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(エリアフィッシング)管理釣り場へ行く①

読んで下さる皆様、心より感謝致します。

ゆっくりと物語を進めますので、気長にお付き合い頂ければ幸いです。

翌日、午前3時。


圭介は眠い目をこすりながら布団から抜け出した。

管理釣り場は午前7時オープン、つまり午前5時には家を出たい。

圭介は愛生や明宏よりひと足早く起きて準備を整えるつもりだったのだが。


リビングに行くと、すでに明宏が釣り具を整理中。


 「明くん…朝弱いんじゃなかったのか?」と圭介が目を丸くすると、


明宏は得意げに 「釣りの日は別腹…じゃなくて別時間なんだよ」 と妙な言い訳をする。

普段は学校に遅刻ギリギリで駆け込むくせに、このやる気。


 「昨日は楽しみすぎて、あんま眠れなかった」と話す弟に、


圭介は 「遠足前夜の小学生かよ」 と苦笑した。


釣り竿、リール、ルアー、ランディングネットと順番に車へ積み込み、 「釣り具、よし!」。

一方、もちろん愛生はまだ夢の中。


 「愛生だけまだ積み込んでないな。寝坊助だなー」と明宏が呆れたように言う。


それを聞いて圭介は、 「お前だって毎日母さんに寝坊助って叱られてるだろ」 と心の中で突っ込み、

さらに呆れた。


時刻は午前4時半。出発予定の30分前になっても、愛生はまだ夢の中だ。

仕方なく圭介は愛生を起こしに部屋へ向かい、コンコン、とドアを軽くノックし、

 

