表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仮宿  作者: 水花
4/6

転、あるいは望まない再会。もしくは崩れてゆく日常

 いつまでもこの穏やかな生活が続くとは思っていたわけではないけれど。

 まさか……こんな形で終わるとは、想像していなかった。


「見つけちゃったよ。帰ろうか……」 

 最後に唇の形だけで、呟かれた名前。何ともやるせない気持ちを覚えながら、クリードはその男と向き合っていた。にこにこと笑う様子からは、彼が何を考えているかは全く読み取れなかった。

笑顔はその男の標準装備だから。

 白い柵に凭れかかっていた背中を起こし、まるで昨日別れたばかりのような気安さで、ひらりと手を振ってくる。鳥の巣のように縺れた薄茶の髪を、首の後ろで無造作に括っていた。シャツの上から羽織っているジャケットも見覚えがあるもので、クリードは今、どこに、誰と居るのかを見失いそうになる。

 ユーリと一緒に散歩と買い物に出かけ、帰ってきたところにこの男が立っていた……いや、おそらく。

自分を待ちうけていたのだ。

「あら、お知り合いなの? 立ち話もなんでしょうから、上がってもらったら? 」

 ユーリがクリードと見知らぬ男を交互に見上げ、尋ねた。

 どう答えようかとクリードが思っていると、男は猫のような目を細めて、にこにこと笑った。

「初めまして、俺はユージーンと言います。ちょっとこちらを通りかかったんで、顔出しただけなんで。どうぞお気づかいなく」

 そう?とユーリは首を傾げ、クリードを窺うように見上げた。

「たいして時間かからないから、外で大丈夫だよ。そんなに気を遣う相手じゃないしね。それに、買い物を仕舞わないといけないんじゃないか? 生ものもあっただろう」

「あ、いけない、そうだったわ。それじゃあ、本当によかったら、上がって行ってくださいね」

 ユーリはもう一度ユージーンと名乗った男に言うと、家の中に入った。

 扉が閉まるのを見届けてから、クリードは男に向き直る。

 男の茶色の目は相変わらず笑みの形のまま。しばし睨みあい、先に口を開いたのはクリードだった。

「……へたくそな偽名だな、仁」

 ユージーンと名乗った男はひょいと肩を竦める。

「ミクちゃんの名前だって捻りがないよ。クリード、だっけね。いくら従兄弟だからって、こういうセンスの無さで似なくってもよさそうなもんだよねえ、ほんとに」

「……自分で“センスの無さ”とやらは認めてるのか。“ユージーン”」

 唇の端だけを引き上げるようにして笑うと、仁は何やら憐れむような顔つきになる。

「誰しも自分の事はわからないもんだよねえ……」

 うるさい、と言いかけてため息を一つ。ついいつもそうだったように、くだらない言い合いをしてしまったけれど、そんな事に時間を費やしている場合ではなかったのだ。

 自分を追ってくる相手がいるとしたらこの男だろうと思いながらも、心のどこかで見逃してくれるんじゃないかって思っていたからかもしれない。

「よくここがわかったな」

 逃げ出す時、すぐに追跡できないようにシステムをダウンさせてきた。どこの界へ渡ったのか追うのは容易ではないはずだった。特に目立った力がない自分には、探すのに役立つ目印はない。

 この辺りに、紛れ込んでいるかも……とあたりをつけて探して、ようやく見つかる程度だ。

「だってミクちゃん、力使ったでしょ。駄目でしょ逃げてるならそんなことしちゃ。丁度アミ張ってたところにひっかかっちゃうんだもん。それにね~本気で逃げるなら、追跡システムきちんと壊していきなよ。時限式でダウンさせるんじゃなくてさあ……」

 ミクちゃんらしいけどねと仁は要らぬ事まで言う。

そう、クリードはここへ逃げてきたのだ。こことは異なる別の世界から。

 そして異なる世界へ逃げたとしても、見つける手段を持つ者たちが居る事もまた、知っていた。

 何故なら、クリードはその集団に属していたのだから。

 まあそれはともかく、と仁は笑った形の目のまま、まるで明日の天気の話でもするような口調で言った。

「もしも、このままどうしても戻らないって言うなら……彼女がちょっと困ったことになるよ」

 一応、他の界のヒトと関わってはならない、って建前はあるけどね~まあちょっと神隠しにでもあってもらうとかね、色々方法や抜け道はあるわけだし。

 言葉を無くすクリードに、追いうちをかけるように仁は言った。

「どうしたらいいかなんて、わかってるよね。深玖里」

 ミクリ、と名前を呼ばれ、深く深くため息をついた。仁にマトモに名前を呼ばれる時は、大抵ロクな事が起こらない。ここで、クリードとして暮らしている自分の事を、全て調べ上げた上で、やって来たに違いない。

