第2話 訓練施設の地獄
日差しが視界に入ってくるこの感じ悪くないと思った。体を布団にくるませて心地がとてもいい。
それと同時にラップの騒音が鳴り響く
「起床 2分前行動を心掛けよ」
何が起床2分前だふざけやがって冗談は唇だけにしておけと煮えくり返る心に思った香神だった。周囲を見渡すと収容施設と変わりない運びとなっており塔のような作りで窓は囲っていて開けられない。起床を10分で着替えと歯磨きの身支度を済ませて中庭に集合する。
「お前らゴミが再生可能な消耗品に生まれ変わらせてやるんだからありがたく思えよ」
高圧的な口調で現代社会ではアウトの発言だがここは外界への訓練施設今まで特権を味わい落ちた人間たちが対象なので人権などあったものではない。ここは女性ばかりだ男女は分かれているのがせめてもの幸いだが上官が男なら意味がない。朝から400メートルある中庭のグラウンドを50周(20km)も走らされるのだ。ついこの間歩く訓練をしたばかりなのだぞ。さすがに目覚めてすぐに動けとまでは言われない。訓練施設に来る前は療養所で食べ物を飲み込むところから始まり口輪筋を広げその後歩行する。人類の黎明期当時サルだった先祖が二足歩行をするように進化しやがて火を使うようになり集団的に行動する脳が発達するに至るというのだ。私は今その先祖のやってきたことができずにいるのだ。自分が体というものを自主的に動かして初めて意味を理解したのだと香神は悟った。感慨深くしている所に竹刀で背中を叩かれる。
「貴様、もっとシャキッとせんかあ」
理不尽な暴力と暴言を吐くこの人間が怖くて仕方ない。武器があれば殴って逃げ出したいところだ。飯の時以外はほとんど訓練の時間である。
疲れ果てていたところの香神にあのたらこ唇高圧上官はなぜか執務室に来るように命令してきたのだ。消灯21時にも関わらず呼ばれる根拠は分からない。思うことは早く終わって寝たいそう思うのだった。
「失礼します。香神訓練生であります。」
「入れ」と言われたのでドアを開けて入室する。すると上官の顔はにこやかだった。気味が悪いほどだ
「よく来たな」いやアンタが呼んだんだろと突っ込みそうになるのをこらえる。
上官が席を立ちあがり私の顔をクイッと上げる。「いい顔をしているな。あといい体をしているな」その目は汚物そのものだった。
「仮想上がりの女は栄養を取りすぎて肉付きが良くないと聞いていたがお前はいい体をしているな」この世で最もヒエラルキーを感じた瞬間と言っていいだろう。さらにその勢いを留まらず服を隊服のボタンを外そうとしていくのだ。叫ぼうと思いっきり声を上げた。「キャーーーーー」
「聞こえんよ。執務室ってのは防音が常にあるものなんだよ。それにこんなことはあちこちであるんだって外界の試練だと思って我慢我慢」
ふざけんじゃねえー種としていや個人の尊厳として何とかしなければならなかった。しかし昨日そこらの体力と女性その条件だけでもかなうわけがなかった。あっそういえば男性って確か・・・・・・・・・
渾身の力入れて股間を蹴り上げる・
<<ゴン>>上官は目が飛び出しそうな痛さを味わっただろう。全身で悶々と痛がっている。ただそれは私にとっては重い処分を下される瞬間でもあった。
<< >>
荒波のクルーザーで波風に揺れるそんなあくる日の朝焼け私は目覚めたのでした。あれそうだ思い出したあの上官の一件で重い処分が下ったんだ。私の働く先が決まった。工場作業員否 土木工事否 環境整備員否ちなみに今あげた外界の仕事は比較的楽な仕事だ。この他に就くのは命に関わる仕事になるのだ。そうその仕事とは・・・・
「何を黄昏ている。」
脱走しないか監視している男が眼を鋭くして言い放った
「お前がこれから行くところは死への片道切符になるだろう」
その声はどの脅しにも勝るとも劣らない恐怖を抱かせて来る
海岸に上陸して間もなく降ろされた。すぐ迎えが来るとか来ないとか・・・・
ヒノマル州
北方に位置する辺り森に囲まれた陸の孤島と言っていいだろう。ここまで言えばもうお分かりだろうこの世界はいわゆるディストピア後の世界だ。構図はこうだ。総人口1割が衣食住+娯楽と命が保証された完璧な世界に居て残った9割の人間は荒廃と化した文明の残り香でライフラインを何とか維持しようと躍起になっているのである。この星の総人口は1000万人。全盛期には100億人の人間が住んでいたのだとか・・・これだけ停滞したので戦争が300年以上起こっていない。国家が解体されたのだ。全盛期にも陰りが出ていたとかないとか数百年前に驚異的な感染症と大災害と世界大戦がフルコンボで発生した。(原爆は限定的な被害で済んだ)かつて国家意識によって国が発展したのに国家によって文明が崩壊するなんて皮肉な話だ。私がこれから務める職場は先ほど挙げた事象の事後処理する仕事といっていいだろう。足音が眼の間から近づいてく
「お前が香神ミオだな」
その男はぶっきらぼうに尋ねる
つづく