表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
行かないで  作者: 遠藤 敦子
4/7

4

 それぞれ進路は分かれたけれど、全員京都の実家にそのまま住んでいるので休みが合えば集まっていた。新村くんと美結ちゃんの交際も順調そうだったし、インスタグラムで多くの幸せそうな写真が見られて私も嬉しかったのだ。

 私は専門学校での授業が始まって忙しくしていたけれど、学校から帰宅する途中で新村くんと美結ちゃんにばったり会った。

「あれ、沓澤じゃん。久しぶり」

 と新村くんから、

「玲奈ちゃん学校慣れた?」

 と美結ちゃんから声をかけられる。2人はお揃いのネックレスを身につけていたけれど、合わせるとハートができるデザインだった。

「あ、それってペアネックレス? 2人で合わせるとハートできるやつだよね?」

 と私が訊くと、新村くんは笑ってこのように言う。

「そう。俺は別にアクセサリーとか興味ないけど、美結がお揃いでネックレス付けたいってうるさくてさー」

 美結ちゃんと新村くんは付き合って1ヶ月記念としてペアネックレスを買ったという。美結ちゃんは新村くんの肩を叩きながら

「ちょっと梛、言い方!」

 と言った。卒業式の時に大声で交際報告をしてきた新村くんを静止した時の美結ちゃんを思い出し、私は思わず笑ってしまう。

「相変わらず仲良いんだね。お幸せに!」

 私はそう言って2人と別れ、帰路についた。幸せそうな2人が羨ましかった。しかし2人が付き合い始めて3ヶ月の時、私の元に美結ちゃんから1通の電話がかかってきたのだ。



 専門学校での授業に慣れてアルバイトも始めた頃のこと。アルバイト先からの帰り道で、私のスマートフォンが鳴った。美結ちゃんからLINE電話が来ていたのだ。出てみると、美結ちゃんはこう言っていた。

「玲奈ちゃん聞いて。私、もう梛のこと好きっていう気持ちが冷めてきてる……」

「……えっ? あんなに仲良かったのに何があったの?」

 私は驚き、思わず何があったのか訊いてしまう。話を聞けば、新村くんにはもともと「推し」の女性アイドルがいたらしい。美結ちゃんの前ではアイドルオタクであることがバレたくなくて隠し通していたけれど、付き合って3ヶ月経った頃に初めてカミングアウトしてきたそう。カフェでご飯を食べていた時に新村くんがそのアイドルとのツーショットのチェキを見せてきたといい、それで美結ちゃんが嫌悪感を抱いてしまったのだ。

「私、梛がアイドルオタクだって知らなかった……。好きって言われても、どうせ私よりアイドルが1番好きなんでしょって思っちゃって。本当に私のこと好きなのか信用できなくなって、冷めてきちゃった。もう別れようと思う」

 と美結ちゃんは話した。私は「別れなよ」とも「別れない方がいいよ」とも言えず、「美結ちゃんの気持ちに正直になったら良いんじゃない」としか言えなかったのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