 最後通牒だけを持って。

 わかった、と頷くと、仁は素直に戻る気になってくれて嬉しいよと笑う。

「それじゃあさ、彼女に挨拶でもしてきなよ。少しなら待っててあげるからさ」



 ユーリはキッチンでお茶の準備をしていたらしかった。声をかけるとすぐに振り向き、けれどあら、と首を傾げる。

「お知り合いの方は帰られたの? お茶の準備をしていたのだけど……」

 残念だわと頬に手をやるユーリに、どう切り出したものかと言い淀む。

 あちらに連れ戻されてしまえば、こちらに戻ることは難しいだろう。自由など無くなるはずだと想像がつく。それならば、今ここで彼女との“契約の破棄”を申し出るべきなのだろう。

 そうすれば彼女と自分の繋がりは切れ、彼女に何事も及ばなくて済む。

「あなた? 」

 黙ってしまったのを不審に思ってか、ユーリが顔を覗きこんできた。

 ふんわりとした紅茶色の髪に結ばれた、白いレースのリボンが揺れる。茶色がかった緑の瞳は心配そうな色を湛えていた。

 このまま、終わりにするべきなんだろうと、思うのだけど。自分の中で、何かの答えを見つけてない今、あっさり“終わり”にしたくなかったから。

「ああ、実はさ、ちょっと頼まれごとを引き受けたんだ。少し出かけてくるよ」

「あらそうなの。遅くなる? 」

「ああ、ちょっと、遅くなると思うから。戸締りして先に休んでてくれ」

 そうなの、とユーリは微笑んだ。

「わかったわ、気をつけて行って来てね」

「ああ、行ってくるよ」


 シャツとパンツを着替え、薄手のジャケットを羽織り、外に出た。玄関先の白い柵に凭れたまま、ユーリが庭に植えた花やまだ苗木の木や、二階建の白い家を見ているようだった。深玖里に気付いた仁はこちらを見てにこにこと笑う。

「あれ、早かったね~。お別れはもう済んだの? 」

「お前には関係ない」

「まあそうだけど、ばっさりきらなくてもいいでしょ。あれ、荷物何もなし? 」

「何を持っていくものがある」

 ふうん、と仁は目を細めたが、口に出しては何も言わなかった。

「それじゃあ、戻るとしましょうかね」

 深玖里が逃げ出してきたあの場所へ。

 今更何かを言う気力もなく、クリード……深玖里は重い足取りで、出てきた家に背を向けたのだった。



 世界の境目というのは、存外脆いものらしい。

 硬い強固な殻で覆われているのではなく、世界と世界を隔てるのは、ほんの薄皮一枚の差だという。

 かつてこの世界では、神隠しや取り換え子、物体の消失……そんな不思議な現象がしばしば起こっていたという。

 そしてある時、原因がこの世界と境を接する“違う世界”にあると言うことに気がついた者たちが居た。

 別の世界に影響されて、この世界を守る被膜が破れ・・・異なる世界へと渡る者、または渡ってくる者がいるという。このまま放置すればますます破れは酷くなり、この世界と別の世界が入り混じってしまい……やがてはこの世界じたいが崩壊しかねない。それはなんとしてでも防がねばならなかった。

 そうして作られたのが、現在の保障院の原型。

 関係者からは、単に“院”と呼ばれるその組織は、近接する他の界の監視や、万が一他の界へ渡る者がいるか、他の界から渡って来る者がいるかどうかの監視、または事故で渡ってしまった者のすみやかな保護や、なによりこの世界の防護を任務としていた。

 世界を包む被膜は脆い。負荷がかかればたやすく破れてしまう。

 その被膜を守るために、初めは術者と呼ばれる者の特殊な力で。

 今ではその力に似た、特殊な磁場を作り出して、被膜の内外から防護している。

 院の原型を作った者たちは、現在“五家”と呼ばれるものの先祖でもあった。特異な力を持っていた彼らはその力でもって他の世界の存在を知り、この世界を守る術を探しだした。彼らの血に連なる者もまた、特異な力を引き継いで産まれたので、その仕事を引き継いだ。

 そうして、いつしか五家にとって、この世界の境目を守ることが家業のようになっていったのだ。

 それが特殊な力を生かす術であったし、生計の術でもあったろう。

 ただ、世界の境目が脆いものであること、他の世界からの影響を受けやすいこと、などは、一般の住民には伏せられている。知りうるのは政府上層部でも一部の者のみ。それゆえ、院のトップは政治において隠然たる発言力を持っている。

