第1話 コミュニティ追放
山岳地帯の斜面にて
私は今男に首を絞められ生殺与奪の権を握られている。呼吸が荒くこのままでは息を絶えてしまうだろう。男は白目をむいて廃人と化していて正常とはいえない。腰回りのポケットから銃を取り出す考える間も無く銃口の引き金を引くパアンと煙の匂いと音が嗅覚、聴覚を香神の恐怖を駆り立てる。混乱が収まったとき目の前にいる男は倒れていた。恐怖ののあまり息切れが止まらない。仲間の隊員は私の肩をとんと叩く
「これが命なんだ」
それは単調なセリフと同時に心がえぐられるような気持になる。これはいったい何なのだろうか?
あの頃が懐かしい。何もしなくても生きれたあの日々がランクさえ1000位以内なら・・・・この公開が今なお続いている・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私は生まれてこの方働いたことがない。ニート?衣食住が保証され娯楽の体験も受動的で満足な世界にいるからだ。人間とは楽をして常に快楽を追求する生き物なのだ。
((香神様 お食事の時間でございます))
音声AIが話しかけてきて食事が出てきた。メニューはこんにゃくゼリー風サプリで栄養価は抜群だが・・・・
「たまには違うものが食べてみたいわね」
((学習しました。では明日はミートボールゼリー風サプリを提供いたします。味は濃厚で舌触り感覚も未知で楽しい食事となりましょう。こうご期待くださいませ!!))
大変ありがたいのだけどこのモヤモヤは料理の品を解決策と言いつつやり場のない愚痴をぶつけてるのに過ぎないのでおそらく満足することはないだろう
◇
とある学園の廊下にて
オレは今日後輩の女の子に呼び出されていた。
「〇〇さん突然どうしたの」
オレはさりげなく理由を尋ねる。というか今日も可愛いな〇〇さん
重ためのロングヘアーで瞳はルビーのように澄んでいて男子の間では人気なんだよな・・・
そんな彼女が一体何の用なんだろうか。思考しているうちに〇〇さんは口を開く
「先輩好きです。付き合ってください!!」
「ッ!!??」
まさかの人生初の告白ときた。ああついにモテ期が俺にも来たのだな。だがここで食いついてはダメだ恋愛は焦らずじっくり答えるものなのだ。なら答えは・・・・
「俺もだミカ・・・こんな俺でよければぜひ」
「先輩」
ミカの後ろの壁に手を置いてミカの顔を見つめる。顔が真っ赤になるミカであった。
「そうだ今日早速新作のゲームが手に入ったんだよな。一緒にやるか。今日さ親家にいないんだよな」
「えっそれって」
二人がその後どうなったのかは語るまでもないだろう………
◇
立体映像の前に立つ男は淡々とストーリーを解説していた。
「これが旧世紀21世紀の学園恋愛の様子です。」
「恋愛を通じて主人公の成長を育み精神的にも肉体的に大人を目指していく過程を描いている作品が多いですが中には遠回りしたりお互いを試したりと戦略的なものも数多く存在します。」
「現在の我々にも理解できる点はあります。二つを一つにする分裂を統一するという行為は今の社会世相を表していますし分かり合いたいという信念も同じです。」
映像の男は熱弁をして時折笑みをこぼしているように見えた
「だが所詮は実体のないものなので愛というのは月日とともに破綻してしまう。」
「当時の人は恋愛がリアルの挫折やもどかしさを物語で自分たちの心の隙間を埋めようとしていたんです。つまりそういった作品は心に穴の開いた人たちを囲んでお金に換えていたんです。」
現代では信じられないよね~ 当時の人はお金に依存しすぎ~WW
発表中にもかかわらず旧世紀の批判合戦のコメントが起こった
「ではこれで論評を終わります。ご清聴ありがとうございました。」
誰も真剣に聞いてないんだから形だけの挨拶とかいらないなーと思う一同の空気だった。
(( ランキング97位 ↑(+2)トリックNO1 前日比+5京2兆41億230P ))
トリックNO1さんの論評は評判がいいんだよな。とても自分とは住んでいる世界が違うな
((では続いて香神ミオの論評発表です。お願いします。))
◇
「財政破綻を防ぐため未来の子供たちに借金を残さないために増税を敢行致します。」
銭ゲバのような顔にされる側の人間は思っただろう
「反対~反対~〇〇総理は直ちに辞めろ~国民の生活は考えてないのか」
どう怒っていいのか分からないからこそ怒りをぶつけるそぶりを見せる国民たち
「この世界は一部の既得権益者による支配が有史以来永遠に続いています。皆さん目覚めましょう。この世界を変えるのは私たちであります。」
自分たちの存在意義を脅かされ見えない敵に怒りをぶつける信者たち
