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うちの愛生ちゃん  作者: 横溝 啓介
1年1学期
36/79

夏休みキャンプ ➀

読んで下さる皆様、心より感謝致します。


ゆっくりと物語を進めますので、気長にお付き合い頂ければ幸いです。

愛生は自室でアニメ「ピノノちゃんと一緒」を観ながら

「ピノノちゃん可愛い〜♡」と一人で悶えていた。


その時、スマホが「ピコン♪」と鳴る。

野外活動鱒釣り部のグループLINEだ。


里香

「夏休みに入っちゃったけど、夏休みの活動どうする?」


穂乃花

「1度みんなで集まった方が良さそうだねぇ〜」


愛生

「みんなに会いたいから、集まるの賛成〜!」

(スタンプ:両手をぶんぶん振るウサギ)


明宏

既読だけ付けて沈黙。


里香

「じゃあ明日、部室に集合しようか。みんな空いてる?」


穂乃花

「空いてる〜!(´꒳`)」


愛生

「わーい 部室楽しみ〜!」

(スタンプ:ドーナツ持ったクマ)


明宏

「……うん。」(しぶしぶ一言だけ)


里香

「じゃあ、明日の10時に部室集合ね〜」


穂乃花

「OK〜!٩( ᐛ )و」

(スタンプ:ぴょんっとジャンプするひよこ)


愛生

「ピノノちゃんと一緒に行くね」

(スタンプ:アニメキャラがウキウキダンス)


里香

「……いや、ピノノちゃんは来れないでしょ」


愛生

「気持ちは一緒なの!」

(スタンプ:ハート飛ばすウサギ)


明宏

「了解。」(一言だけ)


グループLINEに「了解」のシンプル文字がポツンと流れ、

画面に既読4の数字がピコッとつく。


愛生

「明くん、ノリ悪〜」


穂乃花

「でも明ちゃんが来てくれて良かった〜♪」


里香

「はいはい、決定ね!明日は集合だから寝坊しないでよ〜!」

(スタンプ:ドヤ顔ネコ)


明宏は部屋でスマホを置き、


「何で俺まで行かなきゃ……」とぶつぶつ呟きつつも、


さっきの穂乃花の「来てくれて良かった〜♪」が

頭の中でリフレインして、

思わずニヤけそうになるのを必死で隠していた。


翌朝、部室のドアが開くと、先に来ていた明宏の目に

制服姿の里香、愛生、穂乃花の3人が映った。


里香はいつも通りきちんと着こなした清楚な制服姿で、

まるでクラス委員長そのもの。


愛生はピンクのぬいぐるみ・ピノノちゃんを抱っこして、


「じゃーん!今日はピノノちゃんも一緒に来たよ〜」

と元気いっぱい。


そして――


穂乃花は、いつも通りマイペースにニコニコしながら入ってきたのだが、

歩くたびに制服の胸元がユッサユッサと揺れる。


明宏の目が、条件反射のようにそこに吸い寄せられ――


明宏(心の声)

(……やべ、見ちゃった……)


視線を逸らそうとしても、ついもう一度見てしまう。

耳まで赤くなり、スマホをいじるフリで誤魔化すが、

指が変なところをタップしてアプリが勝手に開いてしまう。


里香はそんな明宏の様子を一瞬で見抜き、

ちらっと横目で見て、口元をニヤリとさせた。


里香(心の声)

(……あ〜、そういうことね。)


一方、愛生は全然空気を読まず、


「ほら明くん、ピノノちゃんのあいさつ聞いて〜」と


ぬいぐるみを明宏の顔に押しつけてくる。


「ちょ、ちょっとやめろって!」と慌てる明宏。


穂乃花はそんな二人を見て、のんびり笑顔で


「仲良しな姉弟だねぇ〜」とマイペースな一言。


明宏はさらに耳まで真っ赤になり、

視線が泳ぐのを止められなかった――。


里香は明宏とわざと目を合わせ、


「……なぁに? 何見てたのかな〜?」とニヤニヤ。


明宏は「な、な、何でもないし!」と耳まで真っ赤になり、

スマホを持つ手がプルプル震える。


さらに里香はニヤリと口の端を上げ、


「へぇ〜? “何でもない”ねぇ〜?」と追撃する。


その時――



「里香ちゃん、あんまりいじったら明ちゃん可哀想だよ〜」


と穂乃花がのんびりフォロー。


その優しい声に、明宏の心臓が一気に跳ねた。


明宏(心の声)

(や、やば……穂乃花先輩、やさしい……!)