院の中で多数の術者を輩出してきた五家。最大勢力でありその勢いが衰えることはないと思われていたのだが。

 五家の当主が持ち回りで院のトップを務めていた時代もあったが、今では必ずしもそうではない。院に属する術者も以 前は五家出身者で占められていたが、今では五家出身者は全体の半数にも満たない。

 五家に伝わる力も、今や衰え始めていた。五家に連なっていても、何の力も持たない者もいるし、微かな力しか持たない者もいる。どんな強大な力でも、やがては衰退する。

 それを仕方がないことだと思えるなら。時の流れには逆らえぬと思えたなら……歪なモノを生み出さずにすんだのではないかと今でも思うのだ。


 力の衰えを感じ始めた頃から、五家の者たちがしてきたこと。



「……まさか、自分に降りかかるとは思ってもみなかった、な」

 深玖里は呟いた。もとの界に連れ戻されるやいなや、すぐさま祖父の屋敷へと連れて来られ、そのまま軟禁されている。部屋は三階にあり、窓から見える範囲には監視の人間が立っている。部屋の外にも常に人の気配があった。このくらいは想定内だったので、特に驚きはしなかった。

「これに懲りたら、逃げ出そうなどと思わないことだ」

 連れ戻された孫を見て、祖父はただ一言そう言った。血のつながった孫、でなく、まるで道具を見るような冷たい視線だった。それについて、今さら深玖里は何も思うところはない。ほんの幼い頃から今まで、祖父に情の籠った視線や態度を向けられたことはないからだ。そういう人なんだと知っている。そして理解するのなど、とうの昔に諦めてしまった。

祖父は五家のひとつ、城戸の当主である。院のトップではないけれど、長老格として強い発言力は持っていた。

 おそらくその力でもって、深玖里への追手として仁を差し向けたのだろう。仁もまた五家のひとつ、結城の者であり、実のところ深玖里とは従兄弟どうしだった。仁の母親と深玖里の父親が姉弟だったのだ。

 深玖里の両親がはやくに亡くなり、しばらくの間結城の家で暮らしていた事もある。だから仁とは、従兄弟と兄弟の中間のような関係でもあった。

「じいさんはどうやらまだ諦めてないみたいだし……さてどうしよう」

 ユーリに危険が及ぶ事を恐れて大人しく戻ってきたものの、今は自分自身に危機が迫っている。どうしても祖父の願望を自分が受け入れられない以上、何としてでも逃げださねばと思うのだが。

 一度逃げ出した孫を警戒してか、祖父は屋敷に普段より多くの人間を配置していた。力技で逃げる事はまず無理だ。深玖里は腕っ節にはちっとも自信がない。

 多少の術が使えない事もないが、深玖里自身の力は微弱なものだ。普段、そういった術者としての任務に就く時には、増幅器の力を借りていた。微弱な力を増幅させる装置の開発は、深玖里を中心に行われたものであり、深玖里は実動よりも裏方として動くことが殆どだった。界を越えての追跡システムの完成にも深玖里は関わっていたから、なまじ開発の苦労を思い出してしまい、完全に破壊するのを躊躇ってしまったのだ。

 連れ戻されて、軟禁状態に置かれている今では、完膚なきまでに破壊してくるべきだったと後悔している。

 どうせ設計図は残っているのだから、初めから作り直すことも可能だろうし。

 逃走防止のために、増幅器は取り上げられているから、自力での逃走は無理だ。祖父の屋敷とはいえ、あまり近寄りもしなかった自分は、部屋の配置などをロクに把握していない。この部屋に人が入ってくるのは、食事を運んでくる時だけで、それも深玖里が力では太刀打ち出来そうもない屈強な男が運んでくる。浴室や化粧室が備わっているところを見ると、深玖里が居るのは客室の一つらしかった。

 焦って事を仕損じてはならない、が。

「じいさんも、なに考えてるんだかな……」

 重いため息とともに、思わず呟いた時、外から閉ざされていた扉が開き、メゾソプラノの声が響いた。

「お戻りいただいて嬉しいですわ。お兄さま」

「……志津香」

 名を呼ぶと、彼女は愛らしく首を傾げ、姿に似合わぬ辛辣な台詞を吐いた。

「ヘタを打ったものね、お兄さま」


 彼女はお茶を持ってこさせると、ソファに腰掛け寛いだ様子でカップを傾けている。艶やかな長い黒髪や、小づくりの顔や、ちいさな紅い唇もあいまって、人形めいた愛らしさだが、それに油断すると足元をすくわれる。

