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うちの愛生ちゃん  作者: 横溝 啓介
1年1学期
41/83

夏休みキャンプ ⑥

読んで下さる皆様、心より感謝致します。


ゆっくりと物語を進めますので、気長にお付き合い頂ければ幸いです。

一泊二日の楽しいキャンプもいよいよ終盤。

チェックアウトのため、全員でテント撤収&片付け開始!


「よーし、みんなで手分けしてやるわよー!」

里香がリーダーらしく号令をかけると、部員たちは一斉に動き出した。


――が。


「うわぁ〜、畳んでも畳んでも三角にならない〜!」

愛生はテントの布地と格闘しながら、なぜか一人で布に包まれてミイラ状態。

「愛生ちゃん、それじゃ片付けじゃなくて遊んでるだけ……」

里香が額に手を当ててため息。


一方の穂乃花は――

「えっと……ここをこうして……よいしょ」

ゆっくり、のんびりした動作なのに、あっという間に一つ畳み終わる。

「さすが穂乃花ちゃん! 仕事が丁寧〜!」

明宏は穂乃花にべったりくっついて、荷物を運ぶアシスタントに早変わり。


「明ちゃん、ちゃんと持ててる?」

「も、持ててますっ!」

(持ててないけど……!)


里香はといえば、無駄のない動きでペグを回収し、

ロープをクルクルと綺麗に巻き取り、テントをぴっちり畳み終える。

「はい、次のテント行くわよ」

と涼しい顔で指示。


その横で――

「よっこいしょ、っと……」

圭介は車へ荷物を運搬中。

クーラーボックス、椅子、テント、飯盒……と次々と積み込み、

もう完全に運搬係のおじさんポジション。


寺ノ沢先生はそんなみんなを見守りつつ、

「愛生ちゃん、ロープは絡まないようにね〜」

「明宏くん、穂乃花さんばかりに頼らない〜」

と声をかけながら部員たちの指導役に徹していた。


そして最後、

愛生がようやく畳めた……と思ったテントは、

よく見るとただ丸めただけ。

「えへへ〜、これでも畳んだつもりだったんだけど……」

「……まあ、形にはなってるから、今回は許すわ」

里香が苦笑いしつつも、優しくフォロー。


こうしてバタバタしながらも、

なんとか撤収完了!

車の荷台はまるでパズルのようにピッタリ積まれ、

圭介は一人ドヤ顔で親指を立てていた。


キャンプ場を無事チェックアウトした一行、次なる目的地は――


「さぁ〜て、昼ごはんは……ほうとう屋さんに行きましょう〜!!」

寺ノ沢先生、車のエンジンをかけるより早く、テンションMAX!

