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うちの愛生ちゃん  作者: 横溝 啓介
1年2学期
75/79

みんな天使

読んで下さる皆様、心より感謝致します。


ゆっくりと物語を進めますので、気長にお付き合い頂ければ幸いです。

「ん……?」

里香が足を止める。

前方に、ふわふわ天使みたいな2人組。

白と水色がまぶしい。


「……あれ誰?」


里香の脳内では、“知り合い検索ルーレット”が高速回転。

カチカチカチカチ……ピタッ。


(うーん、該当者なし!)

「私の知り合いにあんな天界オーラ放ってる人、いないんだけど……」


「えっ、あれ、愛生ちゃんだよ?」

穂乃花の天然観察眼が炸裂。


「えっ!? あれが!? 愛生!?」

里香、目を凝らす。


確かにあの髪型、あの背丈……でも、服が……!

ふわふわ天使界隈!?

(私の知る愛生は、もっと……こう、地に足ついた感じだったはず……)


「ということは……」

「うん、愛生ちゃんの隣は、花音ちゃんだと思うよ」

穂乃花がにこやかに断言。


「……えっ、えぇぇぇっ!?」

里香、現実を理解するまでフリーズ。

脳内で“状況処理中”の砂時計がぐるぐる回っている。


そんな間にも──

花音が愛生の手を引き、笑顔でダッシュ。


「愛生たん、行くよっ♪」

「ちょっ、まっ……!手、強いっ」

(肩が抜ける〜〜〜〜っ!!)と引きずられる愛生。


バタバタと駆け寄る2人。


「も、もしかして……花音嬢なの!?」

と驚く里香。


「うんっ、かにょんだお♡」


その瞬間──

「だお♡」の“お”のタイミングで、

花音は首をちょこんと斜め45度にかしげ、

キラキラ効果音が鳴り響く


ピコンッ(※脳内演出)


「か、かにょんって……本当に存在したんだ……!?」

「都市伝説じゃなかったんだ……!」

と衝撃を受ける里香と穂乃花。


その場には、

天使2人+庶民2人の、奇妙で愛しいしもむら対面劇が繰り広げられていた。


「……状況把握中……」

里香の脳内で、またもや“処理中アイコン”がぐるぐる。

(理解不能。天使が増殖している。誰か説明して……)


しかし──穂乃花は違った!


「花音ちゃん、かっわいい〜っ」

「愛生ちゃんも、かっっっわいい〜〜っ」


テンション爆上がりの穂乃花。

すっかり“天使界隈”に順応している。


「わぁ〜っ、穂乃花ちゃん、好き好き〜〜」

花音が抱きつく。


ぎゅうぅぅ〜っ。


「ひゃっ⁉ か、花音ちゃん……っ」

突然のハグに、顔を真っ赤にする穂乃花。

(え、えっと、これ、どこ見ればいいの!?)


その横で──

里香は、完全に置き去り。


(……誰か日本語に翻訳して。

この現象、どこの次元の文化なの?)


「そうだっ!」と花音がパッとひらめく


「4人みんなで、四つ子コーデしよっ」


「えっ、よ、四つ子……!?」

「え〜、嬉しいけど……今日そんなにお金ないよぉ〜」と穂乃花。


「ううん、大丈夫っ」

「穂乃花ちゃんとはお友達の印として、かにょんが買ってあげるから♡」


(また出た、かにょん経済圏……!)

愛生の背筋がゾワッとする。


里香はまだ、

“現実復帰プログラム”を読み込み中。

(……え、なに、今のハグ?そして次は何コーデ?)


そんな混乱もお構いなしに──

花音は両手を合わせて、

「お・ね・が・いっ」


その可愛い圧力に、

穂乃花も、里香も……抵抗不能。


「ちょ、ちょっとだけよ……?」(里香)

「わぁ〜っ、楽しみ〜!」(穂乃花)


花音、すぐさま行動開始。

2人の手を取り、ラックから次々と服を抜き出す。


「これとこれ〜!

はいっ、りかたんはこっち!

ほのかたんはこっち〜っ」


(※りかたん・ほのかたん:即席命名)


結果。

しもむらの試着室前には、

ふわふわ天使 ×4 の新種生命体が爆誕。


愛生 →(完全に流れに巻き込まれている)

里香 →(まだ現実にログインできない)

穂乃花 →(普通に喜んでる)

花音 →(全員をかにょん空間に拉致完了)


──こうして、

**“天使界隈しもむら支部”**が結成されたのであった。


─その日、ショッピングモールの通路を歩く4人の姿は、

どこからどう見ても異世界から迷い込んだ天使軍団だった。


ふわふわ、キラキラ、ひらひら。

天使界隈×4が一列で歩けば、通行人はつい二度見三度見。

幼児「ママ〜、あれプリンセス?」

母親「しっ、見ちゃダメ」


ピノノショップに立ち寄れば──


花音、キラキラ小物を両手に抱えながら大はしゃぎ。

「見て見て、ピノノちゃんの新作、羽根付きヘアピンなの〜っ」


愛生(もう羽根ついてるのに……)

里香(天使が羽根を“追加購入”してる……)

穂乃花(かわいい〜〜〜)


そして次の目的地、シストランスのカフェエリア。

天使×4が並んでボックス席に座るその光景は──

店員の心に「今日一番の混乱」をもたらした。


(なんだこの光の集団……!?)

