2話
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すあいつらなんてみんな殺してやる殺して殺して殺して殺して殺して殺して―――
「ねぇ」
激しい思考が渦巻く中で聞こえた優しい声に現実世界引き戻された。
振り返るとそこにはスーツを着て赤いリップが目立つ美人を含めた4人が立っていた。その美人を見た瞬間体が硬直した。
「大丈夫よ。心配しないで。今すぐ楽にしてあげるからね。」
彼女の声がとても心地よく響きずっと聞いていたいと思ったところで思考が途切れた―――
「怜奈さん、毎回ターゲットの意識飛ばしちゃうのやめてくれませんか?俺さすがに男を抱きかかえるのは趣味じゃないんですよ。」
抱えてる男の重みに徹の顔が引きつる。
「せめて榊にも手伝ってもらえないんですか?」
と徹が榊を睨むものの
「榊には私と一緒でこの子の相手をしてもらわないとダメだから諦めなさい。」
ピシャリと怜奈に言い放たれてしまっては黙るしかない。
徹の隣で芽衣が自分も手伝うと心配そうに目を向けてくるがさすがに彼女に手伝わせるわけにはいかない。芽衣には笑顔で大丈夫だからと告げて角に駐車しておいた車に男を抱えながら向かった。
そんな徹と芽衣はほっておき、怜奈は目の前の少年に目を向けた。
少年の放つ禍々しい邪気に怜奈は少し疲れながら話しかける。
「いい加減にしたら?あなたがあの子らを殺したところで結局あの子らは自分の罪に気がついて反省するわけじゃないのよ。」
「僕だけ死んであいつらだけ生きてるなんて不公平だ。」
「自殺しておいてよく言うわね。だったら生きてる時に殺せばよかったじゃない。」
「そんな事できるわけないじゃないか!僕がそんな事しようとしたら母さん達が…」
親の事を考えるならなんで自殺なんてしたのと言いそうになったが口を閉じた。榊が肩に手を置いたからだ。
「何よ」
不服そうに言う怜奈に榊は首を横に振る。
「はいはい。余計な事だって言いたいんでしょ。分かってるわよ。」
榊の忠告は正しかったので部下に諭されるのを少し恥ずかしいと思いながらも素直に聞いた。
「えーと?あなたは織田春くん。去年の10月15日2014年に自宅のマンションの屋上から飛び降り自殺によって死亡。それから2ヵ月後に自宅のマンションに越して来た荻野裕也さんに憑き出して、今日1月1日2015年に自分をいじめていたクラスメートの3人組が初詣から帰ってるところを狙って殺害を計画していた。今回の事件は殺人未遂であり、被害は一切ないので、不問としますが、あなたが荻野裕也さんに憑いたままなのはGIとしては認められないので離れてもらいます。」
まっすぐとした目で少年を見つめた怜奈は淡々と述べた。
「GI…?」
「俺達はお前みたいな存在が誰かに憑いて犯罪を起こすのを防いだり、事件が起きて犯人は被疑者なのかそれともその被疑者に誰か憑いているのかを視る、お前らゴースト専門の捜査官なんだ。」
少年の疑問に榊が答えた。
怜奈は榊がかわりに答えてるのでそそくさと呪文を唱える準備に入った。両手を合わせ呪文を唱える。すると少年は目を見開き悲鳴を上げだした。
「やっめろぉ…僕だけこんなに辛い思いして…僕だけ生きてないなんて…僕はもっと生きたかった…普通にっ…学生生活を楽しみたっか…」
少年の悲痛の叫び声に怜奈は厳しく言い返した。
「あなたが自殺した事ですでにあなたのご両親は今辛い思いをしているわ。そして今回の事件がもし決行されていたら荻野裕也さんの人生も変わっていたわ。あなたは自分だけ辛いと言っているけどすでにあなたのまわりも辛い思いをしている。それなのにあなたはさらに辛い思いをする人を増やすつもりなの?」
「でもそれじゃぁ…僕はどうしてこんな事になってもあいつらは楽しそうなの!!!」
「世界は平等にできているわ。今彼らが楽しそうでも未来は分からない。必ずやってきた事は返ってくる。あなたに今できる事はもうないわ。」
怜奈の言い切った言葉に少年は黙った。
「お前の母親が心配している。まだどこにも行かずこの世界をさまよっているんじゃないかと。」
榊の言葉を聞いた少年の顔は歪んだ。
「かあ…さんが…?」
「そうだ。だから今俺達はお前の前にいる。」
少年の禍々しい邪気が徐々に弱っていく。怜奈は呪文を続けた。もう少年に呪文からの苦痛はなくなっている。
「お前がいじめられていた事に気がつきながらも忙しくて気にしてあげられなかった事を後悔していた。そしてもし会えるなら許してほしいと。」
少年の邪気はもう消えていた。
「そんな…かあさんは僕にすごく優しくて忙しいのに毎日お弁当を作ってくれて…僕はかあさんが大好きで…でも学校が辛くて…」
「あなたには幸せになる権利がある。だから私が連れてってあげる。もう織田春くんではいられなくなるけど、絶対幸せになれるわ。」
怜奈の言葉に少年はもう項垂れていた。それから少年は榊に目を合わせ頼み事をした。
「かあさんにごめんなさいって伝えておいてください」
「伝えておく」
榊がうなずいたところで怜奈は最後の質問を少年に投げかけた。
「なんで荻野裕也さんを選んだの?」
怜奈の問いに少年は少し寂しい顔をしたあとに僕と一緒だったからと答えて消えた―――
「お疲れ様です。大丈夫でしたか?」
大きいバンに乗り込んできた怜奈と榊に芽衣は声をかけた。
「うーん…まあ…ね。疲れたけど。そっちは?」
「まだ目を覚ましません。」
「あちゃー。ちょっと強くしすぎたかなー?」
今回のターゲットの荻野裕也の額に手をあてて小さく呪文を唱えた。
5分も経たないうちにゆっくりと荻野裕也は目をあけた。
状況を理解しない彼は目の間にいる怜奈に釘付けになったままだったので面白くない徹がゆっくりと説明をした。
「幽霊証明人…ですか…」
話を聞いてもまだ信じられない荻野に怜奈は優しくたずねた。
「あなたについていた少年はあなたを選んだ理由は自分と一緒だったからと言っていたの。助けてほしい事はない?あなたは大丈夫?」
突然聞かれた質問を理解した時には荻野の顔は崩れていた。
嗚咽を漏らし、震えている体を怜奈は優しく抱き、そんな二人を残りの3人はじっと見つめていたのだった。
どういう内容なのか全体的に伝わったでしょうか。
なかなか日本語は難しく伝えたいのに伝えきれない事ばかりで歯がゆいです。
織田くん、幸せになるといいな。