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その十八



 桜夜に事件について聞かれたのはそんな時だった。


 見舞いに来た桜夜は春星が目を覚ましてから小一時間説教し、気が済むまで小言を言ってから聞いてきた。


「結局、どこまでわかったの?」


 春星は身を起こすために背中に置いたクッションに深くもたれ、嘆息する。

「い~や。結局本当の黒幕はわからずじまい。

 それにお前には悪いが、あまり霞陽には関わりたくない」


 桜夜に嘘偽りは言いたくないが、自分と父や兄弟との確執を教えたくなかった。

 いつか全てを話す日が来るのだろうが、それは今ではない。


 春星はとうに自分の過去とは決別したつもりだった。しかし今回の一件で心の奥底でこだわり、囚われていたことに気が付いた。


 …それに見損なわれたくない…


 今回に限らずお目こぼしや知らぬふりはよくあることだ。


 横領や着服した官吏に罪を贖わるために拘束し、ただでさえ不足する人員を減らすのは得策ではない。

 公明正大を標榜しながらも、宰相を任された身ではままならないものだ。


 清濁併せ呑むを心掛けているが、そんな自分に嫌気が差す。


 ……おお、嫌だ嫌だ……


 春星は自嘲するように目を細める。


 すぐにでも投げ出したいが、そうもいかない。

 皇帝が春星を取り立てるのを認められたのは人材がいなかったせいでもある。


 だから養父に続いて後進の育成に努め、自分無しでも国が回って行けるようになったら早々に隠居したい。


「……やっぱし山かなぁ……」

「何が?」

「隠居所」

「やめなさい。不便なだけじゃない」

「いやいや。元野生児を舐めてもらっては困るな」

「それに私の計画が狂うのよ」


「……計画?」


 桜夜は春星の前に設計図を差し出した。


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