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和葉さん

作者: 西瓜

 この学園には有名人がいる。


 容姿端麗。

 頭脳明晰。

 スポーツ万能。

 性格も良く。

 親はとある大企業の社長。


 正に乙女ゲーや少女漫画の王子様のような存在。

 こんな好物件、女子が放っておくわけはなく、告白するものは後を絶たず、下駄箱には常にラブレターで一杯だった。

 だが誰も彼らの心を射止めることが出来なかった。


『彼等』

 そう、この有名人は一人ではない。

 隆司と敦司、二人は一卵性の双子だった。

 交際を申し込まれる際、彼らは必ず一つの条件を提示した。

『自分達のどちらが隆司でどちらが敦司かを見分けることが出来る女性と交際する』と。


 この二人、本当にそっくりだった。

 顔は勿論のこと、趣味嗜好から、しゃべり方、歩き方、ちょっとした仕草まで似通っており、一説には実の両親でさえ見分けることが困難だと言われている。

 たちの悪いことに、彼らなりの茶目っ気なのか、たまにお互いの服を交換したり、教師も見分けがつかないことを良い事に入れ替わって授業を受けるなどするので、ますます分かりずらくなる始末。


 まず彼らのどちらかにでも告白した女子は、こう質問される。

「どっちが隆司でどっちが敦司?」

 この時、運よく正解を引き当てることが出来た人は、しばらく彼らと『お付き合い』ができる。

 ただし、その間も彼らは事有る事にどちらが隆司でどちらが敦司かを質問してくる。

 結局どの娘も二人がどちらか見分けがつかなくなり間違えてしまう。

 そして彼らは質問に一回でも間違えば、どんなに仲が良くなっていようとも、その時点で恋愛の対象外とし見向きもしなくなる。

 この厳しい試練に何人もの乙女たちが涙した。


「「俺たちはただ俺たち自身を見てくれる人が欲しいだけなんだ」」


 彼等はそう言って今日も今日とて手ひどく女性を振り傷心の女子を量産していた。

 誰もが、この双子どうにかしろよと思っていましたが、下手に優秀で家もお金持ちなこともあり誰も何も言えない状況だった。

 だがある日、一人の女の子が彼らに近づいた事で変化が起きた。


 水野 和葉(かずは)と名乗るその娘は何気なく二人を言い当てたことが切っ掛けで二人に興味を持たれるようになった。

 それ以後、双子は様々な状況で彼女に「どっち?」と言う質問を繰り返したが和葉はけして二人を間違えることはなかった。

 おかげで双子はすっかり彼女にメロメロな状態。

 常に和葉の周り侍り彼女に愛を囁くようになった。


「「ねえ和葉どっち?」」

「右が隆司君で左が敦司君」

 今日も今日とて二人の質問に和葉は的確に答えてゆく。

「「正解だよ!やっぱり和葉はすばらしいね!!」」

「そんな事ないわ、二人をよく見ればわかることよ」

 そう言ってはにかんだ様に笑う和葉の姿に二人は骨抜きだ。


 双子は密かに目くばせすると和葉の足元に騎士の様に跪き。

「「好きだ和葉」」

「隆司君……敦司君……」

「「今まで、こんなにも俺たちのことを見てくれた人は居なかった、俺たちのどっちを選んでも恨まない、だからどうか俺たちの気持ちを受け取って欲しい」」

 二人の真剣な表情に和葉も二人が冗談で言っているのではないと感じ神妙な表情で。

「分かったわ、二人とも」

「「和葉!それじゃあ!!」

「でも一つだけお願いがあるの」

「「願い?」」

「ええ、それさえ叶えてくれたなら私も二人の事、真剣に考えるわ」

 和葉は今まで二人に自分から近づいてきた女性とは違い、むしろ双子のほうから和葉に近づいていったようなもの。

 ならば自分達も彼女の要望に応えるのが筋と言うものだと、双子は頷きあい。

「「分かったよ和葉、和葉のお願いは必ず叶えてみせるよ!!」」

「二人とも!ありがとう!!」

 双子の言葉に感動した様子の和葉はポケットから携帯を取り出すとどこかに一斉にメールを送信し。

「二人に会ってほしい人達がいるの」


 そうして彼らの前に現れたのは。


「初めまして、水野家次女の若葉(わかば)です」

「同じく水野家三女の紅葉(くれは)!」

「四女の瑞葉(みずは)だよ」

「五女の四葉(よつば)……」

「六女の弥真葉(やまは)

「そして長女である私、和葉が加わって」

「「「「「「人呼んで!水野家六つ子姉妹!!」」」」」」

 同じ顔が六つ並んでいた。


「「え……」」

「隆司君、敦司君、二人ならきっと私達の見分けも付くよね?」

「「え……え?」」

「あ、でも私達は六人だから三回まで間違えてもいいよ」

「「えええええええええ!!」」

 こうして、双子にとっての試練が幕を開けたのでした。



 人物紹介


 長女

 水野 和葉

 転生者などではないごく普通の女の子、でも六つ子。

 美少女というほどではないが、優しい顔立ちの可愛い子、でも六つ子。

 性格は思いやりがあって責任感が強く優しい乙女ゲーや少女漫画のヒロインの様な性格、でも六つ子。

 長女故、妹達の面倒を見ている内に本人も気付かない内に鋭い観察眼を習得する。

 双子を見分けられたのは、そのおかげ。


 次女

 水野 若葉

 六つ子の中では比較的おとなしく礼儀正しい娘。


 三女

 水野 紅葉

 六つ子の中では元気担当。

 結構食いしん坊。


 四女

 水野 瑞葉

 実は腐女子。

 姉の恋人候補に会った瞬間脳内で。

 隆司×敦司、敦司×隆司

 等の掛け算を行っている。


 五女

 水野 四葉

 五女なのに四葉(ややこしい!!)

 クールに見えて寂しがりやで若干シスコン。

 双子が間違えたら容赦なく駄目だしするつもり。


 六女

 水野 弥真葉

 特にバイクが好きというわけではない。

 自分の名前だけ三文字なのが気に食わない。



アニメの、おそ松さんを見て不意に思いついた話。

双子物の定番であるどちらかを見分けると言うのを逆に彼らにやらせたらどうなるのかと思って書いてみた。

なお、双子の心境を一言で言い表すと。

「「シェーーーーッ!!」」



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