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新天地

月島に連れられて、洸は八箕山付近の洞窟の中に入った。

そこには、目を見張るような光景があった。美味しそうな食べ物がある屋台。そして、そこから聞こえる人々の歓声。

こんな山奥なのに、こんなに栄えているとはつくづく驚いてしまった。


「どうだ、洸。ここはユートピアだろ?」

「はい。雄雅さん。連れてきてくれてありがとうございます。」

「まぁ、今日から暫くはここで暮らしてもらうことになるが、良いか?」雄雅はきく。

「えっ!そうなんですか?」洸は驚いてしまった。今まで施設の中で窮屈だったが、楽しい中で生活していたのに、いきなり見知らぬ土地で暮らすことになってしまったからだ。


「安心しろ。ここには悪い人たちはいない。皆、孤独を感じているんだ。勿論、俺も孤独だよ。世間では除け者にされ、心理カウンセラーという一人で活動できる職に就いたんだ。人間というものを観察して、進むべき道を明らかにさせる。そんな俺が全く、変なことだよな。」


「月島さんにも、そんな事があったんですね。」洸は熱心にその言葉を聞いていた。


「あぁ。そうだよ。俺と同じように周りに溶け込めない人はいるだろうて、ここを作ったんだ。最初は皆…勿論、俺もだが、信じるのが怖かったよ。でもな、共に働き、修練を積むことによって絆が生まれた。洸!お前も恐れるな。」月島は彼を諭した。

「はい!月島先生。僕もここで頑張ります。」洸は、月島に元気よく答えた。


心に重い傷跡を刻み込んでいる月島は、優しいその素顔の裏で、様々なことを経験していた。幾度の裏切りにあって、人間不信となり、彼は大半の物事を一人でやっていた。しかし、果たしてそんな事で良いのだろうか。

そう思って、似たような境遇の人達で街を作ったのだ。

世間の人々は逃げだと思うかもしれない。

否定されることなく、自由に生きるこの村を。


しかし、月島は気づいたのだ。誰にも理解されないと深く感じることが、自殺する原因の一つであると。

周りに自分のことを受け入れる人が居ないと絶望し、自分を様々な方法で死に至らしめる。

ある人は酒を煽り、急性アルコール中毒で死に、ある人は首を吊る。

少子高齢社会が益々進むこの世の中で、死ぬ若者世代を救うためには、自分が受け入れられる社会を作ることだ。

そう思ったのだ。しかし、国はあまり動けなかった。

そして、小回りの効く村で直接、その社会を実現したのだ。


「さぁ、洸。まずは、昼飯でも食べようか。」

「月島先生。奢ってくれるんですか?」

「あぁ。勿論だ。ここでは、俺がアンタの保護者だぜ。」

「先生。ありがとうございます。」


二人は店を探しに行った。







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