 愛らしい姿の裏に毒を持っている……鈴蘭のような女だと知っていた。

 彼女がゆったりと構えている分、対する自分の方がどうにも落ち着かなくて変な気分だ。

 城戸志津香。今まで、父方の従妹だと思っていたのだが。

「俺たちが兄妹だってこと、お前は知っていたのか」

 彼女は落ち着き払って答えた。

「知っていたわよ。もう随分前からね」

「俺はついこの間聞かされたよ」

「まあお兄さまは、ずっと結城の方で育ったものね。でもわたしたちは知っていたわよ。わたしたちの父親が本当は誰だったか。そしておじいさまが、わたしか早弥香のどちらかを、お兄さまと結婚させる気でいるのもね」

「まさか、そんな」

 深玖里は言葉を失った。早弥香は志津香の双子の妹だ。そして彼女たちの父親と、深玖里の父親は兄弟だった。

 そのはずだったのに……双子の本当の父親は、深玖里の父親であるという。

 深玖里の父も、彼女たちの戸籍上の父親も、いまはもうこの世を去っている。何故このような事になったのか、問いただしたい気もあるけれど。おそらく祖父はある程度の事情を知っているだろうし、志津香も知っているかもしれないが。

 今はそれよりも、差し迫った問題を解決する方が先だった。

 志津香は……血のつながった兄と結婚に、忌避の感情すら見せずに言葉を続ける。

「戸籍上兄妹じゃあないから、結婚させるに問題ないって事よ。子ども孕ませておいて、さて母親をどこに嫁がせようかって考えなくてもいいんだものね。早弥香はお兄さまのお気に召さなかったようだから、次はわたしの番ってわけ」

 志津香の言葉を、苦い思いで深玖里は聞いていた。薄れゆく力を引き留めるために、五家がとった手段。

 それは、血の近い者の間での婚姻を繰り返すことだった。ただ、近親婚を繰り返しても、力が戻ることはなかった。力どころか、近親婚の弊害で子どもが生まれにくくなっている。深玖里が両親にとってただ一人の子どもであるように。志津香と早弥香にしても、互い以外の姉妹はいない。

 五家の中には、出生率の低下に危機感を覚え、五家以外からの婚姻を積極的に進める家も出てきた。

 不自然な婚姻には、何の意味もなく幣害しかないのに……それを繰り返すというのか。

 自分が育った家が歪んでいる事は知っていた。けれど、未だにここまでの歪みを抱え、そしてそれを当然としている様子に寒気すら覚える。

「でも、わたしの体の方が、今すぐには都合が悪くてね。そうね、三日後かしらね。その時までには、覚悟を決めておいてちょうだいね。お兄さま」

 志津香はお茶を飲み干し、にっこりと笑いかけさえして、部屋を出て行った。



「やあやあミクちゃん、婚約おめでとう~」

 クラッカーでも鳴らしそうな陽気な雰囲気で、仁が部屋に入って来たとき、深玖里は何か殴りつけるモノはないかと真剣に辺りを見回してしまった。あいにく凶器になりそうなモノはなかったし、仁も身の危険を感じてか食事の載ったトレーを置くとすぐ出て行ったので、凶行に及ぶ機会は失われた。残念ながら。

 それから。

 仁は何度か深玖里が軟禁されている部屋に顔を出している。仁が出入りする事については、監視の人間も何も言わないようだった。

「仕事の方はいいのか? 」

 余程暇なんだなと皮肉たっぷりに言ってやれば、

「ミクちゃんが作ってくれたシステムが上手く動いているしね~楽させてもらってるよ」

 と返される。

 結城の家の者であるけれど……祖父にとっては外孫であるから、仁は城戸家にも自由に出入りできるらしかった。それに仁を……というより、結城を敵に回すと厄介だと思っているのだろう。五家のうちで一番発言権が大きいのは結城であり、五家のうちで最も多数の術者を抱えるのも結城だからだ。

 この日も、相変わらずの笑みを浮かべ、仁は部屋に入って来た。

「あれミクちゃん、寝てるの~? どっか調子でも悪い? 」

 明日が、志津香の告げた“三日後”。現状では逃げる手段はなく、じりじりと焦る気持ちを抱えて、ベッドに寝転んでいた。外の情報を得る手段も取り上げられ、かといって気を紛らわせる物もないので、眠るくらいしかする事がないのだ。

 誰の顔も見たくはなかったけれど……特に一番見たくない顔が現れて、深玖里は不機嫌な表情も露わに睨みつける。

「別に何でもない。お前の顔なんて見たくない、出てけ」

「ご機嫌斜めだねえ。仕方ないけどね、ご飯はちゃんと食べようよ。たくさん残してたそうじゃない」

「欲しくない」

 ふいと顔を背けて、仁の顔が見えない方へ寝がえりを打つ。

「も~子どもみたいなこと言わないの。食べなきゃ体もたないでしょ~。ほら、これミクちゃん好きだったでしょ。少しでもいいから食べてよね」

 ちら、と視線を向けると、それは確かに深玖里が、それだけは好んで食べる饅頭だった。要らない、と答えるのは嫌で、むうっと眉間にしわが寄る。

「ミクちゃんは、そこで要らないって嘘でも言わないもんねえ……」

 しみじみと言われて、うるさい黙れと怒鳴りたくなったけれど言い返せばその分返ってくるのが目に見えている。唇を引き結んで、顔を背けて目を閉じていると、ふと空気が動いた。ようやく出て行ったかと思ったのだが。

