限界
グレッグス、あいつの名前。
ブサイクで太ってる。あんな奴に私達の生活を破壊されたのは悔しい。
そしてあいつは私達のことをペットなんかにするらしい。
絶対嫌、あんな奴のペットなんかになるもんか。エリーを連れて早く何処かに逃げなきゃ!
あいつの家から脱走してやった。
遠くに逃げないと。
走ってる最中エリーが転んで足を挫く。
うぐ、お、お姉ちゃん、どうしよう、い、痛くて歩けないの
お姉ちゃんに任せなさい
エリーおんぶして歩く。遠くに行く乗り物を探す。
そして馬車乗り場を見つける。
ここがどこだかわからないけど、遠くに行けるならそれでいい。できれば故郷に帰りたい。
「お前ら、お金はあんのか?」
お金...ポケットの中に少しだけお小遣いが入っていた。
「こ、これで足りる?」
「...おう、くく、じゃあのりな」
お小遣いが無くなった。でもこれで逃げられるならそれでいい。馬車に乗りすぐエリーは寝てしまった。膝枕をしてあげる。
「はははっ、馬鹿な獣人のガキだ、こんなに金を貰えるなんてついてるなお前!」
「おい、お前聞こえたらどうすんだ!」
「おいおい、獣人のガキになにができるっつーの」
「それもそうだな!ぐへへ」
っ!?嘘...そんな、酷いよぉ......
王都に着いた。
「達者でな!」
大人の人に騙された。
「...ば、馬車のお金、か、返して」
勇気を振り絞り言う。
「あぁ!?」
怒鳴られる、怖い。恐怖で立ち竦む。
「ひっ」
「獣人のガキの癖に生意気言ってんじゃねぞ! 乗せてやっただけ感謝しろ!」
な、なんで......そんな。
「お、お姉ちゃん」
服の袖をぎゅっと掴まれる。
エリーには心配掛けさせたくなかった。
「い、行こ、エリー」
「う、うん......」
これ以上情けない姿を見せられない。
私はエリーにとって、頼れる姉でなくちゃ。
それから数ヶ月。
王都で生活してわかったこと、それはここでは獣人はいい目で見られないことだ。
色々意地悪をされる。だから私は魔法を使った。十歳の時自分の姿が変わる魔法をママに習わされた。十三歳になった私はもう完璧に使いこなせるようになった。
エリーは十一歳だがまだ使えない。魔力の少なくエリーには厳しかった。
それから、ボロ家を何とか借りた。
生活費は私が働いて稼いだ。様々な店の雑用として一生懸命働く。魔力と体力を使う日々、疲れた私を狙う変態が現れた。そいつらを利用すると食費や生活費が浮く。
罪悪感はかなりあった。でもたかが変態、ロリコン野郎なんていい財布だ。
そうやって、人をコケにして頑張ってきた。
もう立派ではなくなってしまった、褒めてもられなくなってしまった、けれど頑張る。
エリーのために。
いつもの仕事帰り、雑用としてコキ使われた私はヘトヘトだった。
この前のカモから頂戴したお金で何か買って帰るとする。
大通りに行くと、いい匂いがする。
パン屋さんだ、美味しそう。
眺めていると、子供連れの家族が現れる。
ねぇパパ! あのパン食べたい!
パパ......
最近お勉強を頑張ってるしいいぞ!
私の方が頑張ってる、つらい。
何でも好きなもの買ってあげるわ
ママ......羨ましい。私じゃ沢山買えない。
ありがとう、パパ、ママ!
会いたい、パパとママに、寂しい。
昔のことを思い出し、ボーッとしてしまう。
旅人がパン屋に入って行った。ぼんやり見る。
買ったパンをくれた。優しい人だ。
でも、ごめんなさい、あなたの優しさを利用させて。私はもう、疲れてきたの。
攫われて、助けてもらって、心配されて、頭を撫でられた時、私は限界だったことを知る。
短い間一緒に居ただけでチョロさと優しさが骨身に染みてくる、そんな人が私の救世主になりえる存在となった。
しんどくて、つらくて、寂しくて、怖くて、悲しくて、疲れ果ててしまった私を助けてくれるかもしれないと。
あぁ、チョロいのは私だ。




