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市井の哲学者(ニーチェの場合)

作者: 哲学青年

寒風吹き荒ぶ冬の朝、窓の桟には霜すら降りている。現在の時刻は午前8時。外には子供達の登下校する姿が見えた。しかし、未だにその男は布団から出られず、140文字以内で何でも呟けるコミュニケーションアプリに呟くくらいの行動しかとれていなかった。

「寒い…寒すぎる、日本の冬なめてたわ」

彼の名は

「フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ」

超人思想やニヒリズム、神は死んだ、で有名な故人である。彼は今、あの世から現代の日本に来ている。なぜ、縁もゆかりもない異国へ行かなければならないのか、しかもなぜ、日本なのか、彼には分からないし恐らく神にもわからないだろう。要するに気まぐれなのである。

だから勿論やることもない、そしてそれと同時にやりたいこともない。彼は呟く以外にやることがないのである。

しかし、たまには呟くアプリ以外の情報源に触れようと彼はテレビをつけた。今日も下らないバラエティーしかやっていない。彼はため息をついてニュースにまわした。

ニュースでは祖国の首相が何かを話しているようだった。

「メル●ル<大量破壊兵器>め…」

彼は、祖国を悪い状態に持っていく彼女が嫌いだった。

それにしても今日は寒い。彼は少しでも体を暖めようと、くたびれた茶色いスーツを身にまとい、外へと繰り出した。



 図書館…ここは彼が世界で二番目に好きな場所だ。因みに一番はこたつの中である。

彼は今日ここで興味深い本を見つけた

それは、自分の妹エリーザベトが自分亡き後その著作をナチスに売った旨の書いてある本だった。

最初信じられなかった彼だが、ネットで調べたり、キッズ御用達の、一問一答形式で質問(大喜利)に答えてくれるサイトで尋ねたり、世界で最も信頼できるな⚫Jに尋ねたりしたが全く同じ答えだった。

彼の言いつけを一つも守らないどころか、くだらないナ●公などに自らの著作を売りつけた妹に寂しさを感じないでいるのは不可能であった。しかし、あまり売れない本を書き続けてきた自らを兄として人として尊敬し、そして、癲狂の最中にいる自らを死ぬ間際まで看てくれた妹には感謝の念を持っていたため、怒ることまではできなかった。


 その本をあらかた読み終わり、自分の建てたスレへの返信を終えると、もやもやとした気持ちのまま彼は、フラフラと生前の日課であった散歩の続きをするために図書館を出ていった。

「さようならエリーザベト…嫌いではなかった」

そう言いながら…。


続く…。

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