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前世の記憶、思い出しました

ある広いホールで立ち尽くす、〝少年〟がいる。まだ5歳くらいの子どもだ。

周りの大人も子どももそれを気にせず、〝王子〟だと王に紹介された子どもに賞賛や世辞を投げかけている。

そしてその少年ただ一人、他のもののように何かを言うわけでもなく、目の前にいる王子を見て、目を見開き、そしてーーーーー


「嘘でしょうーーーー?」


そう、呟いた

声は低かったが、分かる人が聞けばその声は〝女の子〟の声だと気づく。

そう…〝少年〟は〝少女〟だったのだ。

そして、その少女が呟いたその言葉は幸運にか、誰にも聞かれぬままに周りの喧騒の波に呑まれて行った………


****************

私の名前は木城紅葉きじょうくれは。5歳。

宰相の〝娘〟である。

今私は城で開かれた王子の誕生日パーティーにて、〝ある記憶〟を思い出していた。

それは、この今私が生きている世界が、乙女ゲーム…『七つの罪〜君は誰と恋に落ちる?〜』の世界だという記憶。

このゲームは七つの大罪がモチーフにされ、攻略キャラはそれぞれ、七つの罪を表す。

七つの罪は『強欲ごうよく』、『暴食あくじき』、『色欲しきよく』、『怠惰だいだ』、『憤怒ふんど』、『傲慢ごうまん』、『嫉妬しっと』、である。

あの記憶によれば恐らく、この記憶は〝前世の記憶〟と呼ばれるもので、今の私の現状は所謂、〝転生〟と言うものだろう。

粗方、脳内御花畑のうないおはなばたけの人であれば、この自体はとても喜ばしいものであろう。

だが、私にとっては最悪な自体だ。

私の前世は女である。

今世も女だ。だが私は結婚する気などない。それよりも仕事だ、仕事……と言う思考が普通の私。

まあそんな私だから、前世でも結婚せずに生涯を終えた。世間で言う、アラフォーなのだ、私は。

だから、ここに転生したことを喜ぶ気もないし、楽しむ気もない。

ではなぜ私がこれをしてたかと言うと、妹が結婚もしない私を心配して、恋愛に興味を持つように無理やりやらせたのだ。

しなければ怒るよ?と脅してきた

年下、しかも妹だと侮ることなかれ、妹は怒るとほんっとうに怖いのだ。

そういうわけでこのゲームをしていた。ほんっとうにここに転生したのはいいことだとは思わない………が。

しかし、仕事はやり甲斐がありそうだし、あのゲームに〝木城紅葉〟という女は登場しなかった。

だから恐らく私はモブなのであろう。

そうでなければ困る。

ということで、なるべく関わらないように生きて行くと決めた…の、だが…

「君が僕に将来仕えてくれる子かな?」

…私は宰相の娘。

時期王には仕えなければならない。

よって、この目の前で私に気持ちの悪い、下げずんだ視線のまま、満面の笑顔を見せる性悪王子に、私は仕えなければならないのだ。

……マジで勘弁願いたいな。

あ、そうそう、言い忘れていたが、この目の前の気色悪い笑みを浮かべている王子の名は『狐神 真守こがみまもる

この名前はゲーム設定によるもの。

ゲームの設定では真守は〝強欲の罪〟を表し、欲しいもののためならどんなことでもする汚いやつ。強欲を表す悪魔は、動物では狐などで表され、名前はマンモンと言う。

だから苗字に狐が入り、名前はマモルとなったのだ。

さて、王子の紹介も終わったし、これからどうするかな…

そしてこの場には、満面の笑みで宰相の娘を見る王子(下げずんだ笑み)、その王子を見つめ、笑みを浮かべる宰相の娘(目は冷ややか)と、そのそばで王と宰相はにこやかな顔(睨み合っている)という、はたから見れば微笑ましい。

だが、事情を知るものは口が引きつるしかない。なんとも言えない光景が広がっていたのだった……

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