まるで遠足の小学生みたいに両手をガッツポーズ。


「先生、ほんとほうとう好きですね……」

助手席の里香は、窓の外を見ながらクールにボソッ。

(はいはい、お約束お約束……)という雰囲気。


「ほうとう? なにそれ? 食べ物?」

愛生はきょとん顔。


「うどんみたいなやつ?」

明宏も首をかしげる。


「ふふ……ほうとうはねぇ〜、かぼちゃが甘くてホクホクで……」

穂乃花はもう脳内で湯気が立ち上ってるレベルの妄想タイムに突入。

「かぼちゃさんがとろ〜っと溶けて、あったかいお味噌が……あぁ〜幸せぇ……」

両手を頬に当て、トロ〜ンとした表情。


「えっと……昼ごはんは……ほうとう……了解です……」

圭介は運搬係の疲れで魂が抜けたような声。

(でも、先生が行くなら俺も行く……)と、完全に随行車両扱い。


「よーし、かぼちゃパワーで午後も元気に行くぞ〜!」

寺ノ沢先生、ハンドルを叩いて士気を上げる。


「……はいはい、じゃあ出発しましょ」

里香が少し呆れた笑みを浮かべ、

車列はほうとう屋へ向けて走り出した。


一行はほうとう屋に到着。

木の香りがする落ち着いた店内に通され、目の前にはぐつぐつ煮える鉄鍋ほうとう。


「うわぁ〜! お鍋ごと来たよ! あっつあつ〜!」

愛生、顔を近づけすぎて湯気でメガネもしてないのに目が曇るレベル。


「ふぅ……普通に美味しいわね」

里香はレンゲを持ったまま、涼しい顔で一口。

(さすが里香ちゃん、食レポも上品)と圭介、勝手に感心。


「んんん〜っ♡ かぼちゃがとろ〜っと甘い〜!」

穂乃花は手を合わせて、まるで天使が降臨したかのような笑顔。

「かぼちゃさん、ありがとう……」と謎の感謝まで始まる。


「お、おい……熱い……でも……うまい……!」

明宏は汗だくになりながら、ハフハフ、ズズズと食べ進める。


「ふーっ、ふーっ、はふっ! あつっ! でも美味しいっ!」

愛生は一口ごとにリアクションが大きすぎて、まるで食レポ番組。

「お兄ちゃんも早く食べてみて!」と圭介の口にまで押し込みそうな勢い。


「こ、これは……確かにうまいな……」

圭介、猫舌のくせに調子に乗って食べて舌を火傷。

(あ〜あ、だから言ったのに……)と心の中で笑う里香。


店内はぐつぐついう鍋の音と、

愛生&明宏の「はふっ」「あちっ!」「うまぁ!」の声で賑やか。

一行は、ほうとうの温かさと一緒に、心もお腹もポカポカになった。


昼食後、一行は道の駅に立ち寄り、信玄餅を両手いっぱいに抱えて満足そうな愛生と明宏。

「それ、お土産じゃなくて自分で食べる用でしょ?」と里香がクスッと笑う。


そして、学校へ帰る前。

里香は、ちらりと圭介の方を見やり、(2日間、荷物運びも頑張ったし……まあ、これくらいはしてあげてもいいわね)と心の中でつぶやいた。


「圭介くん、帰りは私、そっちの車に乗ってあげるわ」

とあくまでさらっと告げる里香。


「えっ!? マジで!? やった!」

圭介は運転席でガッツポーズ、まるで宝くじが当たったかのような喜びっぷり。


一方、寺ノ沢先生の車では――

愛生「お兄ちゃん、どうせデレデレしてるんでしょ……帰ったらまたお仕置きね」

明宏「……圭介兄ちゃん、生きて帰れるかな……」

穂乃花「(でも、なんだか嬉しそう……)ふふっ」


そして、圭介の車。

助手席の里香は腕を組み、すました顔。

「べ、別に特別扱いじゃないからね。ボランティアした人へのサービスよ」


(あ、これ完全に“ご褒美タイム”じゃん……)

圭介は心の中でガッツポーズを二回目決めた。


帰り道、圭介の車内。

「いやぁ〜二日間、楽しかったね!湖の景色、最高だったし、朝ごはんもキャンプ感満点でさぁ〜!」

圭介はハンドルを握りながらハイテンションでしゃべり倒す。


「うん」

里香は窓の外を見たまま、相槌のみ。


「いや〜、でも本栖湖は広いよね!あの水かけ合戦、めっちゃ面白かったな〜!あ、ビーチボールもさ――」

「うん」

(え、今の聞いてた?)


「そうそう!文化祭の出し物もさ、みんなでキャンプ飯とか作ったら面白いと思わない?」

「うん」

(話題、完全スルー!?)


圭介はめげずに次から次へと話を振る。

まるで落語家の一人芝居状態。


一方の里香は――

窓の外の景色を眺め、すました横顔。

長いまつげが揺れて、なんだかポスターみたいにキレイ。


圭介の心の声:

(これは……デートだよな? ドライブデートだよな!?)

(いや、ただの帰り道……でも、これは……デートだよな!!)


圭介、心の中でガッツポーズ連発。

一人だけ勝手に青春ラブコメの主人公モードに入っていた。


そして、一行は無事学校へ到着。

車を降りた里香はサラッと一言、

「運転お疲れさま」

と微笑む。


圭介、心の声:

(……! 里香ちゃんの笑顔ってホントかわいいよな〜!!)

テンションが頂点に達し、ニヤニヤが止まらない圭介であった。


部室にキャンプ用品を置き終えた一行。

山盛りのテントや寝袋を見て、寺ノ沢先生が手をパンと叩く。


「はい!みんな、明日は天気も晴れ予報です。テントと寝袋は天日干ししましょう。なので――」


「はーい!明日も集合ですねー!」

と部員達、声をそろえて元気よくお返事。

(なんだかもう一泊するテンション)


そして先生は改めて圭介へ向き直り、深々と一礼。

「お兄さん、二日間のボランティア、本当にありがとうございました」


「いえいえ!こちらこそ、めっちゃ楽しかったです!また呼んでください!」

と圭介も満面の笑みで深々とお辞儀。


……しかし部員達はというと、もうテンションが限界突破。

「さよならー!」「また明日ー!」「おつかれさまでしたー!」

声の大合唱しながら手をぶんぶん振り、廊下を小走りで駆けていく。


愛生なんて、バイバーイと全力で両手を振りながら転びそうになる。

里香はそんな愛生の背中を見て、すっと冷静に一礼。

穂乃花はほわ〜んとした笑顔で手を振り、まるで天使の見送り。


圭介、思わず呟く。

「……あれ?解散なのに、なんか青春ドラマの最終回みたいじゃない?」


そんな圭介の言葉を聞いて、寺ノ沢先生はニコッ。

「ふふ、部活はいつでも青春ですからね」


部室の前には、夕焼けの光とみんなの笑い声だけが残っていた。

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