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「圏外」と「圏内」

 世の中そうやすやすとうまくいくもんじゃない。崩壊したこの世界だってそれは同じだ。希望の前にはいつも絶望が立ちはだかって、なんとしてもこの先には行かせまいと残り僅かな俺たちの希望をへし折りに来る。今回の旅路はそういうもんだって分かってた。

 

 でも、これはないだろう。


 自分がいま立っているのかも、倒れているのかもはっきりしていない。左目の視界は視力を失ったように見えない。もしかしたら本当に潰れているのかもしれない。

 内臓までボコボコに痛めつけられているのかさっきから血反吐しか吐いていない。胃の内容物は既に全部ぶちまけた。絶えず襲い掛かる衝撃で口の中を切りつけながら折れた歯が転げまわっている。鉄の味が喉に熱く絡みつく。

 立ち上がるために地面に押し付けた手もことごとく踏まれ、その足をゴリゴリと押し付けられる。自分の情けない悲鳴があがるも、悲鳴を上げることさえ許してくれないのか、あごを思い切り蹴り上げられ舌が切れる。舌が切れたのはもう何度目だろうか。

 その衝撃の所為かどうかは分からないが意識も朦朧としてきた。立ち上がらなくては。このままでは大事なものが守り切れずに終わる。

「恭兄ぃ!」

 顔面からのおびただしい出血、沙織の悲鳴とともに炸裂した右目への蹴り。視界と意識が同時に失われた。



 そもそもなんで俺はこんなことになっているんだっけ。ああそういえば、



 よく考えてみれば昨日の今日でここを往復していることになる。昨日は道に慣れるためだったと思えば無意味ではないが、疲労が昨日とは段違いだ。その上結構な荷物もある。かかる時間は二倍、かかる負担は三倍くらいだろうか。それでもこうして昨日のビルまでたどり着いた。

 夜も更けて東にあった月が西に傾いている。満点の星空も月明りにかき消され、その月明りも沸き立ち始めた雲で時々その身を隠している。

「明日は曇りかなぁ」

 空を見て呟く沙織とともに、荷物をその場に置いて上に座る。中身は缶詰やボトルだ。座り心地は最悪だがこれ以上立ち上がる気にもなれない。

「曇れば日中も行動できるんだけどな」

「カンカン照りだったらまたこの場所でゆっくり休みながら夜まで待ってようよ」

 今夜はここで野宿だ。屋内に入る勇気は到底ない。入り口付近にいても中からの冷たい空気がまとわりつくのだ。闇の中を見つめていると頭の中まで闇にとらわれそうだったので目をそらした。

 極限に眠いと人間はどこでも寝れるもので、背中に缶詰の固い感触を覚えながらでも眠れそうだった。

「沙織、ごめんもう無理、寝る」

 接続詞は眠気に持っていかれた。導かれるかの如く目を閉じる。

「分かった。お休み恭兄ぃ」

 沙織の声が聞こえた瞬間、腹部に重い何かがのしかかる。目を開けると人のお腹を枕にする不届きものの姿があった。沙織の頭と背中に当たる缶詰に鈍い痛みを覚えながらもその日はすぐに眠りについた。


 日が昇って時間も経たない頃、柔らかな白い光に自然と目が覚めた。体を伸ばすと昨夜の背中の鈍痛が刻み込まれていることに気づく。負担をかけたあの不届きものには制裁を加えねばなるまい。さてどこへ行った。

「沙織?」

 お腹の上にも見渡した周囲にも沙織の姿はなかった。捜索のため立ち上がる。

 昨日願った通りには行かずに、今朝は晴れている。ところどころ雲の影もあるから日中も晴れと確定したわけではない。今日一日寝ていたっていいのだけれど、その分食料や水がなくなってしまうのだ。進めるなら先へ進みたい。