 「愛生ちゃん、起きてる? もうすぐ出発の時間だよ」と声をかける。


返事はない。

圭介はため息をつきながら部屋に入り、愛生の肩を軽く揺すった。


 「愛生ちゃん、起きて〜、釣り行くよ」


愛生は眠そうに目をこすりながら、あくび混じりに 「おはよう」 とだけつぶやく。

強い眠気に抗いながら、なんとか顔を洗い、着替えを済ませて車に乗り込んだ。


出発すると、愛生は助手席で早くも二度寝。

一方、大好きな釣りに胸を躍らせる明宏は後部座席で目をギラギラさせ、まるで戦闘前の武将のように

殺気立っていた。


高速道路を抜け、車は山あいの町へと入っていく。

まるで愛生の釣りデビューを歓迎しているように天気は快晴、川沿いの小道を抜けると目的地である

ストリームタイプの管理釣り場が見えてきた。


駐車場にはすでに何台もの車が並び、釣り人たちが川沿いで準備を始めている。

明宏は後部座席から身を乗り出し、 「おおー! もうみんなやってる!」 と興奮気味。


愛生はまだ半分寝ぼけたまま、助手席で首をカクカクさせていたが、圭介が 「ほら、着いたぞ」 

と声をかけると、ぱちっと目を開けた。


 「わぁ…川きれい!」と一瞬で目が覚めたようだ。


澄んだ水がゆったりと流れ、いくつもの区画に仕切られたストリームタイプの管理釣り場。

川幅は広すぎず、水深も浅めで、足場もきちんと整備されている。

流れは穏やかで、初めての人でも安心して竿を出せそうだ。

区画ごとに瀬や小さな淵が配置され、魚が着きやすいポイントが分かりやすく作られている。


 「わぁ〜、川ってもっと速く流れてると思ってた!」 と愛生は目を輝かせ、パステルカラーの

ルアーを手にくるくる回す。


一方の明宏は、 「なるほど…あの淵の脇、絶対魚いるだろ」 と腕を組んで真剣な表情。


そんな2人の様子を見て、圭介は 「よし、先ずは受付で釣り券を購入するぞ」 と愛生と明宏を促す。


3人は管理棟の受付へ向かい、釣り券を購入することにした。

木造の小屋の中には、年配の管理人がにこやかに座っており、壁には釣り場のルールや区画の案内図が

貼られている。


 「1日券、大人1枚、高校生1枚、中学生1枚お願いします」


圭介がそう告げて料金を支払うと、管理人は


 「放流は午前9時半と午後1時の2回に分けて行います。放流直後はよく釣れますよ」


と笑顔で釣り券を手渡してくれた。


購入した釣り券は、決まり通り見えやすいように帽子にクリップで留める。


そのとき、愛生が 「あれ? 私、帽子持ってない!」 と気付いた。


 「ちゃんと準備してあるよ」 圭介は当然のように車から愛生用の帽子を取り出す。


しかし、差し出されたのは落ち着いた色合いのアウトドア用キャップ。


 「えーっ、可愛くない!」と愛生は口を尖らせる。


圭介は少し笑って、 「今日いい子でいたら、次は可愛い帽子を買ってあげるから」 と、

なだめるように言った。

そう言いながら、寝癖がぴょこんと立った愛生の頭に、釣り券付きの帽子を半ば強引にかぶせる。


 「わっ、ちょっと! 髪ぐちゃぐちゃになるー!」 と抵抗する愛生に、明宏が 

 「もう十分ぐちゃぐちゃだよ」 とニヤリと突っ込み、愛生がムッとするのだった。


3人は区画の川辺に立ち、澄んだ水面をのぞき込む。

石で上手に仕切られた流れの中、銀色の魚影がキラキラと群れ泳ぐのが見える。

 「わぁ! いっぱいいる!」と愛生が目を輝かせ、


明宏も 「今日は爆釣だな!」 とテンション急上昇。


 「そうそう、偏光グラス渡すの忘れてたよ」


圭介は偏光グラスを1つ愛生に手渡した。


 「わぁー、水の中よく見えるよ」


愛生は少し驚いた様子で水中を隅々まで見ている。


 「偏光グラスはその名の通り水面の反射光やギラつきを効果的にカットする特殊なレンズ 

  なんだよ」


圭介は少し得意げに説明すると、愛生はニコリと笑顔を見せる。


じゃあ釣り竿をセットしようか、圭介は愛生の釣り竿にリールを取り付け、ガイドに糸を通し始める。


ところが、自称“指南役”のはずの明宏は、自分の準備が終わった瞬間、まるでスタートダッシュを決める短距離走選手のように川へ向かって一直線。


 「じゃ、先に様子見てくるわ!」 と一言残し、すでにルアーを投げ始めていた。


 「おいおい、先生! 弟子を置き去りにするな!」 と圭介が苦笑しながら突っ込む。


愛生はというと、竿を持つでもなく岸辺で足踏みしながら、「明くん先に行っちゃったよ! 早く早くー!」と、遠足でバスを見つけた小学生みたいに急かしてくる。


圭介は半分ため息、半分笑顔で 「はいはい、って、俺まだ自分の竿にも糸通してないんだけどな」 とぼやきながら、せっせと準備を続けた。


圭介はようやく愛生と自分の準備を終え、2人そろって釣りを開始する。

愛生はタックルボックスをゴソゴソとあさり、金魚の形をしたクランクベイトを取り出した。


 「カワイイからこれにする!」と即決。


竿先から垂れた釣り糸を見ると、先端に小さなクリップのような金具がついているのに気づき、首をかしげる。


 「ねぇ、お兄ちゃん。このクリップみたいなの何?」


圭介は微笑んで説明する。


 「これはスナップって言うんだ。ルアーを変えるたびに糸を結び直すのは面倒だから、

 こうやってクリップみたいに付け外しできるようにしてるんだよ」


 「へぇ〜、便利なんだね!」と愛生は感心しながら、金魚ルアーをカチッとスナップに

 取り付けた。


 「いいかい、まずはお兄ちゃんがお手本を見せるからね」


圭介は愛生の前で竿を構え、キャストの手順を見せようとした――その瞬間、


 「おーい!」


明宏の声が響き、見ると向こうで手をブンブン振っている。どうやら1匹目のニジマスが釣れたらしい。


 「やったな〜! すごいすごい!」


圭介も思わず手を振り返す。


どうやら釣果を見せたくて仕方ないようで、明宏は 「こっちこっち!」 と手招きしている。

せっかく愛生に投げ方を教え始めたところなのに、わざわざ見に行かないといけないのか……正直めんどくさい、と圭介は心の中でぼやく。


 「明宏を見てくるから、少し待っててね」


そう告げて駆け寄ると、明宏が得意げに掲げた魚は――全長15cmほどの小ぶりなニジマス。


(ちっちゃ……)と圭介は思ったが、 「お〜、もう釣ったの? すごいじゃん!」 ととりあえずおだてる。


 「まぁな。こういうのはポイント選びが大事なんだよ。最初の1匹にしては、まあまあかな」


と、明宏は胸を張って言い放った。


呆れつつも 「なるほどね〜」 と感心したふりをして、圭介は急いで愛生の元へ戻る。


 「早く教えてよ」


そこには、待たされて少し膨れっ面の愛生が待っていた。


そこで、圭介は愛生にキャスティングの基本を教え始める。


 「右手でルアーロッドを持って、リールのフットを中指と薬指の間に挟むように握るんだ。

 親指はキャストするとき、ロッドの真ん中あたりに乗せる。こうすると、振りかぶったときに

 ルアーロッドが安定するから」


愛生は言われた通りにルアーロッドを握り、「こう?」と確認する。


 「そうそう。次に、リールのベールを返して、糸を人差し指に引っ掛ける」


愛生は少しぎこちなくベールを返し、糸を引っ掛けた。


 「で、ルアーロッドを振り上げて、振り下ろす瞬間にその糸を放す。タイミングが大事だぞ」


しかし、初めてのキャスティングはなかなか上手くいかない。後ろに飛んだり、足元に落ちたりと散々な結果。


 「ルアーロッドの弾力を使って、パーンって前に押し出すイメージでやってごらん」


圭介がアドバイスすると、愛生は深呼吸してもう一度挑戦。


すると――金魚ルアーがきれいに弧を描いて真っ直ぐ前へ飛び、愛生の顔がパッと輝いた。


 「やった!飛んだー!」 と声を上げ、満面の笑みを浮かべる愛生だった。

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