「ねえミクちゃん、やっぱり顔色悪いよ。それに少し痩せたみたいだし」

 近い所で声が聞こえ、思わず目を開けると、こちらを覗きこんでいる仁と目があった。

「……お前には関係ないだろう」

「う~ん、関係ないって言うならさ、何でミクちゃん、俺のとこに逃げ込んできたのさ」

「正気じゃなかったんだろ」

「そうだねえ。正気もぶっとぶ、強いクスリだってじいさん言ってたしね。でもいつものミクちゃんなら、そんなクスリ呑まされるようなヘマしないでしょ。だから俺、前にも言ったよね」

 お酒飲みすぎるのには、気をつけて、ってさ。


 確かに、自分も気が緩んでいたんだと思う。従妹の早弥香から、相談したい事があるからと彼女の家に呼ばれた。従妹たちとは割合仲が良かったし、相談に乗る事もあったから……何の疑問も抱かずに家を訪れた。

 家には早弥香の他は、誰もいなかった。

「ちょっと、素面じゃあ言いにくいことなんだ」

 そう早弥香が言って、酒を出してきた。お兄ちゃんもつきあってよと勧められるままに呑み、マズイと思った時にはもう酒が回っていた。そして……。

 気がついた時には、白い肌も露わにして、早弥香が自分の上にのしかかっていた。


“なに、してるんだ早弥香”

“わからない? ね、わたしとお兄ちゃんは、本当は兄妹なんだって。お兄ちゃんのお父さんが、わたしと志津香のほんとのお父さん。お兄ちゃんは知ってた? ”

“なんだ、それ・・・”

“あれ、知らなかったんだ。それじゃもうひとつ教えてあげる。おじいさまはわたしか志津香のどっちかと、お兄ちゃんを結婚させるつもりだよ。血の濃い子どもが欲しいんだって”

“なにを莫迦げたことを……何をするんだ、離せっ”

“ふふ、わたしはそれでいいんだよ。だって、わたしはずっと、お兄ちゃんのことが好きだったんだから”


 それからの記憶は、実のところ曖昧だった。渾身の力で早弥香を引き剥がし、熱がこもる体で駈け出した所までは覚えている。酒に碌でもないクスリが混ぜられていたらしい。それから何故か仁の所へ逃げ込んでいたようで、目を覚ましてとても驚いた。

 そして仁とロクに話もせずに、飛び出して……違う世界へと逃げ込んだのだった。


「俺こそ、お前らの正気を疑うよ。なんで妹と結婚できるって思うんだ」

「まあねえ、近親結婚が伝統みたいになっちゃってるもんね~昔の栄華よ再びって奴? まあ実のとこ無駄な足掻きだし、そんなことで力は戻らないって、みんなわかってはきてるんだけどねえ……血が呼ぶって奴なのかなあ」

「そんなの、ただの幻想だろう。歪んでるだけだ」

「ミクちゃんはそういうとこ、歪みないよねえ」

 感心するように言われ、からかわれたかと顔をしかめる。仁は深玖里の不機嫌顔など気にもせずに、ほらあ、やっぱりと、おもむろに深玖里の腕を掴み勝ち誇ったように言った。

「やっぱり痩せてるよ。なにこの手首、指が回っちゃうじゃん」

「手を離せ。あと顔近いどけろ」

 覆いかぶさって、顔を覗きこまれるような体勢は、非常に居心地が悪い。

「いやだね~。これくらい嫌がらせしてもいいでしょ。さんざ、ミクちゃん探すのに駆けずり回らされたんだから。あ、あと一つ忠告」

 にっこりと至近距離で笑って、仁は言った。

「大人しくしててねお願いだから。逃げようとしたって怪我するだけだし。無駄な悪あがきはしないでね」

 そして子どもにするように、深玖里の頭をぐしゃぐしゃに撫でて……部屋を後にした。


 

 とうとうやってきた“三日後”。深玖里はそれまで軟禁されていた部屋から連れ出され、別の部屋へと連れていかれた。逃げ出す隙を窺ってはみたものの、祖父も警戒して屈強なボディガードで前後左右を固めていた。早々に逃走を諦めて大人しくついてゆく。

