夏休みキャンプ ⑤
読んで下さる皆様、心より感謝致します。
ゆっくりと物語を進めますので、気長にお付き合い頂ければ幸いです。
朝食と片付けが終わったら──
「みんな泳ごうよ〜、オ・ネ・ガ・イ」と愛生はぶりっ子にお願いすると
「はい、はい、解ってるから」と里香は呆れながら返事をする
そして、みんなそれぞれ水着に着替えて登場。
まずは穂乃花。
シンプルなネイビーのワンピース水着……なのに、胸の存在感だけは圧倒的。
明宏、チラッ……(ゴクリ)
穂乃花「? なに?」
明宏「い、いや、なんでもないっ!」と目を逸らし、心臓バクバク。
続いて愛生。
ピンクのフリフリつき水着に浮き輪を抱えて「じゃーん!」とポーズ。
「愛生ちゃん、その水着かわいい!」と穂乃花がパチパチ拍手。
「でしょ〜?えへへ〜」と愛生はご満悦。
そこへ里香登場。
落ち着いた色合いのビキニ。
露出は多いのにいやらしさはなく、むしろ凛とした雰囲気を引き立てている。
「わぁ〜、里香ちゃんの水着、大人っぽくてすっごく似合ってる!」と穂乃花。
「本当、すごく綺麗〜!」と愛生も目を丸くする。
里香は少し頬を赤らめて、
「ありがと……ちょっと、頑張って選んだんだから」
と、控えめに微笑む。
湖畔が一気におしゃれなリゾートみたいに華やぐ。
一方、圭介は……
(あれ……もうこの3人だけで完結してない?俺、完全にモブキャラじゃん……)とポツン。
それでもつい、里香の上品なビキニ姿に目を奪われてしまい、
「おおっ……」と声が出る。
その瞬間──
「なに見てんのよっ!」
愛生がギュッと圭介の腕をつねる!
「いってぇ! 痛いって愛生!」
「もう、変なとこ見ないのっ!」
(……変なとこじゃなくて普通に……いや言わない方がいいな)と圭介は心の中で小さく反論。
里香はそんな2人を見て、くすっと笑う。
「ふふ、仲がいいわね」
と、あくまで上品に言い残し、そっと湖に向かう。
愛生は頬をぷくっとふくらませて「むぅ〜っ!」と怒るが、
穂乃花はのんびり「ふふっ、ほんと仲良しだね〜」と微笑んでいる。
そして全員で湖へダッシュ!
キラキラした湖面に飛び込むと、冷たい水しぶきがパシャーン!
まるで青春映画みたいな本栖湖の朝が始まった。
湖畔はすっかり夏モード!
透明度の高い本栖湖に、みんなが次々と入水していく。
まずは愛生。
「わーい!しゅっぱーつ!」
ピンクの浮き輪に抱きつき、犬かきみたいにバシャバシャ進む。
まるで小学生の水泳教室、でも本人は大満足の笑顔。
「ぷかぷか〜、気持ちいいよ〜!」
浮き輪に寝転んで手足をバタバタ、湖の真ん中まで行く気満々。
一方で、岸近くでは水かけ合戦が勃発!
「そりゃーっ!」と明宏が思い切り水をかけると、
「きゃっ!」と笑いながら水をかえす穂乃花。
動きはおっとりだけど、意外と的確に水を飛ばしてくる。
里香はというと、
「もう、子どもっぽいわね……」といいつつ、
ぱしゃっ、と手で静かに水をかける。
でもその水しぶきが絶妙に顔面直撃!
「わぷっ!?」と明宏がびしょ濡れになり、
「やったわ」と小さく微笑む里香。
知的で上品なのに、さりげなく勝負強い。
「穂乃花先輩、行くよー!」
明宏が再び水をすくい、穂乃花へ豪快にかける!
