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うちの愛生ちゃん  作者: 横溝 啓介
1年2学期
79/79

芦ノ湖ブラウン編 第4話 箱根園でアザラシパンだにょん

読んで下さる皆様、心より感謝致します。


ゆっくりと物語を進めますので、気長にお付き合い頂ければ幸いです。

箱根園バス停、静かに停車。


バスのドアが「プシューッ」と開くと──


愛生:「わぁーっ、着いた〜っ!」

まるで修学旅行初日の小学生のように、

勢いそのままにダッシュでバスを飛び出す。


里香:「……(そんな慌てなくても)」

冷静沈着、姿勢正しく、まるで女教師のように

“普通に”降車。


穂乃花:「ん〜、あ、降りなきゃ〜……」

ふわり、ふわりとマイペースで階段を降りる。

(※誰よりもスローペース)


そして──


花音、最後尾。


ステップの前に立つと、

小さな姫のようにスカートの裾を持ち上げ、


「んしょ、んしょ……」

(※なぜか一段ごとに実況)


最後の一段で──


「えいっ!」


ふわりっ

両足を揃えて着地。

まるで舞台照明が差したかのように可愛くポーズ。


愛生(心の声):(ああ……また始まった……)


里香:(……イラッ)


穂乃花:(アホらしいけど……かわいいな、もう)


そして沈黙。

箱根園の爽やかな風が、4人の温度差をなだめるように吹き抜けた。


「水族館行こっ! アザラシさんにペンギンちゃん、早く見たいよ〜っ!」

テンション高めでスキップする愛生。


すると——


「も〜う、愛生たんったら〜」


前に立ちはだかる花音。

くるりっと1回転。スカートがふわりと広がり、光を反射してキラッ。


「チビっ子みたいにはしゃいじゃって、めっ、ですにょん」


にこっ、ぷんっ、のコンボ。

完全に“叱る”というより、演出。


愛生(心の声):

「……はぁ!? “ですにょん”て何語?

叱るなら普通に叱れーッ!」

(※サンリオ女子、心の中でツッコミ炸裂)


顔には出さないけど、眉の端がピクピクしている。


里香:「……出たよ、かにょん語。ウザ可愛いを通り越して、ただのウザい。」

冷静に毒舌。


穂乃花:(ふふっ、今日も元気だね花音ちゃん……)

全てを受け入れる天使モード。


花音:「もう、みんなそんな顔しちゃって〜!

怒ってるの? ふぇぇ、メルヘンランドでは笑顔がルールですにょんっ」


愛生・里香(心の声、完全ハモリ):「メルヘンランド帰れ。」


花音(突然):「次は〜〜お昼ご飯だにょんっ」


里香:「……普通に考えて、お昼ご飯の時間でしょ。」

(ツッコミがもはや義務)


穂乃花:「箱根園ランチ、ちょっと楽しみだったんだ〜」

ふんわり笑顔。……その笑顔がやたらと眩しい。


愛生:「わ〜いっ! フードコート!」

(食べ物の話題=即テンションMAX。)


4人はフードコートへ。

人の波、香ばしい匂い、鳴り響く「いらっしゃいませ〜」。


里香:「さて、何食べよっか?」


穂乃花:「うん、どうしよっか?」


2人が真面目に相談を始めたその瞬間——


ドドドドドドッ


愛生&花音:パン屋へ全速ダッシュ!


愛生:「アザラシパンとかお魚パンがあるよ〜っ!

キャーかわいい!かわいい!かわいいっ!」


「かわいいしか勝たん病」、本日も発症。


穂乃花:「ほんとだ〜、かわいいパンがいっぱい〜」

優しい微笑み、聖母のよう。


花音:「かにょんは〜、これと〜これと〜……あ、これもにょん」

(誰も聞いてないのに、可愛い指差し連打。しかも声のトーンがBGMより高い)


パン屋の店員(心の声):「天使が爆買いに来た……」


里香(腕組みしながら):「はぁ……私はパン食べたいわけじゃないけど、付き合ってやるか。」


愛生:「このアザラシの顔、見て! 見て! ほら、つぶらな瞳っ!」


花音:「それ、かにょんに似てるにょん」


里香:「いや、似てない。」


穂乃花:「ふふっ、みんな仲良しだね〜」


「こうして、箱根園フードコートでは“昼食”という名のメルヘンパン戦争が幕を開けたのであった。


4人そろってテーブルにトレーを並べ、手を合わせる。


「「「いただきまーす!」」」


その声はどこか明るく、しかしこのあと起こる小さな戦いを誰も知らない——。


花音(満面の笑顔):「ねぇ〜ねぇ〜、みんなでアザラシパン食べにょん」

(※なぜか“アザラシパン”を指定)