 振り返って見上げる寂れたビル。沙織はこの中だろうか。


 ビルの中は相変わらず薄暗く寒い。まだ外にいた方がマシなくらいだ。屋上への階段へと早々に足を進めて勢いよく登る。二段くらい飛ばしていくと背中の鈍痛がここぞとばかりに自己主張を始めるが、早く階段を登り切ってしまいたい思いもあって息を切らしながら屋上へと急いだ。

「おはよ恭兄ぃ」

 扉を開けると沙織がそこにいた。糸が切れた人形のようにその場にへたりこむ。

「どっか行っちゃったのかと思ったよ。っていうかよく一人で来ようと思ったな」

「心配してくれたんだ」

 沙織はにやにや笑うのが得意らしい。にやにやといっても憎たらしさ0%、怒る気にもなれない絶妙な表情だ。

「肩貸してよ」

「冗談でしょ?」

「大まじめです」

 それはたぶんまじめって言わない。引きずられるようにしてこの前のように肩を貸す。背中が悲鳴をあげた。「っぐぁっ・・」同時に俺も鈍い悲鳴をあげた。

 それからまた沙織に手を貸してもらいながら上へと登る。

「ちゃんと見えるね」

「まだまだ遠いなぁ・・」

 同じ方向を見ながら各々の感想を述べる。まるで影のように淡く地平線に描かれたビル群。朝の風がどこからか連れてきたのかさっきよりも雲の数が多くなってきた。

「今日は暑くなさそうだしむこうまで行けるかな」

「うん。できれば今日のうちに着きたいな」

「そうと決まったらご飯食べて出ようよ」

 

 下に降りて食事を済ませたあと俺たちはすぐに出発した。この瓦礫の山を越えて無事にあの場所へとたどり着けることを祈りながら、前だけを見据えひたすらにその足を進めた。



 それから何時間歩いただろうか。結局その日のうちにたどり着くことはできずに、未だに俺たちは瓦礫の上。疲れ果てお互い交し合う言葉もない。

 今日は一日中曇っていたので月明りも望めそうにない。真っ暗な中歩き通しなのも避けたかったので日が暮れてすぐに見つけた周囲六メートルほど開けた場所で休むことにした。沙織は疲れたのか横になるとそのまま眠ってしまった。

 あのビル群の位置をもう一回確認しようと最後の力を振り絞って近くにあった瓦礫の山を登る。ここいら一帯に入ってから遠くの景色を望むことさえ困難になるほど積み上げられた瓦礫で埋め尽くされている。歩いている最中は位置を確認する気にもなれず、道なき道の中であの場所へと続く道を探し求めていたのだった。

 

 瓦礫の山を登っている最中で気づいた。今は暗いからあそこが見えるわけないじゃないか。労力を無駄になってしまうと虚しいのでそれでも登り続ける。目の前の景色を覆い隠すような瓦礫によじ登った後、俺は息を飲んだ。


「明りだ・・」

 今朝見えていたビル群一帯が光を帯びているようだった。つまり、あそこにはたくさんの人がいる。「やった・・やったぞ・・!」気が付けば声に出して喜びを噛みしめていた。

 光が教えてくれることはもう一つあった。光を放つのはどうやら「奥」の方だ。突き出したビルの前に光を帯びていない大きな壁のようなものがある。壁は光と闇を隔てるように延々と広がっていた。文字通りあの壁を突破しなければ都市の方には入れないということだろう。

 そもそもあの壁が何を隔てているのかさえ不明だ。明日、あの下まで行けば分かるのだろうか。

 色々な思考が廻ったがどれも解消せずに募っていくばかりなので今は光を見つめることだけに集中した。




「きょーにーーーー!」

 遠くから聞こえる沙織の声で目が覚める。起き上がると随分景色が良かった。そうか、あのまま寝てしまったのか。

「沙織ー!すまん!ここだ!」

 下でうろうろしている沙織に声をかける。

「おはよー!馬鹿は高いところが好きって聞いたけどー!」

 昨日と立場が逆になっただけって気づいてるのかあいつは。


 曇り空は昨日よりも色濃い。朝かどうかも判断しかねる。とりあえず今日も時間を気にすることなく進めそうだ。今日中に着かないと時間が経つごとに軽くなっていくバッグもとうとう空になってしまう。ゆっくりと瓦礫の山から下りて沙織のもとへ向かう。