「ひゃぁっ! 冷たい〜!」
穂乃花は慌てて顔を隠すが、ふわっと笑顔になり、
「明ちゃん、元気いっぱいだね〜」と癒しの一言。
明宏のテンションはさらに爆上がり。
岸では圭介と寺ノ沢先生が見守り中。
「青春してるなぁ〜、いいなぁ〜」と先生はニコニコ。
圭介は、湖面を見つめながら、
(あれ、俺も水かけたい……でも参加したら完全に子ども扱いされそうだし……)
と、ちょっとだけ参加したそうな顔。
愛生はそんな圭介を見つけ、
「お兄ちゃんも来なよ〜!」と手を振る。
「だ、大丈夫!お兄ちゃんは監督だから!」
と言いつつ、ちょっとだけズボンをたくし上げて足だけ入水。
「ねぇねぇ、愛生ちゃん。浮き輪貸して〜」と穂乃花。
「ダメー!これは愛生の〜!」と全力拒否、
でもちゃっかり穂乃花の腕を掴んで引っ張り込み、二人でぷかぷか。
水面からはじける笑い声、湖面に広がる水しぶき、
まるで青春映画のワンシーン。
里香は少し離れた場所で上品に水をすくいながら、
「……こういうのも悪くないわね」
と、ちょっと嬉しそうに目を細めていた。
穂乃花がビーチボールを取りにやってきた。
「ビーチボール、借りにきました〜」といつものゆるっとした笑顔。
圭介はそのタイミングで声をかける。
「穂乃花ちゃん、さっき明宏を慰めてくれてありがとう。」
「えっ?」
少し驚いた表情の穂乃花。
「そんな……別に大したことしてないですよ?」
「いやいや、あれで明宏、だいぶ落ち着いたんだ。助かったよ。」
圭介が真面目な顔で言うと、
穂乃花は少し頬を赤らめて、
「私、弟と妹がいるんです。
だから、困ってるお兄さんを見ると、なんか放っておけなくて……」
圭介は「そっか……ありがとう、本当に助かったよ」と、ますます感心。
穂乃花はちょっと恥ずかしそうに
「きっと明ちゃんも、お兄さんや愛生ちゃんに褒められたり叱られたりしても、
結局甘えちゃうと思うんです。
だから私がちょっとケアしなくちゃって……」
指先でビーチボールをコロコロ転がしながら、照れ笑いする穂乃花。
圭介は心の中で(この子……高校1年生なのに、考え方しっかりしてるな……)と感心してしまう。
「ほんと、しっかりしてるよね」と思わず口にすると、
穂乃花は「えへへ……」と控えめに笑った。
その柔らかな笑顔に、圭介は思わず心の中で(天使だなぁ……)と呟いてしまったのだった。
が、次の瞬間。
湖畔で里香が「なに二人で会話してんの?」とジト目でこちらを見ている。
圭介の胸はドキリ。
(やべ、里香ちゃん見てた……)
そして、なぜか内心ニヤける圭介。
(……やっぱ俺、天使ちゃんより小悪魔ちゃんの方が好きなんだよな)
と、せっかくの「天使ポイント」を秒で帳消しにする残念兄。
穂乃花は(あれ? お兄さん、なんでニヤけてるんだろ……)と首を傾げるのだった。
今度は圭介も含めてビーチボールでバレーボールもどきが始まった。
「はい、いくよー!」と愛生が優しくトス、
「ナイスキャッチ♡」と里香が軽やかにレシーブ。
女子3人と明宏の和やかでキャピキャピなビーチボール回し……
かと思いきや、圭介の番になった瞬間、空気が一変した。
「……お兄ちゃん、構えてね♡」
愛生の笑顔がめちゃくちゃ怖い。
ドゴォン!!
愛生、全力スパイク。
「おわっ!」
圭介、顔面直撃。
続けざまに
「はい、圭介くん、行よ〜」
里香がしなやかなフォームでスパイク!
バシュッ!
またも顔面ヒット。
「な、なんで俺だけ狙うんだよぉ!?」
必死に抗議する圭介だが、
愛生はにっこり笑って、
「お兄ちゃん、さっき穂乃花ちゃんとニヤニヤしてたでしょ?
お仕置きだから♡」
里香も涼しい顔で
「……別にいいけど?でも私の前でニヤけてるの、ちょっと癪なのよね」
と、静かに宣告。
──その瞬間から、完全集中攻撃が始まった。
ドン! バシッ! ドゴォン!
ビーチボールが次々と圭介の顔面へ襲いかかる!
「やめろぉ!俺何も悪いことしてない!!」
圭介、泣きそうになりながら逃げ惑う
一方その頃──
穂乃花は「え?え?なんで圭介さんだけ集中砲火?」とポカーン。
寺ノ沢先生は腕を組んで
「……なるほど、これは恋愛フラグの処刑シーンですね」
と、妙に納得してクスクス笑っていた。
圭介、ビーチボールの猛攻を避けきれず、
ついに両手を高く上げて、
「もぉ〜〜やめてくれぇぇぇーーー!!!」
湖に向かって絶叫!
その姿を見て、愛生は腕を組み、
「ふふっ♡ じゃあ、反省したってことで許してあげる」
と勝ち誇った笑顔。
……しかし、問題は里香だった。
無言。
ただ静かに、じーーっと圭介を見ている。
(え、なに……こわいこわいこわい!!)
圭介、内心パニック。
湖面からゆっくり上がるときも、
「フ、フンッ……!」と鼻で笑っただけの里香。
そのさりげない仕草に、圭介は全身から冷や汗。
「……ご、ごめんなさい……」
完全敗北宣言の圭介。
そんな彼の様子を見て、穂乃花はくすっと微笑み、
明宏は「圭ちゃん、完全にしつけられてるな……」とぼそり。
寺ノ沢先生は肩を震わせて笑いをこらえていた。
「皆さん、そろそろ時間ですよ〜!」
湖畔に響く寺ノ沢先生の声。
まるでゴングが鳴ったかのように、
圭介はほっと胸を撫でおろした。
「ふふ……時間に助けられたわね」
里香が唇の端を上げて、不敵に微笑む。
(や、やばい……その笑顔……)
圭介、顔が一気に真っ赤になり、
胸を押さえながら思わずガクッと膝をつく。
「キュン死にしそう……!」
湖面に反射する自分の情けない顔を見てさらに赤面。
「ちょっ……圭ちゃん、何してんの……?」
明宏がドン引き。
「お兄さん、そんなことで倒れないでくださいね〜」
寺ノ沢先生は苦笑しつつも半分呆れ顔。
一方で里香は涼しい顔のまま、
「……じゃ、行きましょ」
と何事もなかったかのように立ち上がり、
圭介はその後ろ姿を見てさらに崩れ落ちていた……。