穂乃花:「うん、いいよ〜」

(天使のような素直さ)


愛生(疑惑の目):「……何を企んでるの、花音ちゃん?」


里香ニヤリ:「どんなアホっぷりを見せてくれるのか楽しみだわ」


4人、アザラシパンを手に持つ。

その可愛さが一瞬、食べる罪悪感を呼び起こす——が、食欲が勝った。


花音:「せーのっ、パクリにょん」


花音 → 尾っぽからモグモグ。


愛生 → 頭からガブッ。


穂乃花 → お腹からパクリ。


里香 → 背中からザクッ。


花音(即ツッコミ):「あ〜っ! 愛生ちゃん、アザラシちゃん、首チョンパだぉ〜」


愛生:「……うるさい」

(ウザさMAX、眉ピクピク)


花音(構わず続行):「あ〜、穂乃花ちゃんのアザラシちゃん、お腹が取れちゃったにょん」


穂乃花:「ふふっ(にこっ)」

(仏のような微笑み)


花音:「そして〜、里香ちゃんは背中から食べるにょんね〜。

背中から食べる人は〜、神経質で寂しがり屋で感受性が豊かなんだにょん」


里香:「……勝手に診断しないで。」


花音:「穂乃花ちゃんはお腹から食べたから、

好奇心旺盛で行動的、積極的で人気者になるタイプにょん」


穂乃花:「わぁ……なんか当たってるかも〜」

(素直に受け止める聖女)


花音(自慢げ):「そしてかにょんは尾から食べたから〜、礼儀正しく真面目タイプにょん」


愛生:「で、私は?」


花音:「愛生ちゃんは頭から食べたから〜……天然キャラ」


愛生:「説明、雑っ!?」

(ついにツッコミ炸裂)


花音:「だって〜、愛生ちゃんは“天然愛され妹ちゃんキャラ”だから〜

ひと言で表現できちゃったのにょん」


愛生:「花音ちゃんよりも愛生ちゃんのほうがお姉ちゃんだもん!」


花音:「かにょんのほうがお姉ちゃんだにょん!」


ぷく〜っと膨れる2人。

メルヘンの空気が一瞬、火花を散らす。


里香(冷静):「……どっちがお姉ちゃんキャラかでケンカしてる時点で、

2人とも子供っぽくて、妹キャラにしか見えません。」


(ズバッ)


愛生&花音:「ぐっ……」


穂乃花:「あわわ……ふ、ふたりとも落ち着いて〜」

(タジタジの平和主義者)


「こうしてアザラシパンは、乙女たちの性格診断と小競り合いの道具と化した。

だが、誰一人“焼き立てパンが冷めてる”ことには気づいていなかった——」


その頃——。

フードコートで「にょん語」が飛び交うのと同時刻、

芦ノ湖の駐車場の片隅では、男2人の世界が展開していた。


クーラーボックスに腰をかける圭介と明宏。

湖畔の風は爽やかだが、ランチは……そうでもない。


圭介:「よし、お湯沸いたぞ〜。ほら、注ぐぞ」


(どこからどう見てもカッポヌードル……に“似た”何かにお湯を注ぐ)


明宏:「……また“イーヨンのバリューヌードル”じゃないか」


圭介:「しょうがないだろ? カッポヌードルにそっくりで、

値段は半分以下なんだから。節約は男の美徳だぞ」


明宏:「……それ、美徳っていうより“哀愁”だろ」


(3分経過)


圭介:「さぁ〜3分経ったぞ! トマト味とトムヤムクン味、どっちにする?」


明宏:「なぁ……なんで普通の醤油とかシーフード味じゃないんだ?」


圭介:「特売品だったんだよ。買い物上手でしょ?」


明宏:「……そうなんだ(棒)」

(心の声:次回は絶対、自分で買いに行こう……)


二人、同時にフタをめくる。

もわっと上がる異国の香り。

そして——

風に乗って漂う、トムヤムの謎スパイス。


圭介:「芦ノ湖のほとりで食べるカップ麺、最高だな〜」

(やたら満足げ)


