初日
さて、私が『炎氷地獄の貴公子』と呼ばれていた理由は、単に、大切なものを(家族や絶対に守るべき真奈はもちろん、新しくできた友人も)傷つけようとしたものたちを烈火の如く叩きのめしたことと(これが炎の部分)、無情無慈悲且つ、冷淡冷酷に、それらのものたちを潰して行き(氷の部分)、地獄を見せたから、である。
今は入学式の途中。(やはり、学園長とかの話はつまんないね。)
お、終わったか。
次は……あー…〝あいつら〟の挨拶か。
『生徒の皆、入学おめでとう。私は生徒会会長の蛇怜黎人という。そしてこちらは、右に、副会長の犬影壬婭、書記の八木亜出流、会計の九翟紫亜だ。私たちは学園の生徒たちの代表として、君たちを歓迎する。我が天ノ木学園へようこそ。これから君たちはこの学園の生徒として、しっかりと学んでいってくれ。以上だ。』
男子からは熱い尊敬の眼差しを、女子からは光芒とした眼差しを一身に受けながら、生徒会のやつらは舞台袖に戻っていった…。
………ほんっと、濃いメンバーだよねぇ…
会長様は『嫉妬の罪』を、副会長様はそのライバルキャラ。書記は『色欲の罪』、会計はまだ登場していない『傲慢の罪』のライバルキャラ……。
ほんっと、お近づきになりたくないわぁ……あそこ入ったらどんだけのフラグが来るんだか…。
容姿もついでにいっとくか…。
会長様は、青髪紫目のクール系美少年。目がつり目だからか、少々キツイ印象を受ける。副会長様は、淡いピンク髪茶目の撫子系美女。タレ目の柔らかな雰囲気で優しそうな印象だ。書記は、茶髪ピンク目のチャラ系美少年見るからに軽そうだ。会計は、紫髪緑目の勝ち気そうな美少女。目立つのはその髪の縦ロールだ。
まあそんな奴ら放っとこ……真奈様に近づかない限りは。だけどね?
さぁってと、クラスに移動するか。
クラスに到着した私は、窓際の一番後ろに座り、ボーッと今後のことについて考える。
うーん……真奈様に〝樹白葉玖としての私〟を好きになってもらうにはどうしたらいいんだろう?やっぱり、親友になってから意識させて……。
「ね、ねぇ、ここ、座ってもよろしいかしら…?」
これからについて思案していると、隣に誰かが来て話しかけてきた……って、この声ってもしかして…!
バッと隣を見ると、そこには驚いた顔の真奈様……やっぱり!!
「え、あ、はい!いいですよ」
了承すると、真奈様はホッと息を吐いて、席についた。
真奈様は相変わらず人見知りなんだね。
そんなところも可愛らしく愛らしい…。
んー…仲良くなった方がいいよね?
てか、なる。
「…私は樹白葉玖。貴女は?」
「私は小柳真奈っていいますわ。」
喋り方はやっぱりお嬢様って感じだなぁ…まあ似合うけどさ。
「ところで樹白様。何処かでお会いしたこと、あるかしら?」
!もしかしてこの髪色でもわかるの!?
でも女の方であった時はすぐ逃げちゃったし、ちゃんと見られてはいないはずなのに…
「い、いえ、初めましてだと思いますが…。」
「そ、そうですわよね!気にしないでくださいな!」
「え、はい…」
…なんだ確信があったわけではないのか…よかった…ここでバレたらパァだしなぁ…。
ガラッ!
「はい!席についてください!」
あ、丁度良いところに担任が来たみたいだ。どんなことするんだろ?
そうやって先生の話に耳を傾けた私は、隣からのじっと観察するような視線にかけらも気づくことはなかった…。