 入れられた窓のない部屋に家具は少なく、壁際に寝台が据えられており……吐き気がするほどの醜悪な意図が透けて見えた。

 閉ざされた空間も相まって、閉塞感が増すばかりだ。

 ソファやベッドに座る気になれず、立ったままうろうろと室内を歩きまわった。

 どれくらい時間が経ったのだろうか。扉が開き、屈強なボディガードに付き添われ、志津香が入ってきた。

「お待たせしたかしら、お兄さま」

 志津香は、やわらかい素材の薄紫のワンピースを着、その上から黒いニットのボレロを羽織っていた。いつもは背中に垂らしたままの髪を、頭頂部で一つに纏めている。ボディガードには、もう外に出てていいわよと指示を出していた。彼は無言で頷き、部屋の外へ出る。

 扉が閉められ、鍵が外からかけられる。これでもう、外へ出る事は出来ない。

 志津香はヒールの音を響かせて深玖里に近づき、手にしたバッグからおもむろに鍵を取り出した。

「さ、兄さん早く逃げるわよ」

 こんなところに長居は無用だわ。

 その呼び名を聞いて、深玖里は自分の予想が外れていなかったことに安堵した。

「よかった……」

「兄さん安心するのはまだ早いわよ。ぼけてないでほら、行くわよ」

 へたりこみそうになるほど安心した深玖里だったが、志津香は冷静に、そして容赦なく急きたてる。

 志津香はクローゼットの奥に頭を突っ込むと、確かこの辺に……と呟いていた。鍵の回る音がして……それから彼女は深玖里を手招きした。

「ここから逃げられるわ」

「隠し扉があったのか」

 深玖里も開いた扉の奥を見つめる。暗い通路は下へ下へと続いているようだった。

「そう。小さい頃この屋敷を探検してて、見つけたのよ。その頃は鍵はかかってなかったから、この通路の先まで歩いて行った事もあるわ」

 さ、急いで、と志津香は深玖里を扉の向こうに押し込み、内側からクローゼットを元通りに閉める。

 そして身をかがめて扉の向こうに行くと、通路の中から扉を閉めた。

 通路の中は意外と広くて、身をかがめる必要もなかった。志津香が手渡してくれた懐中電灯で足元を照らしながら、小走りで先を急ぐ。冷たく湿った空気の匂いが、鼻先をかすめた。

「屋敷の裏手に出られるの。すぐ林に続いているあそこよ。皆はまだ部屋の中で兄さんが往生際悪く抵抗してると思ってるでしょうから、逃げるなら今のうちだわ」

 ほんとなら、暗いうちがよかったんだけど、仕方ないわねと志津香は言う。暗くなるまで待ってたら、手遅れだわ。

「こんなことをして、お前の方は大丈夫なのか? 」

 深玖里は逃げ出したとしても、誰に迷惑がかかるわけではない。けれど志津香は……彼女が手引きした事はすぐに祖父もわかるだろう。深玖里より余程祖父に可愛がられていた志津香とはいえ、祖父が激怒するだろうことは簡単に予想できた。その結果、志津香が困った事になるのだったら、逃げる手助けをしてもらうのも躊躇われた。

「わたしの心配より、自分の心配をしたらどう? ご心配なく、わたしならどうにでもなるわ。それより、よく覚えていたわね、“お兄さま”」

 “お兄さま”の所を歌うように言われ、深玖里は顔をしかめた。

「……覚えてるさ。お前たちの悪戯には、ほとほと困らされたからな」

 普段、志津香は兄さんと深玖里の事を呼んでいた。もっと以前には、深玖兄さんと呼んでいたのだが、いつの間にか兄さんとだけ呼ぶようになっていた。

 お兄さま、などと彼女が自分を呼ぶ時、それはこれから嘘をつくという合図だった。彼女と早弥香とで、とんでもない大ウソをつかれたこともあるし、志津香たちと自分とで……周りの大人を困らせるような悪戯をしかけたこともある。

 それを覚えていたから、志津香が自分の事を“お兄さま”などと呼んだ時、志津香自身もこの事態を快く思っていないのでは、と察することができた。だから焦る気持ちを必死で押さえて、待つ事も出来た。

 三日、というのも、本当は鍵を探すために必要な時間だったのかもしれない。

 ようやく辿りついた通路の出口。あたりを窺いながら外に出ると、極楽とんぼなのんきな声に迎えられ、力が抜けそうになった。その場に崩れそうになるのを、何とか押しとどめる。