「さぁ、恭兄ぃ!今日も頑張って歩きましょう!」



 あらゆる道はどこかに繋がっている。確かそんなニュアンスの言葉を聞いたことがある。どこかってのは地名だったような気もするけど、自分がどの国に生まれたのかも定かじゃないような世界だ。「どこか」はどこだっていい。

 

 そして今の俺たちにとっての「どこか」が目前まで迫っていた。

 昨晩遠くから見えた見上げるほどの壁。十五メートル以上はありそうだ。壁の前にはしっかりと形を残している家々が所狭しと並んでいる。道には人々が行き交い、家には明りもついている。

 

 今日も重たい曇り空の中を一日中歩き通しだった。沙織に昨晩見た光る街のことを話すと疲れが吹き飛んだようにペースアップし、日没前にはこの街に着くことができた。

「街だよ恭兄ぃ!私たち以外にもまだ人がいたんだね!」

「ああ、まさか今日中に着くとは思わなかったけどな」

 代償は棒になった足だ。叩かれたらへし折れかねない。

「・・とりあえずどっかで休みたい」

「だよなぁ。とりあえずいろいろ聞き込みしてみるか」


 街の規模は俺たちのいた瓦礫の街とは段違いだ。二十分も歩けば全部の家を回れた俺たちの街とは違い、どこまでも壁を取り囲むように家が連なっている。しかし街を行く人々の格好は俺たちとそう大差ないようだ。その表情にも懐かしささえ覚える。

「何かお困り?」

 辺りをキョロキョロしていると女性が話しかけてきた。年は自分より一回り上くらいだろうか。

「あまりこの辺じゃ見ない顔だけどどのあたりから来たのかしら」

「えーっと、私たちあの瓦礫のずっと奥の方からここまで来たんですけど、とりあえずどこかで休みたくって・・」

 沙織が指さす方向を見て女性は少し驚いている様だった。

「瓦礫の向こうって・・あっちの方にも人がいるの!?・・ああごめんなさい、ちょっと失礼なこと言っちゃったわね」

「いや、いいんです。俺たちもこんなところに街があるなんて下手したら死ぬまで知らなかったかもしれないんですから」

「それはすごい偶然だったのね・・。ああ、お休み処だっけ。私、主人と一緒に食堂を営んでるの。よかったら家に来ない?必要だったら宿も貸してあげられるから」

「いいんですか!?やったね恭兄ぃ!」

 ピョンピョン跳ねながら喜ぶ沙織。まだそんな体力があったのか。


 夕闇の中を女性の後に続く途中、色々な話を聞いた。

 この街には名前が無いという。もっと言ってしまえばこの壁より外側にある街には名前など存在せず「圏外」と呼ばれて一括りにされているらしい。俺たちの居た街ももちろん圏外だ。そう呼ばれる所以も圏外の人間には分かっていないらしい。

 壁の存在理由も詳細には分かっていないが、圏外と圏内を隔てていて自由に出入りができないことから見ると圏外の人間を隔離するために存在しているのではないかと考えられる。