明宏:「バラしたブラウンが釣れてたら、もっと美味いけどね」

(まだ根に持っている)


風:「スゥ〜……」

湖面:「チャプン……」

2人:「ズズズ……」


対照的に——

その頃、箱根園フードコートでは女子4人が

「かわいい〜」とアザラシパンを撮りまくっていた。


一方こちらは、

カップの底に沈む“謎肉もどき”を見つめて無言になる男たち。


「箱根園でキャピキャピの女子たち。

対する男たちは、特売バリューヌードルでしみじみ。

湖畔に響くのは——すすり音と、わずかな後悔のため息であった。」


場面:箱根園水族館

愛生・花音・里香・穂乃花の4人が、

キャッキャと笑いながら入場。

入口のガラス越しに魚たちが泳ぐたび、

愛生のテンションがじわじわ上昇中。


穂乃花:「わぁ〜、お魚さん、いっぱいだね〜」


花音:「かにょんのお城にも似た感じがあるにょん」


里香:「……メルヘンランドに水族館あるの?」


花音:「あるにょん。イルカもしゃべるにょん」


里香:「(設定盛るなぁ……)」


愛生:「あっ! ペンギンちゃんコーナー!!!」

(※声のトーン3段階アップ↑↑↑)


ダッダッダッ

小走りで駆け出す愛生。

すでに視界はペンギンしか入っていない。


愛生:「かわいい〜〜い!!!」

ペンギンが羽をパタパタするたびに、

愛生も無意識で両手をパタパタ。


その姿を見た里香、ひとこと。

里香:「……同族かな?」


穂乃花:「うん、もう一羽増えてるみたい〜」


そんな中、アザラシコーナーに気付いた花音が

くるりとスキップして、ふわりとスカートを翻す。


花音:「みんな〜! こっちにょ〜ん」

(※何故か語尾が2音伸びている)


愛生・里香・穂乃花が合流すると、

花音は両手を後ろに組み、軽くスキップしながら振り返る。


ふわっ

髪が揺れ、笑顔がキラリ。

花音:「にょふっ」

(※首を傾げながら“計算済みスマイル”)


愛生(内心):「……また出た、かにょんの“あざとスキップスマイル”」


里香(冷静):「あれ、角度もタイミングも完全に狙ってる」


穂乃花ほわほわ:「うん……でも、可愛いから許す〜」


こうして、

ペンギンを真似る天然・愛生と、

カメラを意識したお姫様スマイル・花音、

それを冷静に観察する里香、

そしてマイペースに癒やされる穂乃花という

絶妙なバランスで、水族館タイムは続いていくのであった——。


一方で圭介達は

キャスト。巻く。

キャスト。巻く。

……無。


何事もなく、毎回ミノーが無事帰還する。

魚信あたりゼロ。

平和すぎて、もはや悟りの境地。


明宏:「(……なんで来ないんだよ、魚……)」

圭介:「(……頼む、俺じゃなくていい、明宏に食ってくれ……)」


圭介は弟の背中を見ながら、まるで神に祈るような気持ちで後ろを追う。


2人の間に流れるのは、風の音とリールの巻き音だけ。


ジ〜〜〜……カチッ。

ジ〜〜〜……カチッ。

(※繰り返しすぎてBGMになってきた)


見上げれば、快晴の青空。

風はやさしく頰をなで、湖面は鏡のようにキラキラ。

観光には100点満点。


圭介:「はぁ〜……愛生たち、今ごろキャピキャピしてるんだろうなぁ……」

明宏:「……」

圭介:「……釣りには最悪だけどな」


ため息、2段階深め。


芦ノ湖の透明な水が、今日は仇。

太陽光で水中は明るく照らされ、魚たちはルアーをじっくり観察。

“見切り職人ブラウン”たちは今日も平和にスルー。


しかも風はほぼ無風。

ラインの影はバッチリ見える。

まるで魚に「はい今、バレてますよ〜」と言われている気分。


圭介:「こりゃ……今日は厳しい釣りになるな……」

風の代わりにため息が湖面を揺らす。


空は笑っている。

湖はきらめいている。

そして2人は——ただ、無言で投げ続けていた。


まるで悟りを開きかけた僧侶のように。


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