物語の始まり
どもども、父に彼女を手に入れると宣言した木城紅葉です。
なんかこの自己紹介めんどくさくなったので、今度からやめまーす。
で、本題に入るんだけど。
宣言した次の日から、私は様々なことをした。
あの後父に頼み込み、武芸全般を習い出したのだ。武術すべてを習得しておいて、いざという時に彼女を守らなければならないから。
特に、守れなかったら彼女は国外追放だから、もしそうなったら着いて行くつもり。
まあそうならないようにするけど。
あとは、礼儀作法や勉学。
これらができていて損はないからね。
だから、すべてを完璧に習得した。
そして、私が『炎氷地獄の貴公子』と呼ばれるようになった間も(男女両方でね)時は進み、とうとう乙女ゲーの舞台の『天ノ木学園』へと入学する日となった。
今は車で移動してる途中。
あ、ちなみにいっておくが、男の私と女の私は双子ということになっている。
それに、父と話し合い、私は変装して学園に通うことになった。
身分は彼女と同等の伯爵家。髪の色は現在赤い髪を、橙色に。金の瞳を淡い赤色に。
名前は、樹白葉玖となっている。
この漢字できしろはくと読むものだからつい心の中で、珍しいなおい!って叫んじゃったよ。
まあそんなわけで、うちの父と協会と王様で情報操作して、架空の樹白葉玖の過去が作られた。
え?なんで王様がいるのかって?
………うちの父は宰相だぞ?王様の次に偉く、王様の一番の重鎮にして親友だ。これだけで察してくれ。
もう遠い目になるしかないだろう。
どうにでもなれ、だ。
あ、そうそう。
言い忘れてたけど、あの悪役令嬢の子とは順調に信頼関係を築いていったよ。
まあほぼ男の方で、だけど。
女の方ではなんか恥ずかしくて…。
だって、女の子の格好しなきゃなんだよ!作法は完璧にしてるけど!ひらっひらなドレスを着ないといけないんだよ!
恥ずかしいから名乗るのも忘れてそこそこに逃亡したよ!
ええ、ええ!だめなのはわかってますとも!でも恥ずかしいものは恥ずかしいんだもの!
しかもあの子、いや、社交辞令なんだろうけどね!?私が頑張って挨拶しようとしたら、無意識かわかんないけど、「かわいい……」、って言ったんだよ!?
もう恥ずかしくて恥ずかしくて…!
だから、私は悪くない!
あ、それとね。
彼女と攻略キャラはそんなに仲良くないよ。だって予定通り婚約者は〝男のフリをした私〟だし、攻略キャラとはなるべく接せないようガードしてたしね。
それに婚約者だから独り占めも問題にならないし。
でも油断はならないから、頑張らないと。
あ、もう学園に着いたね。
ここで終わりにして行かないと。
召使に車のドアてもらい、外に出た。
目の前には無駄にだだっ広い学園が広がっている。
まあ、貴族がほぼ通うんだから当たり前か。
その中で当たり前じゃ無いけど、ストーリー的には当たり前のヒロインは庶民だ。
特待生制度があるから。じゃないとストーリーが始まれないしな。
でもほとんどの庶民は受けないし、受けたとしても、受からない。
だから、ヒロインは珍しがられたり、嫌悪されたりする。まあバカみたいにプライド高いからね。貴族は。
私も貴族だけど、あんなのと一緒にしないで欲しい。もちろん、真奈様も違う。
まあこんな話はこれくらいにして、頑張らないとね。
誓いを守るために。
彼女を、幸せにするために。
そして今日この時、一人の悪役令嬢を思う一人の少女によって、この乙女ゲームの本来のストーリーに無かった闘いはここに切って落とされた。
木城紅葉は前世の記憶があるという、イレギュラーな存在。
あってはいけないもの。それが存在し、その人間が悪役令嬢についたらどうなるのか。
それは誰にもわからない。
そんな物語が、今、始まろうとしている。