「じゃあ、俺たちここで行き止まりってことですか・・」

「・・そうなるわね。残念だけど・・」

「どうにかして入れないの?」

 女性は俺と沙織を一瞥して「ごめんなさいね」とだけ告げた。


「ご馳走様でした!」

 出された食事は七分くらいで沙織の胃の中へと消えた。俺の皿の上にはまだ半分以上も残っている。

「お気に召さなかったかしら・・・?」

「いえ、そんなことは全然なくて・・ただ・・」

 さっきから処理できない問題がぐるぐると頭をめぐり続けている。

「しょうがないよ恭兄ぃ。ここで新しいおうち見つけようよ」

 沙織の言うことに素直には頷けずに残った食事に手を付ける。


 ここで終わり。夢見た街の明かりを壁越しに見上げながらこの先を過ごすのなら、一生あの街で何も知らずに暮らしてた方がマシだった。見えなきゃよかった。あのビルの屋上に来たらさっさと帰ってしまえばよかった。


「すいません。ちょっと風浴びてきます」

 箸を置いて席を立つ。

「・・大丈夫恭兄ぃ?」

「ああ、ちょっとだけ出るだけだから」

 心配する沙織の顔も見れずにそのまま表へと出た。


 壁の向こうは今日も光を帯びている。ここで暮らす人たちはこの光景を見て何も思わないのか疑問を抱いたが、生まれてからずっとこの景色なのだから一度は疑問に思ってやがて妥協しすべてを受け入れていくのだろう。俺たちやあの街の人たちと同じだ。不思議なことではない。

 明日もう少しこの街を散策してみよう。何かしらの手掛かりはあるはずだ。

 

 街を歩く人たちの数もまばらになっている。そんな中で四人組くらいの男がこちらにまっすぐ向かってきた。この店の客だろうか。沙織を待たせているということもあって急いで店に戻る。