(撮影か?インフルエンサーか?)

(いや、ただの高校生……!?)


里香、そっと花音に尋ねる。

「ねぇ、花音ちゃん……学校の時と今、全然違うけど、どういうこと?」


花音、にこっと微笑んで即答。

「学校のかにょんは“お嬢様”、学校外のかにょんは“天使”なの」


(※脳内に“説明されたのに理解度0%”の表示が点灯)


里香「……そ、そうなの……」

(今、情報量が多すぎて脳が再起動した……)


穂乃花「私は、どっちの花音ちゃんも素敵だと思うよ〜」

花音「わぁ〜っ、ほのたん、すきぃ〜〜」

愛生(……この人たち、体力どうなってるの?)


花音「お嬢様も天使も、み〜んな“かにょん”なんだよっ」

「って、ママが言ってたの」


愛生(……うん、ママもきっと大変なんだね……)


そこへ、花音のオムライスが到着


「わぁ〜っ、ふわふわ卵ちゃんっ」

「いただきまぁ〜す、あ〜ん、もぐもぐ、もぐもぐっ」


食べるたびに、BGMが幻聴でキラキラ鳴る(チリンチリン)

もはや“人間”ではなく“天界の食レポーター”。


店員(何この破壊力……)

隣の席のカップル(目が離せない……)


一方で、他3名は普通に食べている。

愛生「うん、普通においしいね」

里香「卵の火加減いいわ」

穂乃花「ふわふわだね〜」


──が、同じ“もぐもぐ”でも、花音だけ異様に尊い。

(同じ咀嚼動作のはずなのに、なぜこうも違うのか)

そして、食後の“花音劇場”第2幕。


「かにょんはメルヘンランドのお姫様

みんなにも“お姫様の印”をあげるねっ」


そう言って、ピノノショップで買ったキラキラ小物を、

1人ずつにプレゼント


穂乃花「わ〜っ、かわいい〜っ」

愛生「(受け取らないと帰れない……)」

里香「……(いや、これ本物の金額感なの?)」


花音の圧倒的“経済力と行動力”に、

里香、ようやく一言。


「……なるほど、やっぱり本物のお嬢様だわ」


愛生(ようやく納得したか……)


──こうして、天使界隈4人組による

「異空間ディナータイム」は、

周囲をざわめかせながら静かに幕を閉じたのであった。


食後のデザートも平らげ、

「かにょん劇場 in シストランス」は一旦幕を閉じた──

……はずだった。


だが、花音は立ち上がる。

「ねぇねぇ、愛生たんっ」

「せっかくだから、記念に“天使プリ”撮ろっ」


愛生「……プリ? あぁ、プリクラのこと?」

花音「そ!ピノノプリンセスルームにあるんだよ〜っ」


嫌な予感しかしない愛生。

(さっきから“かにょん”が提案すること、全部フラグ立ってる……)


ピノノプリンセスルーム前。


きらきらハートに羽根モチーフの壁。

「天使ちゃん専用」と書かれた看板。

まるで“かにょんのために作られた空間”のようだ。


店員「ようこそ〜天使プリへ〜」

花音「かにょんたち、天使4人で撮るのっ」


店員「(4人……天使……?)あ、はい!」

愛生(“天使”ってセルフジャンル登録できるんだ……)


撮影準備中。


花音、手際よく配置を決める。

「かにょんはセンターで、右に愛生たん、左に穂乃花ちゃん。

里香ちゃんはクール系天使だから、少し後ろで見守る感じっ」


里香「な、何そのポジショニング……!」

花音「ビジュアルバランスっ」

(里香、反論しようとするも“ビジュアルバランス”の圧に完敗)


穂乃花「わぁ〜、なんかアイドルみたいだねっ」

花音「そう、“天使ユニット”だよ! ユニット名はね……」

(ドラムロール)

「“Angelic☆Matesエンジェリック・メイツ”っ」


愛生(なにその、明日にもデビューしそうなネーミング……)


撮影開始!


1枚目:「天使のポーズでハート〜」

→ 花音のハートポーズだけやたら完璧。

→ 愛生、タイミングずれて半目。

→ 穂乃花、にこにこ。

→ 里香、凛々しく仁王立ち。


花音「もう一枚いこっ! 次は“空飛ぶポーズ”っ」

→ 全員両手を広げる。

→ 背景の羽根エフェクトと完全一致。

→ 周囲から「本当に飛びそう……」の声。


3枚目は“天使のウィンク大会”。

結果:


花音 → 完璧アイドルウィンク


穂乃花 → ふにゃっとした笑顔


愛生 → 瞬きの途中で半目


里香 → 両目ぱっちり、魂の抜けた表情


プリ機から出力される写真。

「天界集合写真」「地上降臨4人組」「キラ天使たち」など、

自動タイトルが妙に合っている。


花音「かわい〜〜っ、これは家宝レベルだよ〜っ」

穂乃花「ほんとに天使みたい〜」

愛生「(……地上に戻りたい)」

里香「……これ、学校で見られたらどうしよう」


最後に花音がスマホを掲げ、満面の笑みで言う。

「じゃあ次は、このプリを背景に“記念自撮り〜っ」


愛生「えっ!? また撮るの!?」

花音「うんっ、今日の“天界進出記念日”だからっ」


──その日、モール中のインスタ映えゾーンに

“天使界隈4人組”の笑い声が響いたという……。

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