ワーワー感慨深く聴衆は共感してそれは同時に分断の象徴でもあるかのように・・・・
◇
「ちょ、ちょっと待ってください。」と論評中にも関わらず制止が入ってしまう。
「これはあまりにも抽象的で客観性が全くありません。根拠のないデタラメです。」
表面上は理性的だが怒り心頭の質問者に私は口を出せなかった。
「まずあなたの目線は庶民と大衆のポピュリズムの意見に左右されています。」
まず批判したうえで次のように述べる
「例えば税のあり方についての根本の部分を紹介したうえで複雑な計算式を打ち出すといったデーターを基にして論説をまとめなければなりません。」
香神はその批評にうまく反応できずにいた。手もぶるぶると震えだす今までこんな緊張なんてしたことなかったのに・・・
そんな香神の様子を見て溜息まじりに主催者はこう漏らす
((香神ミオさん論評の継続困難と判断しました。よって結果を発表させて頂きます。))
前置きなんていらん、結果など分かり切っている。処刑される3秒前の気分と変わらない
((ランキング1001位 (↓-2)香神ミオ 前日比-4億79万P))
予想通りの大幅マイナスだ。だが大丈夫次の発表者は自分より落ちこぼれだ。自力での生き残りが消滅したが今回は何とか生き残れるだろう。
((最後に藤堂ミコの発表ですが・・・棄権により(→±0)前日比ー1億P))
聞き間違いか?間違いならそう言ってくれ。確かに棄権はできるしかし-は1億なんかではない。1兆Pは取られるはずだ。だからこそ論評してあなたが外界に行くはずなのにどうして…
((よって今回の追放者が決まりました。香神ミオランク外により外界の防衛隊訓練施設に追放とします。1分後強制的にシステムからシャットダウンさせられ即外界の訓練施設へと移動してください。))
頭が真っ白になって所へ通信電話が鳴る。それは論評を棄権した藤堂ミコだった。
ガチャ…
「ミオあなたとはライバルでしたけどこれでお別れですわね」
これだけの事をしたのだからどれだけ残忍な言葉を浴びせると思ったらなぜか憐みだった。けど悪いことをした感じは全くなくカラッとしたものだった。
「何で棄権して1億ポイントで済んでるのよ。いったい何をしたの!!」
言葉は淡々と述べてるが語気には鬼気迫るものを感じざるを得ないだろう
しかし返ってきた答えは驚愕する内容だった
「試験官を売春したのよ。それで得た9999億ポイントを棄権に使えたの。」
何を言ってるのだ・・・確かに棄権はできる再三述べてきたようにだが
「ポイントは棄権には反映されないはずそういうルールだから」
そうこのコミュニティはルールを破れば罰せられるのだ。だから私は幼いころからそれに怯え同時に信仰してきたのだ。それなのになぜ彼女は平然と破ろうとするのだ
「ルール……」
「ルールはそれを管理する人には無効だわ。私がただ売春をしたと思っているの。空間と空間の受信を交信させるのに9999億Pは安すぎるわ。私はある人にルールを管理する人に持ち掛けたの。だから今回に限り特別に個人のポイントを棄権した人に使えるようにしたの。」
畳み掛けるようにさらに
「だからあなたも使えたのよ。私は卑怯でも何でもない公平に基づいて権利を発動しただけ。あなたは使わなかった…いえポイント自体足りなかったわね。それだけの差か。」
嫌味もないのに正論を?いや暴論をぶつけられそろそろ外界へ起動される時間がやってきた。別れ際藤堂ミコはこう言った
「あなたそんなノロノロしていたら外界の世界ではあっという間のお陀仏だよ。まっその前にここで楽した人間はまず強制的に肉体を動かさないといけない。体感トレーニングをやってみたけどあれは地獄ね。せいぜい頑張ってバイバーイ」
その笑みは作り物だった
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暗闇の無音まさに生命の誕生を思い出しそうなものだった
ゆっくりゆっくりと上へあがって暗闇から目覚めようとする。まず体が痛い背中、お尻、そして頭全身が痛みに襲われる次に目が光の反射でつり目から開かないが見えるのは天井だ。少しずつではあるが視界がくっきりと見え始める。人らしき人がいる。その人たちが優しく起こしてくれた。
コミュニティでは二次元のアバターだった。私は生まれて初めて今この瞬間鏡の反射でリアルでの自分の顔と対面を果たすのだった。髪はボサボサしていて眼は黒目で薄緑色の服上下着ていた。なんていうかあんまり可愛くないな。何だろうなこの気持ちは……
これから先私はどうなるのだろうか。予定では体が使い物になるまで防衛隊施設で訓練を重ねたのち馬車馬のように働くんだろうか。嫌だ今まさに不安に苛まれている香神だった
<つづく>