「おかえりなさい。気分はよくなったかしら」

 心配していたのか、女性がすぐに出迎えてくれた。

「はい、だいぶ落ち着きました。あと、お客さんみたいですよ」

「あら、ありがとう。妹さんは奥で待ってるから」

 女性に促されて奥へと向かう。沙織は食後のデザートで頂いたらしい切り分けられたリンゴをしゃくしゃくと口に運んでいた。

「おあえい、くぉおいい」

「食べながら喋んなくていいから」

 俺もその場に座って皿の上のリンゴを齧る。冷えていてとても甘い。配給で稀に配られていたあのリンゴとは大違いだ。

「おいひいれしょ」

 二個目を口に入れたらしい。なぜお前は口に入れてから喋りだすんだ。


 入り口の方でガラガラと戸を引く音がした。さっきの客のようだ。

「こんばんはっと・・今日もよろしくな女将」

「いらっしゃい・・席はカウンターでいいかしら」

 先ほどよりも抑揚がなくなった女性の声。入り口の方に目をやると、やはりさきほどの四人組の男がいた。

「いや、四人もいるしな。奥に案内してくれ」

「・・分かったわ。空いてるところへ座ってちょうだい」

 四人組の一番先頭にいる無精髭の男と目が合う。まっすぐこちらに来て俺たちを一瞥すると斜め後ろの座敷に座った。

「はいお冷どうぞ」

 女性は四人組に水を渡すとカウンターに戻る前にこちらに向かって来た。

「あなたたち、今日は泊まっていくんでしょう?二階に部屋を用意したからどうぞあがって」

 女性はどこか忙しなさそうだったので言われるがまま二階へあがることにした。俺らがいるとあの四人組にも迷惑がかかるだろう。

「沙織、行くぞ」

「おっへい」

 三個目のリンゴを頬張ったらしい沙織。口からしゃくしゃくと音が漏れている。


「おい、兄ちゃんたち。見ねぇ顔だな。どこから来た?」

 立ち上がった俺たちに無精髭の男が話しかけてくる。

「瓦礫の山の向こうから来たんです」 

「瓦礫の山ぁ!?あんなところに人なんか住んでたのかよ!わざわざご足労なこった・・。ところでそんな遠くから何しに来たんだ?」

「ある場所からこの壁の向こうのビルが見えて、それを目指したらここに辿り着いたんです。でも壁の向こうには行けないらしくて、足止め食ってここでお世話になってます」


 沙織の頭をぽんと叩く。いつの間にか人に寄りかかって眠っていた。

「そっちのは妹さんかい?」

「はい。こいつも二日間歩き通しで疲れちゃってるみたいなんで、これで失礼します」


「沙織。おぶってやるから掴まれ」

「・・ありがと恭兄ぃ」

 沙織をおぶったのは何年ぶりだろうか。そう遠い昔じゃなかった気がする。それにしても大きくなった。


「おい兄ちゃん」

 また無精髭に声をかけられたので振り返った。

「さっき、壁の向こうへ行きたいって言ったよな」

「・・はい」

「そりゃあちょうどいい。俺たち案内人って仕事をやっていてn・・」

「日替わり定食四人前。もう店閉めるから早く食べて」

 女性が会話を遮るように食事を出す。

「お兄さんも妹さんを早く寝かしてあげなさい」

「まぁ、そう急かすなよ。兄ちゃんたちに大事な話してるんだぜ」

「・・とりあえず妹寝かせてきます。また戻ってきますから」


 案内人。はっきりとそう聞こえた。話の流れからするとあの壁の向こうへと連れて行ってくれる人のことだろう。

 沙織を布団へと寝かせ、寝室を出ると女性が待っていた。

「あの人たちは信用しないで。壁の向こうへは行けないことになってるの」

「それは分かっています。でも少し話が聞きたいだけなんです」

 女性の横を通り過ぎて四人組の男の元へ向かう。


「降りてきたか。興味ありってことだな」

「あくまでも興味があるってだけですけどね」

「瓦礫の向こうから来た割には賢い兄ちゃんだ。信用は簡単にしない方がいい」

「で、案内人ってのはどういうことですか?」

「兄ちゃんが思っている通りさ。壁の向こうへ圏外の人間を導く案内人だ」

 無精髭の男は声こそ軽い調子だが顔は笑っていない。

「圏外の人間は壁の向こうへは行けないと聞きました」

「・・もちろん違法さ。兄ちゃん達にはそれを承知で付いてきてもらわにゃならん」

「条件は?」

「もちろん違法行為の手伝いだ。俺らもリスクを払ってる。それなりの報酬は要求するさ。瓦礫の向こうじゃいくら稼げたんだ?」

「・・ちょっと待っていてください」

 急いで二階にあがり、持ってきたお金を用意する。あの場所でどうにかやっていくための資金。多くはないがそれなりにある。


 再び戻って男に袋ごと金を手渡した。男は金を受け取ると一枚一枚数え始めた。

「全財産です。いくら残りますか」

「・・・・・・・少し足りねぇな」

「そんな・・」

 違法行為と聞いてそれなりの額は覚悟していたがこの金でも足りないとは思わなかった。

「まぁ、足りないと言ってもほんの少しさ。瓦礫の向こうからはるばるやってきたんだ。どうにかしてやる」

 ここで全額払ってしまったら壁の中でどうやって過ごせばいい?しかし引けば二度と壁の中へは入れない。再び思考を巡らせる。


 男は金を再び袋に詰めると俺の前に突き出した。

「どうする?壁の中へ行く決心はついたか?」


 


 無精髭の男は高田と名乗った。ほかの三人組は単なる付き人らしい。「明日お前らを迎えに来る」と言ってそのまま店を後にした。

 女性はずっと不安げな表情を浮かべていたが、もう後戻りはできない。なにがあってもあの光の中へ進む。なにがあっても沙織は守る。その決意は揺るがない。


 横で眠る沙織の髪を撫でながらぼやけて漏れる壁の中の光を一人で見つめる。

 

 輝かしい未来があと少しで手に入る。




 でも、最初に言った通り、世の中そうそう上手くはいかない。

 かろうじて見える右目で目の前の人間を睨む。

 

 




 俺を殴り飛ばし、蹴り飛ばしながら嬉しそうに笑うその口元には無精髭が生えていた。

 





 



 


 

 










 









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