さっきまで笑っていた里香も、ちょっと悪ふざけしすぎたと気づいたのか、


「……はいはい、じゃあ真面目に始めましょうか」と


会議モードに切り替える。


愛生はそんな3人を見て、


「ふふふ〜、なんか青春してるなぁ〜」と


ぬいぐるみのピノノちゃんをぎゅっと抱きしめながら

ニコニコとご機嫌だった。


「じゃあ、1人ずつ夏休みに何やりたいか言ってみましょうか」


と里香が手帳を取り出し、議長モードに。


「愛生ちゃんはね〜、キャンプしてカレー作って、夜は焼きマシュマロしたいなぁ〜!」


と愛生が目をキラキラさせながら両手をぶんぶん。


「そうだねぇ〜、部活の名前も“野外活動鱒釣り部”になったし、


やっぱりキャンプがぴったりだと思う〜」と穂乃花がふんわり笑う。


「そうね、私もキャンプでいいと思うわ」


と里香も頷き、議事録にメモをカリカリ。


「お、俺は……」と明宏が口を開きかけた瞬間――


「どうせ“釣り”でしょ?」と里香が先制ジャブ。


図星を突かれた明宏は 「……まぁ……そうだけど……」 と

うつむいて肩を落とす。


愛生はクスクス笑いながら、


「もう〜、明くんってほんと釣りバカだよね〜」と


ピノノちゃんでコツンと明宏の頭をつつく。


明宏は 「釣りは大事なんだぞ!」 と小声で反論するが、

部室は和やかな空気に包まれていた。



「じゃあ、次はキャンプ地を決めましょうか」


と里香が真剣な顔でノートを開く。


「でもさ、真夏でも涼しいところ選ばないと、


テントの中が暑すぎて寝られないと思うのよね」

と、鋭い指摘を入れる。


「えっ、そうなの?」


愛生はポカーンと口を開けたまま里香を見つめる。

(どうやら“夏=暑い”と“テント=サウナ化”が繋がっていないらしい)


「う〜ん……」と腕を組んで少し考え込んだ穂乃花が、

ぱっと顔を上げて言った。

「じゃあ、本栖湖はどうかな?富士五湖なら涼しいと思うし……それに本栖湖なら明ちゃんも釣りできるでしょ?」


「……!」

明宏は思わず顔を赤らめる。

(俺のこと……考えてくれたのか……)

心臓がドクンと跳ねて、

“やっぱ穂乃花先輩、優しい……”と胸の中でつぶやいた。


里香はそんな明宏の表情をチラリと見て、


「……ふーん」とだけ言ってメモに“候補:本栖湖”と書き込んだ。


愛生は 「えー!富士五湖!なんかキャンプって感じしてきた〜!」 と

ピノノちゃんを抱きしめながらはしゃぐのだった。


「じゃあ、他に希望はありますか?」


里香がみんなを見渡して問いかける。


「うーん……本栖湖でいいかなぁ〜」


と愛生が答えると、急にピノノちゃんを持ち上げて、


「ピノノは本栖湖がいいよ〜!」


と下手くそな腹話術を披露。


「それ、今の必要あった?」


と冷静に突っ込む里香。


「お、俺も……本栖湖、行ってみたい」


と明宏も小さな声で賛同する。

(その声がちょっと嬉しそうで、里香はニヤリと笑った)


穂乃花はそんなみんなを見て、


「ふふっ……いいね〜、楽しそう♪」


とニコニコ、ぽわぽわと優しい笑顔を浮かべる。


こうして、野外活動鱒釣り部、

初めての夏休み活動は——

本栖湖キャンプに決定!


愛生は 「わーい!」 と両手を上げて喜び、

ピノノちゃんを振り回しながらはしゃぐのだった。


本栖湖キャンプに決まった瞬間、


「じゃあ、寺ノ沢先生に報告してくるね〜!」


と愛生が元気よく立ち上がり、部室を飛び出して行った。


数分後、寺ノ沢先生がにこやかに部室へ入ってくる。


「愛生さんから聞きましたよ。夏休みの活動は本栖湖キャンプに決定なんですね。」


穏やかな声に、部室の空気がちょっとピシッと引き締まる。


「では、キャンプに必要な道具をリストアップしましょう。」


と、部長らしく里香がホワイトボードに書き始める。


「テント、寝袋、ランタン、調理器具……」


と順番に挙げていく里香に、


「うちにテントあるから持ってくるね!」


と愛生が元気よく手を挙げる。


「うちは寝袋なら人数分あるかも〜」


と穂乃花もにっこり。


こうして部員たちの家にあるキャンプ用品を持ち寄ることで、

なんとか初キャンプは決行できそうだと一同ほっとする。


その時、寺ノ沢先生がふと思い出したように口を開いた。


「そういえば、本栖湖にはブルーバックレインボーが有名ですね〜。」


「えっ、それマジですか!? 本栖湖でブルーバック釣れるんすか!?」


椅子から飛び上がる明宏、目が完全にギラギラしている。


「ちょ、ちょっと明くん、落ち着いて!」


愛生が慌てて腕を引っ張る。


「……また釣りの話?」


と里香は深いため息をつき、


「まったく、キャンプ会議中なんだけど。」


と頭を押さえる。


しかし、明宏と寺ノ沢先生はすっかり釣りトークモードに突入し、

キャンプ道具の話はどこかへ飛んでいったのだった。

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