「あ~ミクちゃんお疲れ様。志津香ちゃんもお疲れ様」

 のほんと立っていたのは仁だった。まるで緊張感のない顔でにこにこと笑っている。

「何がお疲れ様、だ。人に向かって“婚約おめでとう”だの言いやがったのはどこの誰だ」

「あはははは~ちょっとからかっただけじゃない。それに何処で誰に聞かれてるかわからないんだから、下手なことは言えないでしょ? 」

 それこそ生まれた時からのつきあいである仁の事は、深玖里もよくわかっている。城戸の祖父のようなやり方を心底毛嫌いしているのも知っていた。わかりやすい言葉や態度では表わさないものの、見ていればわかる。

 ただ、どこまでも冗談と軽口に紛らわせてしまうので、頭の固い長老連中がどこまで読み切れているかは疑問で。

 案外、組みしやすいと思われて、城戸の祖父は仁に、自分を連れ戻すよう命じたのかもしれない。

 けれどその実態は組みしやすいどころか。深玖里は仁だけは敵に回したくないと思っている。笑顔で手を差し出しながら、背後に回した手でぐさりとやりかねないような男だからだ。

 だから……仁は一旦自分を連れ戻しはしても、逃げる時の手助けはしてくれるんじゃないかとは思っていた。

 それこそ生まれた時からの付き合いである自分は、仁が引き起こしたアレコレのしりぬぐいをさせられたこともあるし。お互いさまという奴だ。期待通りで嬉しい半面、いやそれ以上に。のんきな笑顔を見ていると無性に腹が立ってくる。

 つまり。深玖里は仁にはどんな迷惑をかけても構うものかと思った。

「ま、無事脱出おめでとう。こんなトコ長居は無用ってことで、ちょっと移動するよ」

 それには全く異存のない深玖里だった。木立にひっそりと隠れるようにある、仁が用意した車に皆乗り込み、城戸の屋敷を後にする。屋敷の中からは誰も出てくる様子はなかった。木々に囲まれた大きな屋敷は、そこに連なる人々の思惑を呑みこみ、陰鬱な存在感を持ってそこにある。

 屋敷の影が見えなくなったところで、ほうと大きくため息をついた。

「今のとこ、まだ逃げたってばれてはないみたいかな~時間の問題だけど」

 仁は指先で、耳の辺りをとんとんと叩く。屋敷のどこかに、盗聴器でも仕掛けているのだろう。この男のことだから、盗聴器が見つかっても足がつくような真似はしてないだろうが。

 あのじいさんだと、ちゃんと既成事実作ったか、部屋の中に乗り込んできそうだもんねと朗らかな声で仁は言う。深玖里は助手席から腕を伸ばして仁の頭をはたいた。平手だったのがせめてもの優しさだ。

「いたっ、も~運転してるんだから危ないでしょ~。ミクちゃんすぐ手が出るんだから。まあでも、大人しくしてくれててよかったよ。折角逃げ出す算段したげてるのに、勝手に逃げようとした挙句見張り強化されたら計画台無しだしね」

で、助けてあげたお礼をまだ聞いてないけどと仁は笑顔で催促してくる。

「ミクちゃん? 」

 催促どころか、無言の脅迫じゃないか。

「………………」

「え、なに、聞こえないよ? 」

「……っ、だからっ、助かったよ!ありがとう!」

「わ~ミクちゃんにお礼言ってもらっちゃった~」

 何だが貴重だねえ~でもそんなに怒りながら言わなくってもいいじゃない、と仁は力の抜ける笑顔で言う。

「お前が催促したんだろうがっ。要らないんなら取り消してやるぞっ」

「あはは、要る要る、要りますってば。ミクちゃんはほんと、怒りっぽいんだから」

 まあ、でもねえとハンドルを握りながら仁が続けた。

「ぽこぽこ怒ってる方がミクちゃんらしくていいよ~。大人しいミクちゃんは、何か気味が悪いし~」

「……俺を怒らせるのは、大概お前何だがな。俺だっていつも怒ってるわけじゃないぞっ」

 ええ、そうかなあとのんびり答えた仁。後部座席に座っていた志津香が、とうとう噴き出してしまった。

「もう、二人とも相変わらずなんだから。子どもみたいねえ」

 深玖里はバツが悪くて黙り込む。仁が相手だとつい口が軽くなってしまうようだった。助手席のシートに身を沈めて、窓の外の流れる景色を眺めるふりをする。

 しばらくぶりに見る生まれ育った街だが、対して変わったところはないように見えた。街並みも、行きかう人々も。変わったとすれば、それは……自分の方なのだろう。

 懐かしいとは思えず、ただ余所余所しさばかりを感じるのだから。

「ところでさ、ミクちゃんこれからどうするの? どこかに隠れるつもりなら手伝うけど」

 違う界に行く事もできるし、結城の方で匿う事も出来るよと仁は言う。現在五家の関係は色々と微妙な事になっていて。結城は、あまりに閉鎖的な城戸と少し距離を置き始めていた。

