5時間目 想定外の邂逅 浅間龍山編
龍山は一瞬思考が停止した。しかし、思考と共に行動も停止するという愚を龍山の鍛えあげた肉体は拒否し、脳が機能を取り戻すよりもすばやく現状における最善の行動を選択した。龍山は素早く身を後ろに引きその反動を利用して扉を前に押し出し、外の世界を遮断したのだ。。
そして、クリーム色の扉を見つめながら徐々に思考を回復させると、龍山は苦笑した。
「ふっ。この五日間は俺が思っている以上に俺を追い詰めていたらしい。まさかこんな所で幻覚を見るとはな」
龍山は大きく三回深呼吸して自分を落ち着けると、今度はゆっくりと半分ほど扉を開けて来訪者の姿を確認した。
そこには先程と同じ体勢で固まっている井上愛美と加藤鈴の姿があった。
龍山は全身の筋肉をフル稼働させて自分にできる限界の速度で扉を閉めた。
幻覚じゃねええええええええええ!!!!
龍山はその場で筋肉を波打たせながら全身で驚きを表現した。
「なんでこんな所にいるんだよ!!どうする?どうする?と、とりあえず外で待たせるのはまずい!応対をしなくては」
そう言うと龍山はふと自分の恰好を見直した。
「こんな筋肉が売りのお笑い芸人みたいな恰好で応対できるかあああああ!!何だよこの格好!ただの変態じゃねぇか!!」
龍山は自分で自分に突っ込みを入れると頭を抱えた。
やべぇよこの状況。想定外過ぎるわ。とりあえず深呼吸だ。落ち着け俺。落ち着け落ち着け落ち着け。
龍山は必死に自分に言い聞かせて、ようやく冷静に思考できるようになってきた。
なんで彼女がここにいるのかが一番の疑問だが、今はとりあえず置いておこう。今問題なのはこの状況にどう対処するかだ。突然の事態に少し焦っちまったが、むしろこれはチャンス。ここでビシッと決めればこの一週間の遅れなんてあっという間に取り戻せる。とりあえずこの格好はまずい。早急に着替えなくては。
龍山は立ち上がると急いでリビングに戻り、左側にあるクローゼットを開け中から服を取り出した。そしてその場ででブーメランパンツを脱ぎ捨てると取り出した服を抱えて玄関に向けて疾走した。




