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23 デュナミス


 罠の設置が終わり、少し離れた地点にある鍾乳石が乱立する場所に身を隠す。いつ奴が戻ってくるかは分からないので交代で見張ることにした。魔物狩り大会の参加者のほぼ全員が一層に集中しているうちにケリをつけたいが。


「……何と言うかぱっと見、事件現場だよねこれ」

「……確かにな」


 仕掛けた罠の完成度に、自分たちで用意しておきながら若干引き気味だ。

 なんせ本物そっくりの人の死体(マルタと俺の合作)に、消臭もかねて大量にぶちまけた動物の血(俺の案)、興味を引くように製作した生首(造形したのはトリシャ)と、第三者に目撃されようものなら誤解待ったなしの惨状である。


「明かりもつけない方が良い。デュナミスは自力で発光するからすぐにわかる」


 しかしマルタだけは眉一つ動かさない平静さで、流石だと思った。

 

「そうだね。でも真っ暗になるのは少し怖いかも……」

「じゃあ厚い布か何かを被せるのはどうだ? 光量も抑えられるし、明かりが消えることもない」

「……それは妙案。でも注意して」


 俺は(アイテムボックス)から適当な布切れを取り出し、トリシャの杖にかけてみる。確かに暗くはなるが、真っ暗になるよりはマシな程度の光源は維持できた。漏れる光の強さもかなりカットされているので大丈夫だろう。


「後はひたすら待つ。それだけ」


 そう言ってマルタは岩肌に身を預け、瞑目する。俺もステータスを開き、グルメ山を登った時にシィナから貰った酒鮭の残りを咥えて齧る。




≪スキル≫


【魔法】


 ・ブルーヴァーヴ


 ・アイシクル・テイラー


 ・スノウドリフト


 ・シムラクルム



【魔眼】

 

 ・枯渇の瞳(ハロウ・ゲイズ)


 ・死線の瞳(バロル・ゲイズ)


 ・劇毒の瞳(ヴェノム・ゲイズ)


 ・死冷の瞳(グレイヴ・ゲイズ)


 ・永久の瞳(ナイト・ゲイズ)


 ・縛鎖の瞳(ヨーク・ゲイズ)


 ・赫怒の瞳(レイジ・ゲイズ)


 ・呪殺の瞳(ノクシアス・ゲイズ)


 ・魅入りの瞳(アリューアー・ゲイズ)


 ・昏睡の瞳(レザージー・ゲイズ)


 ・石鳥の瞳(ダスク・ゲイズ)


 ・衰亡の瞳(キラン・ゲイズ)


 ・異貌の瞳(ミューテイト・ゲイズ)


 ・固化の瞳(スティフン・ゲイズ)


 ・時停の瞳(ホワイル・ゲイズ)


 ・鹵束の瞳(ボンテージ・ゲイズ)


 ・困惑の瞳(ファドゥル・ゲイズ)


 ・狂乱の瞳(マッドネス・ゲイズ)


 ・操りの瞳(ハック・ゲイズ)


 ・亡奴の瞳(サーヴァント・ゲイズ)


 ・夢幻の瞳(ベーゼン・ゲイズ)


 ・鈍動の瞳(ターディ・ゲイズ)


 ・凄烈の瞳(タイラント・ゲイズ)


 ・天弓の目(スター・ボウ)


 ・司界(ガバン・サイト)



【抗体】


 ・麻痺耐性 


 ・即死耐性


 ・毒耐性 


 ・凍結耐性 


 ・睡眠耐性


 ・封じ耐性


 ・炎上耐性


 ・呪い耐性

 

 ・魅了耐性


 ・催眠耐性


 ・石化耐性


 ・老化耐性 


 ・変化耐性


 ・硬直耐性


 ・停止耐性


 ・拘束耐性


 ・混乱耐性


 ・狂気耐性


 ・洗脳耐性


 ・不死耐性


 ・幻惑耐性


 ・スロー耐性


 ・恐怖耐性 


 ・吸収耐性



 また適当にボードをいじくり回していたら、直近で覚えたスキルとその関連のみを出せる機能を発見した。覚えた数が多くなってきたので一覧にズラッと並べるのは、色々とめんどくさいから重宝するだろう。

