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 エリナとの話をしようと思う。

 勿論、こちらも男だ。ルックスに釣られた部分があるのも否定はしない。

 所詮、初対面の異性が二人居れば、ルックスが好みの方に気持ちが傾くのは、仕方が無い事だ。

 交流を重ね、内面を知る事で認識は正され、幻滅したり、惚れ直したりする。

 エリナはどうだったかと言うと……内面を知るたび、自分に無いものを沢山持っている事がわかった。

 ますます、眩しく感じられた。

 と、いうより、自分とは何もかもが正反対のように思えた。

 幼い頃からピアノを弾いていたらしく、どんな曲でもすぐに弾いて見せた。

 その涼やかで、流れるような演奏にもまた、心を慰められたものだ。

 料理も得意だ。

 そうした家庭的な側面は、見る物を安堵させる、あの独特なオーラの一部を担っているのだろう。

 絵を描く事しか能が無い――というより〝人間を写実的に模造する〟という事しか出来ないどこかの男とは、大違いだ。

 そのくせ、高嶺の花じみた嫌みっぽさは微塵も無い。

 ああした、上品な美人が多かれ少なかれ持っている取っつきにくさが、彼女には一切無いのだ。

 まあ、これに関しては、こちらが勝手なイメージを抱いているだけなのかもしれないが。

 彼女の笑み、仕草、ピアノに向かう姿。

 全てが、心の琴線を狂おしくかき鳴らしてやまない。

 休日の朝、いつまでも起き上がらず、延々と布団をかぶっている時の、あの幸福感。安心感。充足感。

 エリナからは、常にそれを感じていた。

 あまり臭い事は言いたくない主義だったが、運命の相手というのは、そういうものなのだろうか。

 彼女がこちらを運命の相手と見なしてくれている可能性は……それほど高いとは思えないが。

 彼女の為に何とかしないと、というこの気持ちに、嘘偽りは無い。

 そういえば、うろ覚えだけど、映画の趣味だ。

 エリナはホラーが苦手で、スプラッタが平気だったか。

 霊的なものを恐がり、血が噴き出す残虐描写は、割と平気だとか。

 こんな部分でも、自分とは正反対だと痛感させられるが……果たして、このホテルは彼女にとって、ホラーなのだろうか。スプラッタなのだろうか。

 現状が現状だからか、悪趣味で、卑屈な事を考えてしまった。

 心がすさんできているのだろうか。

 早く、エリナに会いたい。

 会って、沢山話をしたい。

 何とか、しないと。

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