 深玖里は迷いなく答えた。

「いや……あちらに戻る」

「そう言うと思ってたけど、ね」

 仁は運転しながら器用に肩を竦めた。

 ミクちゃんがさ~誰かと暮らしてるって知った時から、やな予感はしたんだよねとふうとため息をこぼし、仁は前方を見たまま軽い口調で言った。

「もう二度と、こちらへは戻って来れないかもしれないよ。わかってる? 」

「決めたんだ……だから、それでいい」

 仕方ないねえ、ミクちゃん頑固だからと仁は肩を竦めた。

「ふん、どうせお前は何のかんのと顔出すつもりだろう。ほとぼり冷めた頃、そうだな、五年に一度くらいなら遊びに来ても構わないぞ」

「あれ、遊びに行ってもいいんだ。じゃあ季節ごとに遊びに行くからね!わ~い、楽しみだなあっ」

「お前は都合よく人の話を曲解するなっ! 五年に一度くらいならと言ったんだ! 」

 深玖里が怒鳴っても、仁は一向に堪えた様子はなく、にこにこと笑いながら運転を続けている。

「兄さんがそう素直に反応するから、仁兄さんにからかわれるのよ。ねえ、兄さん。わたしにも約束をくれる? 」

「どんな約束だ? 」

 深玖里はどんな内容であれ、叶えてやるつもりだった。従妹であれ、本当は妹であれ……彼女が自分にとっては大事な存在であることに変わりはないからだった。

「いつか、ね、わたしとわたしの子どもに会って頂戴ね。約束よ」

 深玖里は心底驚いて後ろを振り返った。志津香は何かを企む笑みを浮かべている。誰かと結婚して、子どもをもうけて……と言うのは、喜ばしいことのはずなのに、その企み顔は一体何なのか。

 彼女が自分を“結婚相手”として意識してくれなくて、本当によかったと内心思う。

「お前、そんな相手がいるのか? 誰だ一体」

「実はこれから口説くところなの。兄さんも知ってる人よ。城戸の親族の中で、一番の変わり者と言ったら? 」

 あいつか、と深玖里の頭にある男が浮かんだ。親族の中でも遠縁のその男は、早くに一族から離れ、術者とも関係のない生活をしている。多かれ少なかれ、地位や金に執着する一族の中にあって、それらとは無縁の研究職に喜々としてついていた。親族からは変わり者のレッテルを張られているが、あいつの方がよほど人間としてマトモだと深玖里は思っていた。人の良さそうな笑顔が思い出される。

 だからこそ……親族である志津香が口説いたとしても、拒むのではなかろうかとも、思うのだが。

 それは志津香とあの男の間で答えが出ることだ。自分は何も言うまいと口を閉ざした。

 かわりに言ったのは別の事。

「それなら、またいつか、結果を見せてもらうことにするさ」

 どんな形になるのか、今はわからないとしても。志津香は約束したわよと微笑んだ。


 仁は郊外の川のほとりで車を止めた。界渡りをするにも、しやすい場所とし難い場所がある。幾ら機械で人工的に磁場を発生させるとはいえ、少しでも負担は軽い方がよかった。

 深玖里は車を降りた。仁や志津香も車を降りる。

「はいミクちゃん、力の増幅装置と通信機。一応これくらいは持っていってよね。そうじゃなきゃこっちも安心できないからね」

「わかった」

 てのひらにのるサイズの増幅装置と、携帯電話タイプの界を越える通信機を渡される。色々助けてくれたことだし、これくらいは譲歩しようと思った。何も要らないなどと言えば、またしつこく泣き落としめいた事を言われるに違いないからだった。

「それじゃあ兄さん、元気でね。お義姉さまにもよろしく」

「……いやまだそうと決まったわけじゃあないんだが……」

「えっ、嘘そうなの? 俺てっきりもう……あ~でも、ミクちゃんだからな~それもアリかあ」

「ええい、うるさいっ。じゃあ俺は行くぞ。まあ……なんだ、二人とも元気でな」

 くるりと二人に背を向けて、深玖里は川の方へと足を踏み出した。いつまでもぐずぐずしているわけにはいかなかった。何だか話が嬉しくない方へと向かっていた事でもあるし。

 界渡りをするための磁場を発生させて、深玖里は川の上を歩いていた。水の流れよりも十数センチ上あたりを歩き……対岸へと渡る前に、後ろを振り返る。岸辺では仁と志津香が手を振っていた。

「ミクちゃんも元気でね。あの人によろしく」

 深玖里はひらりと手を振り返して。

 川を渡り……界を渡った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