 当然ながら殆どが耐性系とアルアインの魔眼系だが、他にはグルメ山の狼王のスキルもある。主に氷属性の魔法系スキルで、ヨルムンガンドのガンマ対策に役立つはずだ。……尤も、これだけ状態異常を引き起こすスキルが充実しているなら、正面切って戦うより搦手でハメた方が楽だと思うが。


 口先で弄んでいた酒鮭が無くなったので、二個目を取り出そうとした時だった。視界の端に微光がチラつく。

 トリシャの明かり……ではない。


「来た」


 いつの間にかマルタは目を開け、戦闘態勢にシフトしていた。真っ暗闇の奥から人魂のようにユラユラと光ながら近づいてくる。やがてその光輪の中から次第に姿が形作られ、ビリビリと歪んだエネルギーを滲み出す。

 悪魔とも天使とも似つかない翼と、異様に長い腕。足やそれに準ずる部位はなく、常に空間を漂うのは幽体系の魔物の特徴だ。

 間違いない、デュナミスだ。


「上手く引っ掛かるかな……」


 トリシャも岩陰から祈るように見守っている。罠を仕掛けた場所は以前、あいつが盛大に死体をバラして血の海になった所だ。こちらの臭いも可能な限り消したし、師匠から教わった狩りの手順は全部こなしてある。

 奴は設置されたダミーの死体を見つけると、ゆっくりとだが着実に近づいていく。


「かかった」


 マルタの呟きと同時。

 魔法陣がデュナミスの足元で輝く。罠が作動した。必殺の戸板落としが奴の頭上から襲い掛かる。洗礼を受けた銀のスパイクが身体を捉えた。


「―――!!」


 形容し難いデュナミスの絶叫。払い除けようと暴れるが、スパイクと同じく聖なる施しを受けた重しはビクともせず、奴を地面に押さえつけていく。

 それに抗おうと腕を縦横無尽に乱舞させ、逃れようと凄まじい抵抗を見せつけるデュナミス。あまりの気迫に一瞬罠が破壊されるのではと用心を強めるも、その抗いはじきに弱まってきた。伸ばした手が力なく落ち、小刻みに痙攣して動かなくなった。


「……死んだの?」


 杖を構えたトリシャがおずおずと様子を覗き見る。


「分からない。でも兄の作った魔物は、しぶとく狡猾」

「だよね、分かってるよ」


 首にぶら下げたロケット型のペンダントをぎゅっと握るトリシャ。

 そうだ。あんな悲劇はもう起こさせないし、繰り返しちゃいけないんだ。


「さっさと起きろよ、クソ野郎。死んだフリは通用しねぇ」


 俺に小細工など無駄だ。ステータス鑑定すりゃ、生死の判別なんて一発なんだよ。ヴェルトヴァイパーの柄に手をかけ、最大級の警戒心を向ける。


「………」


 ピクリ、とデュナミスの指先が蠢いた。

 バン! と大きな音を立てて、奴の躯体に圧し掛かっていた戸板が吹き飛ばされ、俺たちのはるか後方で落下する。


「やはり……一撃では」


 舌打ちと共にマルタはゴーレムを起動させた。それを合図にデュナミスも立ち上がり、両腕と翼を限界まで広げ、


「―――――ッッッ!!」


 悍ましい咆哮を発する。おー、こりゃ激おこだねぇ。


 獣を狩る時は一撃で、もししくじったら絶対にその場で倒せ。手負いの獣は自分を傷つけた敵の姿を決して忘れない。どこまでも付け狙い、必ず命を奪いに来る。

 ……師匠がいつも口を酸っぱくして言っていた事を思い返す。


「仕方ない、みんな。やるぞ」


 俺の問いかけに、トリシャとマルタは勇ましい面持ちで反応してくれた。

 さあ、タルタロスとノイスガルドを騒がせてくれた化け物退治と行こうか――!


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