせる。
「それじゃあ、ポッキーゲームしてくれますか?」
その言葉に、颯太は頷く。
「それじゃあどうぞ」
そう言うと、再び紗奈はポッキーを咥える。
颯太は躊躇いながらも、ポッキーの反対側を咥える。
瞬間、紗奈が物凄い速さでポッキーを食べ始めた。
「んっ!」
颯太は唇が触れるギリギリの瞬間にポッキーを折って食べる。
作戦が失敗した紗奈は、頬を膨らませ颯太を睨む。
「なんで逃げたんですかっ!」
「そりゃ逃げるよ!あと少しで唇が触れそうだったじゃないか!」
颯太は大声で反論し、ポッキーを一本一本食べていく。
紗奈も諦めたように、ポッキーを食べ始める。
「美味しいですね」
「そうだな」
そのまま二人は、黙々とポッキーを食べる。
そして、紗奈が最後の一本を食べる。
颯太はゴミをゴミ箱に投げ入れると、席を立つ。
「それじゃあ、俺は部屋にもど──」
颯太の言葉は最後まで発せられなかった。
颯太は一瞬何が起きたのか理解できなかったが、すぐに気付く。
颯太は、紗奈にキスされていた。
先程までポッキーを食べていたから、紗奈の唇は少し甘い味がした。
紗奈は唇を離そうとせず、そのまま颯太の口に咀嚼したポッキーを流し込んだ。
それから颯太の唇を一舐めすると、紗奈は唇を離す。
「えへへ、〝先輩〟の唇甘いですね」
紗奈は頬を赤く染め、いやらしく舐めずりをしながらそう言う。
その姿が、颯太にはとても扇情的に見えた。
颯太は流し込まれたものを飲み込み、口を開く。
「ちょっと!?」
「どうですか?私がよぉく噛んだポッキーは」
紗奈は戸惑う颯太に、悪魔のような笑みを浮かべ訊ねる。
「そ、それは……」
「それはぁ?」
「言えるかっ!」
「あふんっ♪」
颯太は紗奈の頭を軽く叩く。
上げられた声から、全然痛がっていないのは分かりきったことである。
「俺はもう部屋に戻るから!」
「それは、部屋でゆっくりねっとりポッキーゲームをしよう、という誘いと受け取ってもいいですか?」
「ダメですっ!」
そう言うと、颯太はリビングを出た。
部屋にはいると、颯太はすぐベッドに飛び込む。
「あぁぁぁぁぁ!なんで紗奈ちゃんはああいうことやってくるかなっ!?」
思い出すのは、紗奈の唇の感触と、流し込まれた咀嚼物の生暖かさ──
「って、だから違うっ!」
颯太は枕に頭を何度もぶつけ、先程の出来事を忘れようとする。
だが、そう簡単に忘れることはできず、その後気まずい雰囲気のまま夕食を食べた。
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